創造による幸福

前回:ノブレス・オブリージュと愛

3. 仕事

3-4. 創造による幸福

幸福を創造するための3つ目の鍵は創造だ。創造については仕事についての話の中で触れた。そこでは、競争の檻から脱獄するための鍵として話した。創造が素晴らしいのは、幸福を生み出すこともできることだ。

創造の起源を探れば、やっぱりこれも生存と繁殖に有利だったから育まれてきたということになると思う。高いところにある食べ物をとるとき、自分より力の強い動物を狩るとき、丈夫な住処をつくるとき、原始時代にも常に問題があふれていたはずだ。

そんなときに、創造的に解決できるかどうかが生存と繁殖に影響した。要は、創造的なほど生き残れる確率も高まるし、パートナーを手に入れられる確率、子どもを独り立ちするまで育てられる確率が上がったはずだ。こうなると脳は創造行為に幸福という喜びを与える仕組みをつくりだす。これが、創造が幸福を生む理由だと思う。

俺は生物学が大好きで、ついついそういう生物学的思考をしてしまうのだけど、それは実際どうでもいいことだ。大事なのは、創造が幸福を生むということだ。

俺は君に、できる限りなんでも自分でつくってみることを勧めたい。料理や家具、栽培、物語、ソフトウェアなんだっていい。自分でつくってみると喜びを感じられるはずだ。おまけに、そこには学び、つまり新しい発見がある。

残念なことに現代はこの創造による幸福を感じづらい世の中だ。理由は分業だ。昔の人は食料から料理、家具や家、服、いろんなものを自分たちでつくっていた。でも村をつくり、職業が分離して、貨幣による物の交換が浸透して、世界中の人と貿易をするようになったいま、人類の歴史でこれ以上ないほど分業が進んでる。ためしに君が使ってるものや身の回りのものを2,3見つめてみてほしい。それらはどこのどんな人が、どんな風につくったものだろう。どうやって君の手元に移動してきたのだろう。この世の中がとてつもない分業によって成り立っていることが実感できるはずだ。

分業は決して悪いことじゃない。そのおかげで人類は少なくとも便利さを進歩させてきた。けれど、自分の手でつくってみる体験も重要だ。君にはぜひとも色々なものをつくってみてほしい。

創造で幸福になれる。これも人間の素晴らしい才能の1つだ。

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