考えるのは本当に自分の「頭」?

前回:自分の頭で考える?

1. 学校

1-9. 考えるのは本当に自分の「頭」?

自分の頭で考えるということをイメージしてもらえたと思う。でも実は、この表現は正しいようで、少しおかしなところもある。「自分の頭で」って部分だ。

考えてるときに働いているところはどこだろう、と考えると主役はやっぱり脳神経と言えるのかもしれない。脳には100,000,000,000個を超える神経細胞があるとされてていて(参考)、それらが複雑につながり合っているらしい。そのつながりに電気が流れることで君の考えや意識なんて呼ばれるものが生まれるのはそれはそれでとても不思議なんだけど、とにかく脳神経はたしかにすごいと思う。

一方で直接知覚説ってのを唱えたJames Gibsonって人が、知覚システムっていうアイデアを説明していて、これが本当に面白い。知覚システムを理解するにはそれなりの背景知識が必要になってはしまうんだけど、生物が知覚するとき、眼とか特定の感覚器官だけじゃなくて身体全体のシステムとして環境を知覚しているという見方だ。

Gibsonによれば、生物の視覚は特定の一直線の光を捉えてるんじゃなくて、様々な光の配列(構造)を捉えて環境を知覚している。そして動くことで、その光の配列が変化することから環境をより詳細に把握することができるというんだ。この考えによれば、眼球だけでもなんらかの知覚は生じるだろうけど、眼球が頭とセットになることである程度は動けるようになるから知覚の範囲と精度が増す。さらに眼球と頭が歩ける身体とセットになることで知覚はさらに向上する。

この話は難しいからそのうち知ってもらえたら嬉しいけど、とりあえず、人間はもちろん生物は頭だけで世の中を認識しているんじゃなくて、身体全体で認識しているということが重要なことだ。

それから実は、自分の頭に閉じていては考えってのは進んでいかない。何も無いところから考えは生まれない。考え始めるとき、そこにはなにかしらの足場があるはずだ。その足場や枠がどうやってできるかっていうと、君の頭の外の世界との出会い、体験で形作られていくんだ。それは君が公園で遊んだ体験だったり、友達と星を眺めながら語り合ったことだったり、古本屋でふと出会った日焼けした本だったり。

人間は言葉と紙、印刷を発明したから、 2,000年以上前の人の本だって数百円で読むことができる。こんなに幸せなことはないし、これは人間が他の生物に比べて誇れることだ。本を通して、昔の人がそれぞれの環境で一生懸命に考えていたことを知ることができる。それは、友達の話を聞くのとそんなに変わらないかもしれない。言葉のおかげで他の人の体験から学ぶことができる。

これは本当に素晴らしいことで、俺は読んでみたいと思ってる本なんて数百冊はゆうにある。でもどうしたって、自分自身の体験からの学びの方が深く、強く、鮮やかだ。それは学びが頭だけのものではなくて、やっぱり身体も伴う複雑なものだからなんだと思う。大切にしてほしいのは、君自身の体験を大事にし、そこから身体全体で考えていくことだ。

自分の頭で考えることは大切だけど、決して自分の頭の中に閉じて考えるとは思わずに、外の世界で考えてみてほしい。思いきって神秘的な言い方をすれば、君の頭は外の世界とつながっているんだから。

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