理系より文系が偉い?

前回:年収1000万より年収500万が高給?

1. 学校

1-6. 理系より文系が偉い?

「1-3. 自由を奪う場所としての大学」の回からおかしな大人の大学の捉え方について話している。

最後の5つ目のおかしなとこは、大学には文系より理系で入った方がいいって考えだ。大学はもっと社会の要請に答えるべきで、実用的でない研究や組織は廃止すべきだという意見もあるし、ひどいと大学は理系だけで十分で、文系は無駄だから廃止しよう、なんて言う人もいる。最後はこれについて考えたい。

まず、大学は実用的な研究に絞るべき、これはどうだろう。そもそも大学はなんのために研究を行うのだろう。たぶんそこにはかっこいい理由はない。ただ、それぞれの研究者がそれぞれの研究対象に強く惹きつけられ、もっと知りたいと願う、ただその熱い想いから研究をしてるんだ。けどこれじゃあ答えにはならなそうだ。視点を変えた問いをつくろう。

大学はなぜ、研究できるのだろう。それは主に、国から研究するためのお金が渡さられるからなんだ。国のお金ってことはつまり税金だ。だから大学が研究で使っているお金は、みんなが一生懸命に稼いだお金だ。

みんなのお金を使う以上、たしかに理由が必要になってくるのも納得がいく。けどだからと言って、研究が実用的な必要はない。

現在から近い未来に必要なことは、企業が研究し解決策を提示できる。でも企業には数十年、数百年という長い時間を見越した研究をすることはなかなかできない。それは企業という存在が自立的に生き残っていかなければならないもので、そんなに遠い未来のことは気にする余裕がふつうはないからだ。

だから大学は、現在から近い未来に社会に必要とされているのではなく、数十年、数百年という単位で人類に役立つ根源的な研究をするべきなんだ。大学の研究の成果は、社会のニーズを解決するようなものではなく、新しい世界へのひび割れを作るようなものであるべきなんだ。社会の要請に応えたものなんて10年もすれば古びて価値がなくなっていたりする(だからと言って価値がないと言っているわけではないよ)。だから大学は基本的にビジネスをするのではなく、税金や寄付で生きていくことになる。

そういうわけで結論、「大学は実用的な研究に絞るべき」は間違ってるんじゃない?ってなる。

大学は理系だけで十分で、文系は廃止すべき。これはどうだろう。理系文系という分類の定義や意味についても考えたいところだけど、一旦それは置いておこう。

理系っていうのはたぶん自然を対象にした科学のことだ。一般的なイメージでは、数学を使うみたいのもあるかもしれない。どうも俺には「理系だけで十分で、文系は廃止すべき」という発言は、真理を追求する理学よりは、科学を手段としてモノを創り出す工学のことを理系と呼んでいる気がするんだ。一方で文系は、文学とか絵画とか音楽とか哲学、宗教など、人間が生み出したものを対象にする学問が当てはめられている気がする。経済って概念は自然にも存在するけれど、その学問の発端が人間起点だったからいまだに文系にあるんじゃないかなあ。

さて、なぜ、特に工学を指しているだろう理系学問が認められ、文系学問は認められないのか。

これも結局、工学の方が世の中の役に立つことが誰にでも簡単に想像できるからだろう。大学によらない広い意味で、学問をしたことのない人には簡単に結びつけられるものしかわからない。けれど、本当は理系が創り出すものは、プラスマイナス、両方の符号をあわせ持ってるんだ。要は良いことに使われることもあれば、悪いことに使われることもあるってことさ。科学技術に価値判断をしたり、良いものや悪いものにするのは人間なんだ。

そして、科学技術を人間にとってより良くするうえで役に立つのが文系学問なんだ。車やインターネット、スマートフォンが生まれ、理系学問のおかげで世の中は確実に便利になった。けれど人々の精神的な豊かさはどうだろう。交通事故に、過労死、不倫、炎上、メタボリックシンドローム、ポストトゥルース、フィルターバブル。

幸せになったとはとても思えない。むしろ不幸になった可能性だってあるかもしれない。つまり、便利になるから、幸せになるとういわけじゃないんだ。ここは重要だよ。幸福をつくる精神的な豊かさを高めていくには、人間の創作物を通して人間を研究している文系学問が強い味方になる。ここまでくれば大学には文系より理系で入った方が偉いなんて考えがどんなにちっぽっけで表面的な考え方か見えてくるんじゃないだろうか。

君がなにをしていこうと俺は構わないけど、もし大学で学ぶことを選んだとしたら、理系とか文系とかそんなつまらない分類に惑わされず、自由に好き勝手に学んでいってほしい。深く学んでいけば、理系文系とわけられている学問同士がつながっていくはずだから。もしかしたら、世間で理系と呼ばれる学問の中に文系っぽさを、世間で文系と呼ばれる学問の中に理系っぽさを見つけることもあるかもしれないよ。

だいぶ長くなったけど、これでおかしな大人の変な常識の1つ目「良い大学に入れば人生上がり」論についての話は終わりだ。君にはそんな常識は一切気にすることなく生きていってほしいや。

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