北乃利人

北の街にて何かしらしたためています。お読みいただけると幸いです。

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ダメさの塩梅

なかなかのモテ男が知り合いに、居る。 なかなかの年齢でもある。 そのせいか最近は、そのモテ数値も下降気味。 本人も感じているらしく、しみじみとぼやいていた。 それでもやはり色気といったものはまだまだ健在だ。 もうすっかり大人… いや場によってはもうジジイと言ってもいいだろうその男は、なかなかのダメ男でもある。 いい歳をして、すぐムキになる。 時間にルーズで周りに甘える。 会話を一方的に進め、キャチボールが出来ない。 まあ、上げればダメなところがそこそこ出てくるのだ。 し

    • あの日の憧れ、いまなら分かる

      神戸の街で、トヨタ2000GTを見た。 走行していたのではない。 夜の商店街。 そのウインドウに展示されていたのだ。 「かっちょいい」 ライトアップされたボディーに、思わず声が漏れる。 ランボルギーニ・ミウラ フェラーリ・ベルリネッタ・ボクサ そしてこの2000GT 子供の頃から私の好きなスーパーカーである。 ただ、自分で乗りたいとは露程にも思ったことはない。 自分で乗る車としてなら、こうしたスポーツカーは多分、いや絶対に選ばないだろう。 どちらかというと、無骨な方

      • 可哀想なキティちゃん

        柄にもなく「キティちゃん」の話である。 はじめに言っておくと、キティちゃんには何の罪もない。 オレ自身は、ファンではないが嫌いでもない。 本題へ ちょいちょい見かける工事区画とを隔てる衝立。 どうも単管バリケードと言うらしい。 カエルのモノだったり、クマのモノもあった気がする。 それらがずらりと列を成し、工事区画を隔てている、あれである。 それが、キティちゃんなのだ。 雨風に晒され、かわいいはずのキティちゃんが、何とも悲しげだ。 キレイなままで、一つ二つならまだかわいら

        • 初雪の使者

          クルマのフロントガラスの向こう、何かが舞っている。 ゴミかしら… ガラスにふわりと降りてきた。 「雪虫か」 思わず声が漏れる。 いよいよ冬になるんだなあ。 心の中でつぶやいた。 こいつが飛びはじめると、初雪が近い。 小さな頃からそう覚えて来た。 誰に教わった訳でもなく、皆、そうしたものだと自然に理解している。 日が足早に傾き出す時間。 ぽつりぽつりと点灯し始めたヘッドライト。 小さな小さな雪虫が、この北の街をふわりふわりと浮遊する。 幾人もがきっとそれに気が付いてい

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          「うわー」って思える時

          「うわー 届きそうだ」 もちろんそんな事がある訳はないのだが、届きそうなほど低い。 雲。 本当に雲が低い。 背伸びをしてグイッと腕を伸ばせば、ふんわりと掴めるんじゃないか、そんな風に思えた。 眺めれば眺めるほど、出来そうな気がしてくる。 不思議な感覚。 びっくりするくらいに大きな夕陽だったり、作りもののような月だったり、この世の終わりみたいに真っ赤な夕焼けだったり。 そんな「うわー」って時に出会えるのがすごく好きである。

          「うわー」って思える時

          つかの間のインディージョーンズ

          ちょっとだけビビった。。 いや、正直けっこうビビった。 記憶を辿ってみても、海外で一度あったような、なかったような… そんなレベルである。 何のことかというと、プロペラ機のことだ。 先日、仙台出張だったのだが、その際、飛行機がプロペラ機だったのだ。 新千歳からの出立は、乗り慣れたジェット機だった。 のだが、帰りの仙台空港から新千歳空港がプロペラ機。 やな予感はしていた。 やたらと、搭乗口まで歩かされたのだ。 周りから、喧騒が消えてゆく。 「本当にこのまま進んでいいの

          つかの間のインディージョーンズ

          遥かなる床屋

          行きつけの床屋が閉店した。 今年に入り、まもなくのことだ。 まだ鋏を持てなくなるほどの高齢ではなかったが、「コロナに負けました」と寂しげに主人が言った。 この生業を、長年お一人で続けて来たベテランであった。 こちらに通いだして10年ほどか。 なんとも残念な結末である。 が、それだけ大変な数年だったのだと改めて思う。 そんな訳で、おれは床屋難民となってしまった。 そうなのだ。次の床屋を見つけるというのは、意外に難易度が高い行為なのだ。 先ず、初めて入る床屋は緊張を強いられる

          遥かなる床屋

          酔っ払いにバチが当たる

          最近、夜、出ることが多かった。 ふらふらとその辺をぶらつく訳ではない。 仕事関係で、外で食事をすることが少し多くあったのだ。 その際、お金をとって料理を提供するところへ行く訳だから、仕事とはいえそれなりに美味しいものにありつくことになる。 飲み食いが大好き自分にとって、その点はありがたくもある。 おれは日本酒が好きである。 最初の一杯こそビールが多いが、そこからはずっと日本酒だ。 なので、必然的に和食が多くなったりする。 日本酒は、季節関係なく、程よく冷えた冷酒を好んで

          酔っ払いにバチが当たる

          青空恋しや生乾き

          ストレスだ! 些細なことのようで、意外とずっしりとストレスを感じることの一つ。 それは、洗濯物が乾かないこと。 洗濯物を干す、畳む、それはおれのお仕事。 衣類を洗濯機に突っ込み、ボタンを押すのはカミさんの仕事。 カミさんの朝は早い。 仕事に出掛ける頃、洗濯完了のアラームが鳴る。 そんな毎日である。 そんなわけで、洗濯において主だった作業をこなすオレとしては、この生乾きの洗濯物が何よりストレスなのだ。 ありがたいことに、普段わが家は、風通しが良いこともあり洗濯物は良く乾

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          閉館。そして一つの思い出のピリオド

          ここ北の街で、長いあいだ営業を続けていた商業施設が閉館した。 老朽化のためだという。 もちろんそれだけに止まらぬ、様々な理由があるのだろう。 いずれにしても、一つの時代が幕を閉じた。 時代というと大袈裟な気もする。 一つの思い出が終わった、といったところか。 若かりし頃、この施設には大変お世話になった。 買い物客としてお世話になったといった事ではなく、商売上で大変お世話になったのだ。 もちろん買い物客としてもお世話になっていた。 上層階に関東以北最大のタワーレコード

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          この空を、季節を思いiPhoneをタップする

          春らしい春の日は気分が上がる。 季節は春。 春なのだから、どんな日でも春の一日、ではある。 それでも、自分の中には春らしいと思える日があったりする。 この時期は、冬に逆戻りしたような日だってしばしばだ。 だから、そんな日はなんだかウキウキするのだ。 やっぱり春らしい日差しを全身で浴びると、じんわりと幸せを感じることができる気がするのだ。 春は言わずもがな夏へと向かう季節だ。 これから徐々に暑くなって行く。 そんな春の、春らしい日。 ふんわりと日差しもまた柔らかに感じる。

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          戸惑いの食レポ

          カミさんが新しい料理に挑戦した。 年に二、三度だろうか、思い立ったように新たらしいレシピにチャレンジする。 そのどれもが基本、美味しい。 まぁ、中にはそうでもないモノもないではないが、それとて、不味いというよりはあまり好みではない、といった程だ。 そして、必ず食べた後、感想を聞いてくる。 それはそうだろう。 せっかくチャレンジした料理の感想は、誰しも気になるところだ。 だから、素直に「美味しいと」言っている。 まぁ、たまに気を遣ってのこともあるが。 今回も…今回は、笑顔

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          ホテルの窓から眺めている

          神戸。 定期的に訪れる地。 今回は、妙に早く一日目の予定が片付いた。 いつになく早めのチェックイン。 部屋の明かりも点けず、ベッドにドサリとよこたわる。 まだ外は明るい。 まもなく陽は沈んで行くだろう。 人気の感じぬホテルの部屋から、ぼんやりと窓の外を眺める。 ずいぶん前にもこんなことがあった気する。 はて、あれはいつぞやのことか。 どこぞの地だったろう。 なんだか悲しかったということだけが、記憶の糸の先にぶら下がってる。 今は、こうして音もない時間が平和なようで、不安な

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          幸せなループ 新しい出会い

          ルーク・ハワード、ユップ・ベヴィン ここ最近、クラシカルクロスオーバーというジャンルの音楽にハマっている。 恥ずかしながら今に至るまで、こうした音楽のジャンルがあることを知らなかった。 ピアノの音色、弦楽器の優しい調べ、その一つ一つの音にゆっくりと深く沈んでゆく。 こうして文章を書くにしても、電車に乗る時も、車の運転中も、ただただ音が静かに包み込んでくれる。 ここにたどり着いた経緯は以下の通りだ。 久々にデビット・ボーイが聴きたくなった。 改めて色々アルバムを聴き改めて

          幸せなループ 新しい出会い

          何かと少し戦ってみようか

          なんかしらないけど戦ってたな… ふと、そんなふうに思うのだ。 もうずいぶんと遠い昔の話だ。 まだまだ子供だったのだ。 そこには明確な敵など居なかった。 見えない何かに、徒手空拳でジタバタしてたといったところか。 まあそうはいっても、いつもイライラ、触れるものみな傷つけるナイフみたいに過ごしていた訳ではない。 ただ、さぞかし周りの大人は扱いづらかったことだろ。 ただただ、いつも漠然と世の中に半目していた。 そのおかげで出会ったものもある。 音楽。 本。 映画。 数少ない

          何かと少し戦ってみようか

          フラミンゴの空

          フラミンゴ色の空だ。 車のヘッドライトがポツリポツリと点りはじめた頃、フラミンゴ色の空に真っ直ぐにのびる虹をみたのだ。 この美しさをどう伝えればいいだろう。 言葉でこの美しさを伝えられたら。 写真でこの美しさを伝えられたら。 まして譜面におこすことなど、そんなことは奇跡すらおきないだろう。 上手く伝えることなど出来ないのは承知の助だ。 だからなるべく大切な人と一緒に居よう。 伝えられないからこそ、その空間を、その瞬間を共有しよう。 それだっていい。 いや、そのほうがい

          フラミンゴの空