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囀る鳥は羽ばたかない 第48話 矢代の現状についてなど

【2022年07月31日】

48話がなんとなく事態好転っぽい感じで
気持ち盛り上がっちゃって
本筋のほかにも
ヤクザ関連、矢代と百目鬼についても
別枠で振り返り深読みするー!
と意気込んで
勢いのままにキーボードたたいたり
読み返してはちまちま直したり

もたもたしてるうちに次のイァハーツが!
49話が!

とあわあわどきどきしてたら休載のお知らせ。
(さらにもたもたしてたらその次も休載…)
(さらにさらに11月号も休載予定!?)

ぐいぐい盛り上がってた気持ちがすんっとなったところで
己のまとめ文章を読み返したり
囀るをまとめて読み返したりしてたんですけど
ちょっと…冷静になったからか
思うところにも少し変化が生じてきたりしました。
冷静になるって大事ね。
盛り上がったまま突っ走りたかった気持ちも大きいけど。

今現在、いちばん夢中になってる漫画が囀る
今どきの言い方をすれば最推しが百目鬼
同調しちゃって気が気じゃないのが矢代
(囀る内ではなく漫画全般的にね)
(なんかもうホント好きなのよ)

とはいえ
盲目的に心酔して
なにからなにまで最高!至高!
というわけではないんですよね。
そらそうよね。そういうものよね。

例えば
私はダウンタウンが大好きだけど、
出演全番組チェックして全て録画してるわけではない。
松ちゃんの過剰で上からな浜ちゃんいじりも苦手。
でも芸人カテゴリではダウンタウンが一番好き。
そんなかんじ。わかってもらえるでしょうか。

基本的には素晴らしいんですよ、囀る。
人物設定も、ちょっとした表情も、心情のうつろいも。
でも……

その辺も含めて矢代メインの感想覚書。
「まとめ」のていなので
内容はこれまでのとまあまあ重複しています。
ご了承ください。
言いたいことって何度も言いたいんだよ…


※毎度のお約束:
 以下がっつりネタバレ含みます。
 登場人物の心情とかストーリー解釈とかは
 あくまで個人の見解です。


******

48話本編の感想覚書にも記したけど
「4年後」の矢代はホントにただただ痛々しい。
右目の視力を失ったこと、
手離した百目鬼の夢を見続けていること、
その夢のシチュエーションが
「自分を探し出して追いかけてきた百目鬼の手を振り払って逃げるけど
 振り向いたら百目鬼が追いかけて来てくれない荒廃した世界」、
そんな百目鬼に再会してからあからさまに混乱し、
かつ浮ついていること、
でも百目鬼からは冷酷な態度で翻弄され
いちいちはっきり傷ついてること、
その一方で井波にレイプされて以降
快楽を失って苦痛でしかなくなった、セックスとも言えない
「合意の上でのレイプ」を
加害者である井波に提供し続けていること、
自傷行為が本当の「自傷」行為でしかなくなっていること――

でもその辺がすべて、
なんていうか…割とはっきりわかりやすく表現されてるんですよね。
会話で知らされたり(視力のこととか)
隠したりにごしたりしてきたことをモノローグできっちり正解発表されたり
(不能・不感症のこととか)
以前みたいに行間を読む、みたいな感じじゃなく直球どストレート。
わかりやすい、誤解がないことにこしたことはないんだけれども。

4年前の矢代は
本当の自分を鎧にしまい込んでいたこともあり
人物像がわかりづらく、登場人物も読者も
見せかけの設定(ドMで淫乱)に翻弄され、
嘘で固めて、本心を見せず、自分でも気付けず、気付いては混乱し、
初めて「惚れた相手」に抱かれたことで鎧が壊れ、
でもそれまでの「作り上げた自分」を捨て切れず
百目鬼という唯一無二の大事な存在を切り捨て、
結果うつろになってしまった、
という一連の変化が絶妙な描写で表現されてた。

(だからネットのレビューを見ても
 ちょっと純情なところを見せると
 矢代はドMで淫乱なのにこんな言動はおかしいとか
 言われちゃったりするんだ)

(念のため。
 ドMで淫乱の設定が矢代の作り上げた虚像で、
 本当は純情繊細、というのは私の解釈。
 上記の通り、作者から
 正解はこれ!とは明示されてないから
 今のところどう解釈してもいいとは理解してます)

7巻前半の矢代はそれでも
以前を彷彿とさせる雰囲気は多少あった。
三角の意向を察知してふたりきりになってみたり
府中刑務所で竜崎に面会するにあたって
20年前を思い出させる姿で行ってからかってみたり。
でもなんていうか、4年前のカリスマ性というか
鋭い爪を隠し持つ大型ネコ科のしなやかさというか
そういった矢代の魅力があまり感じられないんですよね。

あー…でもそらそうか、
あの頃の矢代はヤクザの若頭、
今は「ギリギリで研ぎ澄まさざるべき状況」ではないものね。


鎧は壊れたまま、なんとか以前の自分を取り繕っているけど
その変化には周囲も薄々気づいている。
井波にすら「痛めつけられたがっている」と看破されるくらいだから。
三角がその変化、さらには原因まで辿り着いているかどうか。
あの人そういうところ鋭いからな。

「変化」
なかなか重要なキーワード。

頭の切れるカリスマだった男の言動が、
どうにもこどもっぽい。
まあ、男なら誰でもあるだろこどもっぽいところ、とも思うけど。

こどもっぽいというよりは「幼い」のほうがしっくりくるかな。
鎧に隠した本体は、鎧に逃げ込んだ子どもの頃のままだった。
目を背け続けて30年、やっと自分自身に向き合えた。
傍観するだけでなく、自分に起きた出来事を
自分自身のこととしてとらえることができるようになった。
その結果、鎧に閉じこもった子どもの頃の矢代が
やっと表に出て人生を急ピッチでやり直しているとしたら。
40歳にしてはちぐはぐで時に幼いように見えるのかも。
(主に対百目鬼な)
そういった意味では4年前百目鬼に語った影山の
「高校生のころから変わらない」という考察は
案外当たっていたのかな。
矢代の内面は時が止まっていたからね。
もともと、4年前から絶妙に脆さもある人だったんだけど
その脆さが多めに出てる感じ。鋭意構築中というか。


井波との関係。
一方的に蹂躙されているとはいえ
合意の上でのレイプ(なんだそれ)を
情報料として割り切っている節もあり、
矢代からは井波に情報を一切与えないでいること、
井波がまた矢代を裏切って嵌めようとしても
そうはいかないなにかを矢代が握っているらしいことも
散りばめられている。
その上で、
レイプされて受ける苦痛を「罰」として受けている。
なんの罰か。
百目鬼に対して自分が与えた苦痛――
身体への大きな傷、嘘に塗れた罵倒、それから――

47話の回想で矢代がつぶやいた「因果応報」
がいまいち咀嚼し切れていないんですけど。
悪いことをしたら罰が当たる、という意味で使っているなら
百目鬼を傷つけた分、自分も傷つけられて当然と思っている?
当然というよりも、傷つかなければ、という感じ?
自分の不能も、
百目鬼の不能を安心材料にして振り回していた罰だと思っている??


矢代は4年間ずっと
百目鬼に縛られ続けていた。
忘れたい、忘れられない。
そりゃあそうよね、変化のきっかけが百目鬼だからね。
百目鬼に抱かれて取り戻した本当の自分が、百目鬼を求めてる。
でも「本当の自分」を取り戻したものの
まだ受け入れてはいない状態の矢代は
あまりにも不安定。
受け入れたら安定するだろうか。それはどんなふうに?
でも受け入れなければ、「再生」もできない。

百目鬼に再会して、
停滞していた矢代が変化し始め、再生に向けて動き出した。
覚悟決めたか無意識か、矢代が本心を受け入れようとしている。
4年前百目鬼を振りほどいた手が、百目鬼を掴んだ。
離さないでね。絶対にだ。このあとを間違えないでね。
そしてそれは百目鬼もだからね!?

******

それにしても…
「4年」って長いよなあ。
4年という年月の必要性はどのあたりにあるだろう。
矢代はその間、組を持たず、でも堅気とも言えず
中途半端な状態でそれなりに稼いでいて、
その裏で井波に蹂躙され続けていた。4年も。
一方百目鬼は桜一家預かりになり、
そこで力をつけてのし上がる…でもなく
ただの「預かり」のまま、信頼はしっかりされ
それでも盃を交わさず、こちらも中途半端。
4年もあればそれなりの地位に付けそうなのに。
組員の神谷が「出世してください」と言うし、
綱川も手元に欲しがるほどの立場にいる。
でも預かり。
44話の表紙の煽り文句で
「対等になったふたり」とあったけど、実は全然対等じゃない。
あ~…矢代が組長でも若頭でもないわけだし
そういう地位的な意味では対等なのか?
でもな~、やっぱり「対等」には程遠いよなあ。

4年もあったらその2
桜一家に百目鬼がいることなんて
矢代の耳にも入ってそうなのにね。
三角からでも、井波からでも情報入るでしょ。
ホントに知らなかったの矢代?ホントに?
その辺も疑問。


なんていうかどうにも
この4年後パートに違和感を感じてしまっている私は
おそらくふたりの関係が4年も空き過ぎ、
再会後もちぐはぐで
特に何度も繰り返すけど百目鬼の感情が見えないため
ストレスマッハなのかもしれない。
さらにヤクザ関連も
前回の整理でよくわかった。
以前のような…平田が嫉妬で矢代の命を狙うとか
そういう絡みがなくどうにも他人事で
それもまたどうでもいいくらいの勢いでストレス。

すっかり取り留めない文章になっちゃったけど
矢代(とちょっとだけ百目鬼)を深堀して思うことはただひとつ。
とにかくもうね…ふたりに先に進んでほしいんですよ…
長いおあずけを食らって心が疲れてきています。
これ以上ふたりを落とすことなく、どうか幸せにしてほしい。

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