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掌編小説| 運だめし。

毎年恒例、年始の運だめし。
この街の商店街連合の催しで年末に買い物すると福引の参加券が貰える。おひとり様1回限り。当たると嬉しい人気の賞品も毎年行列が出来る理由だ。

特賞・お年玉30万円 、一等・10万旅行券、二等・5万お食事券、末等(誰でも)3000円の商品券が貰える。
箱の中に手を入れてポチ袋を1つ掴む、中の紙に当たりが書いてある。10年以上挑戦しているが 私は末等しか当たったことがない。全てはこのゴッドハンド!? にかかっている。前回は右手で引いたので今度は左手と策を講じたり、ある年は満月に手をかざし念じたり。今年は遠回りをして神社で手を清めてきた。今年こそは!

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お並びしながら考える。特賞が当たったら何を買おう、とりあえず貯金するかなとか。旅行券が当たったら1歳になる息子はどこに行けば喜ぶだろうなどと もう当たるイメージを膨らませ期待に浸りながら外並びの寒さに耐える。ポケットの中で何度もグッパグッパ 手のストレッチをしながら。

長い時間並んだのに自分の番が来たらあっという間に終わる。今年も末等だった。また来年に賭けよう。切り替えは早い。

✽+†+✽――✽+†+✽

3年前、もう少しで順番がまわるという時、先の人でカランカランけたたましい鐘がなった。「特賞 おめでとうございます!」「えっ…」思わずため息が漏れた。

「もう出たのかマジかーー!!」前の人も大きく呟く。特賞は無い…心底項垂れているのを見て笑いがとまらなかった。
それが夫との出会いでした。

思えば人生最大の強運を私はもうここで手に入れたのかもしれない。


                            〜おわり〜


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