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幸せな一日

今朝、妻が突然「湯湾岳に登ろう」と言い出した。

色々やろうと思っていたことはあったのだが、まあ明日に回すこともできなくはないといった程度の予定だったし、それなら今から準備して行こうかと、急遽出かけることにした。

湯湾岳は、奄美大島で一番高い山だ。我が家から車で小一時間ほどの所に登り口があり、そこから山道を1時間ほど歩いて山頂へ向かう。「山頂までは日常会話無し」とルールを決めて、各々静かに山を味わいながら歩く。

描きたいと思うものが沢山あったが、どうやって描くのが良いのだろうか。一番簡単なのは、写真を撮って帰り、それを見ながらアトリエで描くというやり方だろうが、やはり出来ることならその場で描きたい。今度少しお金が入ったら、山歩きにも持っていけるような小さな油絵のセットを買おうか…。

などと考えているうちに山頂に着いた。湯湾岳は、奄美大島を創生した阿麻弥姑(アマミコ)と志礼仁久(シレニク)の二神が降臨したと言われている場所で、山頂の広場には二神を祀る石碑がある。石碑に手を合わせて、広場で家から持参したおにぎりを食べ、また山を降りる。下りは二人であれこれ話ながら。

帰りに寄ろうと思ったコーヒー屋さんが閉まっていたり、途中で車を停めて昼寝をしたり、なんやかんやで家に帰るともう日も暮れかけていた。家の裏から野草を摘んできて土鍋いっぱいの草粥を作り、それをぺろりと平らげたら、もう一日が終わってしまった。

特に何をしたわけでも無いけれど、とても幸せな一日だった。


ふやよみ 青木薫

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