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野の草を食む

妻が野草にハマり出してから、我が家の食卓には野草料理が頻繁に並ぶようになった。今夜も長命草の天ぷら、浜大根の炒め物、ツル菜のおひたしと、野草尽くしだ。

その辺に生えているものを食べる。これはイキモノとして、非常に正しい姿であると思う。

遥か彼方の海の向こうから運ばれコンクリートの箱の中に並べられた、やけに偏った植物の葉やら実やら根っこやらを、四角い紙切れや丸い金属片と交換して手に入れる、そういうものだけが食べ物だと思い込んでいる、そんなイキモノは人間ぐらいのもんだ。考えてみれば、随分ヘンテコではないか。

その辺に生えているものを食べる。本当はそれでいいはずなのだ。我々は一体、どうしてしまったのか。野菜って何だ。野草とどう違うのだ。わざわざ生やすのが野菜で、勝手に生えるのが野草か。なら野草の方が偉いではないか。じゃあ野草と雑草の違いは何だ。食って美味ければ野草で不味ければ雑草なのか。そんなのあんまり勝手じゃない!ばかばか!

とつい冷静さを失ってしまう、そんな夜なのであった。


ふやよみ 青木薫

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