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帰ってきた。

ここ数ヶ月、リフォームやら引っ越しやら来客やら仕事やらライブやら、とにかく息つく暇も無く、目まぐるしい日々が続いていた。が、ようやくひと息つけそうなところまで来た。
なので久しぶりにnoteでも書いてみようと思う。

昨日、ふやよみの関西ツアーを終え、飛行機に乗って島に帰ってきたのだが、「ああ、帰ってきたなあ」と腹の底からしみじみと感じたのは夕方、風呂を焚いているときだった。

4月から住み始めた新居「はなちゃんち」は五右衛門風呂なので、毎日薪で湯を沸かさなければならない。焚き口の中で丸めた新聞紙に火をつけ、その上に枯れた竹など放り込み、火が移ったら徐々に薪を太くしていって、少しずつ火を大きくする。

昨日までの、スイッチひとつでお湯が出る便利な都会の風呂とは大違いだ。手間がかかるし、煙が目にしみたり、すすで手が汚れたりもする。「ああ、帰ってきたなあ」としみじみ思う。

そういえば奄美に移住して最初に住んだ家では、こうして毎日五右衛門風呂を焚いたものだった。それが台風で被災してすぐに引っ越すことになり、その後は五右衛門風呂のある家に巡り会えずにいた。だからこうして毎日薪で湯を沸かす生活というのも数年ぶりなのである。「ああ、帰ってきたなあ」としみじみ思う。

そうそう。私はずっとこういう「火のある生活」がしたかったのだ。思えば幼い頃から、祖父母の家にある薪ストーブや囲炉裏が大好きだった。小学生の頃の将来の夢は「炭焼き職人」だったし、中学生の頃は進路希望調査票に「モンゴルで遊牧民になる」と書いて三者面談で怒られた。あれから30年、割と行き当たりばったりで生きてきて、思いがけないことも沢山起こって、気がついたらこんな生活になっていた。なんだ結局、あの頃思い描いていた生活にかなり近いじゃないか。「ああ、帰ってきたなあ」としみじみ思う。

良かった、良かった。ちゃんと帰って来れた。
ずいぶん遠回りもしたけど、ちゃんと帰って来れたよ。


ふやよみ 青木薫

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