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対談:AIで仕事はなくならない論

(登場人物 F:俺、A:安部ちゃん)

F:あのさー、ネットの記事とかで良くあるじゃん、『今後、AIに取って代わられる仕事トップ10』みたいなの。

A:はいはい、ありますねえ、経済系とかIT系とかの記事。だから、その職を目指すのはお勧めしませんよ、あんたら別のスキル取得も頑張りなさい的なやつですよね。

F:その仕事ってのは、だいたい事務職とか単純な作業、サービス業、ライター、プログラマーとかね。あ、運転系とかもって見たことあるわ。

A:本当に取って代わられるんですかねえ?

F:うーん、何ていうのかな?あの手の記事、例えば「銀行員の仕事が」なんて大雑把に書いているけど、真面目に銀行員の全業務を洗い出して、個々の業務がAIに取って代わられて、その業務に接続する他業務はどうなる、だから最終的に「銀行員の仕事」はAIに、なんて丁寧な論理展開を見たことある?

A:いや、そこまでのはないですね。

F:だよね。俺らが知らないだけかもしれないけど、「銀行員の仕事」なんて雑なくくりでAI化されるよとか言う記事は、そんなライター自体がChatGPTあたりに取って代わられるでしょう、って思うんだよな。

A:相変わらず他人には厳しいっすね(笑)。丁寧な検証をしたら、AIでなくなっちゃう仕事ってあるんですかね?実際のところ。

F:あのさ、君、日本人のアナログさを舐めたらいかんぜよっ!(怒)ここ、鬼龍院花子風にね。

A:アナログさって?

F:俺もさあ、仕事の中の部分的な作業をAIにやらせる時代は来るだろうとは思うわけよ。まあセキュリティがーとか、大した仕事もしていないくせに(失礼)「我社の機密情報が漏れる!」とかで、かなりの部分スポイルされちゃうだろうけどね。加えて日本の企業って、「お客様は神様」じゃん。

A:そんなこと思ってる人って、本当に居ます?

F:ほとんど居ないと思うよ。特に末端の従業員は。直接顧客対応しない経営者なんかは下手すると勘違いしているかもしれないけどね。ただまあ、企業活動のナラティブとか前提として、「お客様は神様です」が設定されているわけだ、日本では。

A:迷惑な話ですけどね、末端の従業員としては。

F:うん、お客様は人間で、神様じゃない。でもそういう常識は、「お客様は神様です」の疑似共同幻想の前ではスルーされちゃうわけだ。となると、「AIにお客様の相手をさせるなんて失礼でしょ!」とか「大切なお客様の仕事に、AIを使って楽をするなんて!」「AIでのパターン処理ではこなせない難しい仕事(=おかしな仕様)を実現するのが本来の仕事でしょ!」という訳のわからないロジックが湧いてくるわけだ。

A:うーん、そんな圧があると、お客さんが文句を言いだす前に、AI利用を自粛しちゃいそうな気がしますよねー………。あっ、でも「◯◯なホテル」とかいうホテルではフロントにロボット置いてたりしません?

F:君、あれは「日本人がAIを受け容れる根拠」にはならんよ。あんなのは秘宝館的な余興ですよ。ロボットがいなくたって、自販機みたいなのでチェックインさせられるビジネスホテルなんか幾らでもあるからね。カウンターの向こうにフロントの従業員が二人とかいるにも関わらずだよ。違和感あるよね、あれ。背後から「この人、きちんと機械使えるかな?」って見張られてる気がして、どうも好きになれん。ホテル側だって、本当に人件費削減とか効率化になってんのかね?

A:長い目で見たら、そうなんじゃないすか?まあそれはそれとして、日本では「お客様は神様」なんで、AIに職は奪われない、と?

F:そういうこと。ひとつの職を置き換えるほどAIが適用されるには、組織間とか作業間のインターフェースがきっちりデジタル化できてないと駄目でしょう?それによってドミノ倒し的に、ある職が全面的にAIに移行する、と。どこかにアナログ部分が残っていたら、もうそこからお得意の「お客様は神様ウィルス」が入り込んで、AI使う意味ってのをどんどん奪って行くんだよ。そんな論理的な思い切った移行が、いまだに実印とか手書きとかFAXとかフロッピー提出とかが動いているこの国で可能ですか?ってえんだ。

A:無理そうな気しかしませんね。でも、「日本ではガラパゴスな商習慣や作業形態のせいで、AIに職は奪われません。わーい」って喜べない気がするのはなぜでしょうね。

F:だよねー。AIの利用?うちの国、ソフト面がめちゃ遅れてるんで、無理です。だってデジタルを推し進めるマイナンバーカード発行するのに一ヶ月かかるんですよ、それも人間が自筆で書類書いて、物理的に役所に行って並んで申請しないといけないんですから、って、そんな国が人間の職を奪われるほどAIを活用できますか?ってことだよね。

A:何か寂しくなっちゃいますね。でも、そんな状況だと、他の国にどんどん置いていかれませんか?発展途上国だって後発国優位性みたいに進んでいくでしょ、最近。

F:置いてけぼりにならないことを祈るばかりだね。いや、待てよ。ここは逆張りで、非AI国家を目指す、なんてのはどうかな?うちの国では「お客様は神様」なんで、仕事にAIを使うのは違法としてます。海外の皆さん、サイコーのサービスを受けるために、日本にお出でください!っての。他の国が皆AI移行しちゃえば、「人間が、人間のために働いてるっ!まじ珍しいっ」ってな感じで、今は買い叩かれている人力のサービスに高い価格設定ができて、逆に国際競争力が出るかもよ。

A:うーん、良いんですかね、それで。

F:良いんですよ。中途半端がいちばんいけないんです。もうデジタル庁なんか畳んで、アナログ庁を作るの。で、FAXなんて超先進技術を使うのは禁止。基本、封書。できれば伝書鳩。マイナンバーカード?ダメダメ、宗門人別改帳で管理です。

A:なんか第2の鎖国を目指せ!みたいな気がしてきたな。

F:………本当に第2なのかね?ふと思ったけど、今だって結構、鎖国してない?

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