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超年下男子に恋をする⑤(イケメンでも初デートでLINEブロックされる理由)

 彼がバイト先で一番仲がいいのはまちがいなく私だった。
 そのくせ私の名前をいつも間違える。
 パートの73歳の人といつも間違えるのでざっくりと高齢女子枠なのかと腹も立つ。ラストの作業で一緒になるのが私かその人だからだと彼は言い訳していたけれど、私の方がラスト率高いし、しかもその人にいつも怒られて、「僕もうやだ!」と言ってたくせに、一番自分がなついている私と間違うのはどういうわけだ。
 まあ、これが彼のポンコツたる所以で、私が「名前間違えないで」と言っても、言ったそばから間違える。中学時代からの親友の名前も間違えるし、お世話になったコンビニのバイトの人の名前も覚えちゃいない。しかもそのコンビニの人は、最後に手紙までくれたという。なのに長髪だからという理由でずっと女性だと思っていたそうで、最後の最後でやっと男だとわかったというまぬけぶり。

「私、なんで君に彼女いないかわかる気がするわ」

「え! どうしてですか?」

 なんていうか、残念なイケメンというかなぁ。

 彼は私には何でも話すので、恋愛の話も聞いている。

「僕、高校で一目ぼれした女の子がいて……」

「あー、そうなんだ?」

「その子は中学の同級生だったんですけど……」

(ん? 中学で会ってるのに高校で一目ぼれ?)

「で、全然相手にされなかったです」完

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「好きな女の子とデートしたんですけど」

(同じ女の子かな?)

「一回目のデートの後、僕、がんばってLINEしたんですけど、全然既読にならなくて」

「それで?」

「それで終わりました」

 おかしいなぁとは思いながらもそのまま時間は過ぎたらしい。

「で、半年ぐらいして友達が調べたら、僕ブロックされてたみたいで」

「あー、そうなんだ」

 私は同情たっぷりに彼を見たが、彼はけろっとした様子。

「なんかその場にいた友達にも慰められたけど、僕、全然平気でした」

 まあ、そのセリフが嘘だってことはその後わかることになるけれど、とりあえずこの時は強がらせておいた。

「やっぱり私、なんで君に彼女できないかわかる気するわ」

 私はもう一度言った。

「まずさ、服装変えなよ。キャラと服があってないよ。 オーバーオールでも着て麦わら帽子でもかぶってな」

 そう、彼はわりとおしゃれで流行りの服が好き。身長もあるし、黙ってればかっこいいのかも? でも中身は素朴な田舎の好青年というか、悪く言うとドンくさい。

「それから、デートでも何か余計なこと言ったんじゃないの?」

 そう、彼はデリカシーがない。とにかく余計なことをうっかり言うし、人の名前は間違えるし、注意してもまた同じことをやらかす。

 基本、話していることがつまらない。つまらないというか、女の子が喜びそうな話題もないし、かといって聞き役になれるわけでもないし、リードなんて当然できない。でも私は若い男の子なんてそんなもんだと思ってる。ただ、若い女の子というのはただでさえ要求が多く、特に年頃男子のふがいなさには厳しい。

 なんにしても、彼が初デートの彼女を満足させられなかったのは確かで、なんていうか、目に浮かぶようだと思った。

 それは、私たちの初デートからも明らか。

 そう、あれは初デートだったのかな。
 それから何度も二人でごはん食べに行ったけど、パパ活ならぬママ活みたいなものだったんだろうか。

 パパ活女子があんなふうにはにかんで照れ臭そうに笑うかな。恥じらいを演じられるしたたかさがあれば、あそこまで緊張することもなかっただろうに。
 
 もっともっとずるくなれたらよかったのにね。
 そしたら私もここまで大好きになることなんてなかった。



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