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福岡スタートアップ地図2021公開〜行政DXを推進する福岡市、ニューノーマルで新たなスタートアップの風〜

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1.2021年度版の福岡スタートアップ地図、リニューアル

今年も恒例の福岡スタートアップ地図を公開させていただきました。企業数が年々多くなってきたこともあり、これまでの手作り感満載の地図ではどうしても密集した地域の企業の社名が見づらくなり、視認性に課題がありました。そこで、今年はデザインを一新しました。また、スタートアップの定義に照らし合わせ、より実態に則した企業のピックアップを行いました。

2.コロナによる福岡市の迅速な支援体制の変化

この1年間の福岡市の動きとして、コロナ対策も迅速に発表され、スタートアップの不安解消にいち早く動いていたのが印象的です。また、短期的な支援策だけではなく、エコシステムに対する長期的な支援も整ってきました。福岡市はグローバル拠点都市に選定され、以下VC2社の協力のもと、新たな支援体制を整備しました。1つはDisneyをはじめ様々な大企業や行政の支援プログラムを構築してきた実績のあるTechStars、もう1つは日本の名だたる大企業からLP出資を集めファンドを組成しているシリコンバレー拠点の日系VCであるWiLです。

そのほか、この1年で数々のスタートアップ支援が立ち上がりました。コロナ禍ということもあり、いくつかのスタートアップが採択され、福岡市としてコロナを乗り越えるために行政としても支援していくプロジェクト「Beyond Coronavirus」を開始していました。その他にも「会社登記実質無償化」や支払い利子が補填される「福岡市新型コロナ対策資本性劣後ローン利子補給事業補助金」などが始動しました。将来的に福岡市の経済をけん引する独自技術を持った研究開発型スタートアップ企業に対し、事業の推進に係る経費等を助成する「福岡市研究開発型スタートアップ成長支援補助金」や、新型コロナウイルス感染症の影響を受けている個人事業主を含む中小・小規模事業者に対し、3年間実質無利子・無担保、保証料ゼロの「新型コロナウイルス感染症対応資金」による資金繰り支援など、資金面での支援も充実していました。また、福岡市の非常勤民間専門家「DXデザイナー」としてネット掲示板「2ちゃんねる(現5ちゃんねる)」創設者の西村博之氏ら4人を採用するなど、行政のDX化を推進しています。内閣府が行なっているプロジェクト「グローバル拠点都市」への選出や、台湾のデジタル担当大臣オードリー・タン氏と高島市長の対談も実現した「ASCENSION2020」などのグローバルなイベントの開催も、福岡市として特色の強い取組みでした。

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福岡市は、独自のスタートアップ支援を臨機応変に考え、発信してきました。また、電動キックボードやシェアサイクル等の官民連携したスタートアップの支援事例もますます増えてきています。その結果として、福岡市を参考にしてくれる行政が増えてきています。このような連鎖によって、全国規模で変革が進み、福岡が日本を変えていく一端を担えると思っています。

2.福岡スタートアップ、合わせて約30億円もの資金調達

大きな変化を遂げたスタートアップの代表例は、2021年4月頃から公道での実証実験開始する「シェアリングサイクル・モビリティ」といえるでしょう。他の地域でも実証実験など行っていますが、福岡発のmobbyがとくに際立っている印象を受けます。行政の支援が充実してきていることもあり、一つの成果がようやくで始めた大きなニュースです。これまでも海の中道で実証実験を行ったり、我々F Venturesの投資先同士であるmobbyとCharichariが事業提携したりと、準備を重ねてきました。

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次世代型コネクティッド・ロック「TiNK」をはじめ、シェアリングエコノミーを加速させているtsumugによる無人シェアオフィス「TiNK Desk」もUR等と協業を重ね、規模を拡大しています。コロナにより働く環境の変化を余儀なくされ、これまで普通だったオフィスでの作業もままならない状態です。リモートワークが進んでいることにより、無人のシェアオフィスの需要が高まっています。

医療DXを推進するスタートアップであるInazmaは、西鉄と連携し、天神のソラリアステージ大画面裏に「ゼロマチクリニック天神」をオープンしました。これまでの病院は患者の受付待ち時間が長いこと、また事務手続きが煩雑なことに課題がありましたが、スマートフォンを用いることで診療までのリードタイムを最小化します。

ノーコードでアプリを制作できる「MagicInstructions」が、Napps Technologiesによりリリースされました。エンジニアでなくとも、Googleスプレッドシートにテキスト・画像を入れるだけでアプリを作れ、Appstore、GooglePlayなどで公開できます。

宇宙分野でも福岡のスタートアップが活躍しています。QPS研究所の小型SAR衛星2号機「イザナミ」がイーロン・マスク氏創業のスペースXにより開発されたファルコン9に搭載され、ライドシェアにより複数の衛星と共に打ち上げられました。福岡でこのようなディープテック企業の実績が生まれてきたことは大変面白い変化と言えます。また、福岡市もJAXAと連携し、衛星画像データの民間活用を進めています。

そのほか、ニューワールド、KEYes、Gigi、YOILABO、KINCHAKU、KAICO、グルーヴノーツ、QPS研究所、neuet、AUTHENTIC JAPANなどが資金調達を実施しており、そのほか未公表だが耳に入っているものを加え、ここ1年間での福岡市におけるスタートアップのエクイティによる資金調達金額はおよそ30億円近くになると考えられます。

また、フードデリバリーのスタートアップも福岡に増えている印象です。Woltやfoodpanda、DiDi Foodなど、Uber Eats以外のプレイヤーがかなり増えていますが、これらの動きにも注目です。

我々としては、この1年、「オンラインの環境でいかに起業家を増やすか」ということにフォーカスして考えてきました。オフラインでの第一線の起業家や投資家との出会いなど直接的な刺激を得る機会が減り、起業家の創出にブレーキがかかってしまうことを懸念しています。たしかに、東京から福岡のスタートアップに投資するVCも増えており、リスクマネーの供給面はかなり整ってきています。しかし、一方で、起業家の数と釣り合っていないのが現状です。TORYUMONなどのイベントをオフラインで開催できない分、TORYUMON ZEROというオンラインコミュニティを創設し、横のつながりを作って経営者の方々の視座をいかに上げていくか実践しているので、結果が出てきましたら、改めて報告させていただきます。

3.同地域内でM&Aなど新たなエコシステムの変化も

これまでの福岡では資金調達ニュースがほとんどでしたが、2020年はエコシステム環境に多少の変化がありました。特に変化があったのは、スタートアップのM&Aがいくつか発生したことです。FFG(ふくおかフィナンシャルグループ)傘下のiBankが福岡のITスタートアップ企業diffeasyを買収、ランサーズがオンラインメンターマッチングサービスMENTAを買収など、複数のM&A発生が大きな変化の兆しとなりました。
依然、M&Aに関してネガティブな印象を持っている人も一定数いますが、起業家の届けたいサービスを大企業のリソースを使って伸ばす手段としては、適切な場合も多いと思っています。今まではIPOを目指す起業家が多かったけれどM&AというEXITも福岡のスタートアップにとって選択肢に入ってきたように感じます。医療系ベンチャーであるメドメインの11億円調達やQPS研究所の8億円調達、有機ELディスプレイや照明に用いる次世代材料を開発および販売しているKyuluxやオンラインヨガサービスを運営するヨクトも資金調達を行いました。資金調達面に関して順調な会社が多く、スタートアップがますます成長した2020年でした。

4.オンラインによる若年層の活発化

コロナ感染拡大防止のため、弊社主催のTORYUMONはオフライン開催を控えています。オンラインに移行するとどうしても、参加者比率が東京に偏ってしまいますが、福岡の学生たちへのチャンスの場をどうやって広げていこうかと日々考えています。学生が起業前にスタートアップでインターンという形で事業を経験機会を設けるためにFGNと共同でインターントークを不定期で開催したり、TORYUMON ZEROのようなオンラインコミュニティによって横のつながりを作る場を設けています。コロナによる影響をプラスに捉え、本来福岡では出会えないような起業家や投資家と接点を持つ場を設けたり、勉強会を開催したりすることで機会創出に尽力しています。地方の学生がこれまで繋がれなかった人と繋がれるようになり、さらにチャンスが拡がる仕組みを作っています。

最近では、Clubhouseなどの新しい音声SNSの立ち上がりで、福岡のスタートアップ関係者も交流を楽しむ光景を目にしました。地方の学生ほど、SNSを駆使してチャンスを掴みとっていくことの重要性を感じています。 F Venturesでも学生向けにClubhouseのルームを立ち上げたところ多くの学生たちが参加してくれました。オンラインでも学生起業家の横のつながりを作っていくことで、経営者としての視座も上げられるような動きが生まれると嬉しいです。また、高島市長もClubhouseを積極的に活用し、登壇していたのをよく目にします。市長がスタートアップのサービスをこれだけ利用し、インターネットサービスへの理解が深いのも福岡市の特徴です。

4月から新学期が始まりますが、このタイミングを自分たちから新しいアクションを起こすきっかけにしていただきたいです。APUの起業部や九工大の起業サークルK-SToNEの自主的な活動をいくつか目にしますが、そういった彼らの動きに追随するような動きも発生していただきたいですし、少しずつ成果として表れていくことを期待しています。

(おまけ)福岡のスタートアップ情報発信について

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また、こちらのFacebookグループにて、福岡におけるスタートアップ情報を日々更新しております。登録者数は1,500人を超えました。資金調達ニュースだけでなく、福岡スタートアップのリリースや提携ニュース、他県・海外スタートアップの福岡進出のニュース、など福岡のスタートアップにまつわる情報をあらゆる角度から投稿しています。Twitterでも発信をしています。少しでも福岡の事情に興味がある方でしたら、よかったらぜひ登録されてみてください。

(おまけ)6月、TORYUMON FUKUOKA開催について

未発表ですが、6月に福岡でTORYUMONを開催する計画を進めています。最大限の感染防止対策をしつつ、リアルでの開催もごく一部復活し、基本オンライン配信のイベントになると思います。福岡の高校生・大学生の学生スタッフも募集していますので、TwitterなどでDM頂けますと幸いです。

調査概要

調査名:福岡市内スタートアップ拠点調査
調査期間:2021年1月~3月
調査対象:福岡市拠点のスタートアップ、スタートアップ関連企業等
調査方法:ネットリサーチ、ベンチャーキャピタルへのヒアリング等

また本件に関するお問い合わせ等はSNSなどのDMなどで受け付けさせて頂きます。「スタートアップ」の掲載を目的とした地図ですので、掲載のご依頼についてご希望に添えない場合もございます。掲載依頼などはご確認の上、今回または、次回のスタートアップ地図に反映させていただきます。

■対象スタートアップの前提
<定性的な基準>
単なる起業ではなく、新たなビジネスモデルによってイノベーションを起こし、短期間で急成長を目指すチームや法人
<定量的な基準>
・1つの自社プロダクトを軸に事業の成長を目指しているチームor企業
・株式による資金調達を行う予定、もしくは行ったことのある企業
・これから登記を行うチーム、または登記から5年以内の企業
・福岡で登記をしている企業、または福岡に拠点を持つ企業

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