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【FV family vol5】境界線の向こう側への想像力を、テクノロジーで補強する~the Babels inc. CEO大西ラドクリフ貴士さん~

こんにちは!F Venturesインターンの堀越です!

今回は投資先インタビュー企画FV family第5弾という事で、the Babels inc.CEOの大西ラドクリフ貴士さんにお話を伺いました!

新卒でリクルートに勤務したのち、若い頃から感じていた問題をプロダクトで解決しようと起業したラドクリフさん。そのバックグラウンドや胸の内にある哲学をお聞きしました。

バベルイメージ

〈the Babels株式会社〉
“Product for Peace”をコーポレートビジョンに掲げ、「あらゆる物事の多面的な視点を得れる場を提供して、異なる価値観も受け容れられる人が増える世界」をプロダクトやテクノロジーを通して実現する。現在、オピニオンプラットフォームHistorieと今年5月にβ版をローンチしたトークアプリTalkstandの、2つのサービスを提供している。

▼Talkstandの詳しい情報はこちら▼

学生時代につくった世界共通言語をつくるwebサービス、「未来言語」

堀越:最初に、学生時代から起業するまでの経歴を教えてください。

ラド:学生時代からWebサービスをつくっていたんです。
初めて作ったのは「MIRAIGENGO(未来言語)」という、世界共通の言語をボディランゲージの集合知でつくるCGMのサービスです。
「ありがとう」や「ごめんね」といった言葉に対して世界中の人が自分のジェスチャーをアップロードしていって、辞書をつくるようなサービスでした。

勿論、言葉って海外では伝わらない。でもボディランゲージは言葉が無くても伝わりますよね。そこで世界共通言語としての手話やボディランゲージを生み出そうと思い、色んな国や地域、様々なバックグラウンドを持った人達の間で伝わる言語を、Web上でつくっていくサービスを開発していました。

ユーザー参加型で動画をアップロードするサービスだったんですが、当時の2010年くらいはスマホを持っている人もまばらで電波状況も怪しかったので、かなり斬新なものだったと思います。

堀越:どうして”世界共通言語”を目指そうと思われたんですか?

ラド:実を言うと「未来言語」を通して出来上がる世界共通言語そのものにはそれ程に執着はありませんでした。世界共通言語を世界中の人でつくるプロセス自体に価値があると思っていて、色んなバックグラウンドを超えて世界中で1つの目標に向かうプロセスを共有できるサービスをつくりたいと思っていたんですよね。
そのための共通の目標が世界共通言語でした。共通言語は世界中の人が跨って参加しないと成立しないという制約があるのも、自分としては熱かったです。

大学卒業後は、新卒で入社したリクルートで5年間働いていました。リクルートでは、新規事業の責任者やプロダクトマネージャー、事業開発Bizdev、ファイナンス、アライアンスなど幅広い領域の仕事をさせてもらいました。その幅広い業務の経験が今に活きているなと思いますね。


▲RECRUIT時代に担当したサービスの1つ。毎月写真が届いて少しずつ
卒業アルバムができる高校生向けアプリ、ピクミーナ。
アルバムプリントは、富士フィルムさんとのアライアンスで実現。

「自分がやらないと世界が前進しない」リクルートを辞めて追い求めた人生のテーマとは

堀越:リクルートで働いた後、どうして起業しようと思ったんですか?

ラド:リクルートはすごくいい環境だったんですよ。常に新しい成長の機会を与えてくれて、ずっと働いてもいいと思えるくらいでした。僕が入社して1年目の時、NEWRINGという社内の新規事業提案のコンペで同期の何人かで事業提案を出したら、たまたま目をつけてもらって、そのプランがRECRUITグループオールでその年の1位になったんです。その後はずっと新規事業に関連する業務をしていました。

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▲RECRUITのNEWRINGで受賞した際、同僚の方々と。

本当に色んなことにチャレンジさせてくれるんですよ。なのでリクルートの中で出来ることって沢山あるんです。
でも、僕が人生で成し遂げたい事はリクルートでやることじゃないなと思ったんですよね(笑)

もともと小学生くらいから、いろんな価値観の人同士の関係性の構築とか改善とか衝突とか、そういうものに興味がありました。国籍や人種、宗教などの境界線が跨った人と人との衝突が、自分の中で気にかかっていたんです。
それを改善、解決していくことが、自分の人生のテーマの1つです。

問題意識が強まったのは高校の頃です。僕の高校は兵庫県の神戸にあり、色んな民族的バックグラウンドの人が仲良く暮らしている地域にありました。中国や韓国、朝鮮や日本など色んなバックグラウンドを持った友人も多かったです。

そこで気づいたのは、僕らは1人1人は友達としてはすごく仲がいいんですが、「中国人は」とか「韓国人は」「日本人は」という風に1つ話のレイヤーが上がると、急にヘイトスピーチとか悪口が出ることがあることです。

友達としてはお互いに仲がいいのに、「俺は中国人嫌いだよ」「日本人は嫌い」といったことが普通に口に出ることがある。そしてそれをあまり気にしていない。正確に言うと「教えられてきたことや育ってきた環境が違うから、これは仕方がないことだ。」「これから先もずっと変えられないことだ。」と諦めてしまっている人がとても多いんです。

でも僕はこれを「変えていけること」だと思った。これが当時から、今までずっと抱えている社会への違和感です。

その高校時代が16、17歳の時で、リクルートにいたのが30手前だったので、10年以上時間が経っていたのに、状況は全く変わっていなかった。時を経てもなんにも変わらない世の中を見て、気づいちゃったんですよ。

「あ、この領域、みんな興味ないんだな」って(笑)

自分の中ではとても大事なことだと思って生きてきたんですが、社会に対するこの違和感って他の人にとってはどうやら優先順位が低いようなんですよね。「大事なことだけど、まあ仕方ないよね」みたいな。
だから僕がやらないと、次の10年も世界が前進しないんだろうな、という感覚を持ちました。また当時の社会の状況も重なって、今だ、と思って起業しました。

ユーザーヒアリングから生まれた新プロダクト

堀越:起業後の現在、展開しているサービスについて教えてください。

ラド:僕らが現在展開しているサービスは2つあります。

1つはHistorieというサービスです。世の中には意見が衝突してしまうようなクエスチョンが色々ありますよね。Historieでは、そんなクエスチョンに対して色々な立場の人の主張や意見を読み比べることができます。例えば最近話題になっていた9月入学の話や、歴史解釈の話、性差別の話などです。

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もう1つ、最近注力しているのがはTalkstand というサービスです。同じトピックについて話したい人同士が、話し相手を見つけて語り合えるというトークアプリです。ビデオ通話も、音声通話もどちらでも話せます。

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堀越:なるほど、ありがとうございます。Historieを作り始めた理由は先ほど仰っていた人生のテーマに起因すると思うのですが、そこからTalkstandに注力をしようと思ったのは何故ですか?

ラド:Historieはまず英語圏向けに提供していた英語ベースのサービスで、世界各国の方にユーザーヒアリングをしていたんです。その時に多くの若者が、「色んな意見を簡単に読み比べられるのは嬉しいけど、僕らはただ読み比べるだけでは納得できない。僕らは彼らと話したいんだよ。」と言っていたんです。
「彼らが何故この意見を持つまでに至ったのか、どんな環境で育ってきたか、どんな気持ちなのか、そういうことを聞きたいんだ。意見や価値観が違う人と、喧嘩せず冷静に話せる場所が欲しい。」と。

それを聞いて、とても驚きましたが、納得しました。

SNSだとどうしても喧嘩になっちゃうじゃないですか。しかも自分の近くには自分に意見の近い人しかいないから、視野も狭まっていく。やはり既存のSNSの場では話しにくいから、もっと話せる場所を作ってみようかなと思ったのがTalkstandをつくるきっかけです。

堀越:HistorieがあったからこそTalkstandが生まれたんですね。

ラド:本当にそうですね。
ユーザーヒアリングでその話を聞いて、カーンと頭が殴られたような感じがしました(笑)

そこで実験してみたんです。同じトピックに対して興味があり、かつ違う意見を持っていそうな2人を繋げて、話してもらって。最初はテキストでやり取りして貰っていたんですが、それだと言葉尻が強くなってしまったり、レスポンスが遅くなってしまうので満足度は高くありませんでした。

さらにヒアリングをすると、「テキストのやりとりじゃなく通話で話したいんだよ!」と言われました。僕らは、政治などに対して反対意見を持っている初対面の人と通話で話すって怖くないのか?と不安に思いましたが、とりあえず話してもらおうという事でzoomを繋げました。そうしたら多くの人がビデオオンにして話し始めたことにも驚きましたが、対話後の満足度がとても高かったんです。

それを受けて更に実験と改良を重ね、Talkstandをつくっていきました。

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▲ユーザー同士をzoomで繋げた際の写真。ピエロがラドさんで、
当時はUnderstoodというサービス名だった。

インターネットでバベルの塔を建てる

堀越:the Babelsという社名に込められた思いを教えて頂きたいのですが、やはりバベルの塔から来ているのでしょうか?

ラド:まさにそうです。ただ「バベルの塔」というのは神話ですが、僕らの会社名に宗教的な意味はありません。
人間たちが協力しあって天に近づこうと塔を作っていると、言語や大陸分割などの境界線を引かれてしまうという有名なお話ですね。

それを社名に選んだのは、トップダウンで作られたものを、ボトムアップで人間たちが乗り越えようとしたストーリーが自分たちのチャレンジや思想に近いと思ったからです。インターネットを使ってバベルの塔を建てようというニュアンスも込めています。空想的で実現不可能な計画のことを比喩的にバベルの塔と言ったりもするんですが、どうせならそのくらいのチャレンジをしたいという思いもありました。

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ちなみにBabels、とsをつけているのは、the Babels(ザ バベルズ)になると
バンドっぽいからです。バンドっぽくないですか?(笑)
単にカッコいいからというのに加えて、バンドのようにそれぞれ色んなパートで色んな技術がある人が集まるっていいな、と思ってsをつけてます。
実際に、Babelsには本当に優秀で頼りがいのあるメンバーが集まっています。

コロナで見つけた新たなニーズ

堀越:新型コロナウイルスの流行の影響はどれくらいあったんでしょうか?

ラド:事業としてはかなり影響はありました。
コロナが流行り始めたのがTalkstandのローンチとぴったり合っていたんです。2月頭にandroidのα版を出したんですが、計画していたオフラインのプロモーションが殆ど無くなってしまいました。新しいサービスをα版で小さく公開するときにオフラインを使えないのは大変でしたが、オンラインで頑張ろうという事になりました。

一方で、新たな発見もありました。外出自粛によって人と話したいのに話せないというストレスを抱え、孤独を感じる人が増えましたよね。
そこでTalkstandがそういう気持ちを解決できるサービスなのでは、と考えました。もともとその様な目的で開発を始めたわけではなかったんですが、リモートワークで孤独に感じてしまう人たちへの解決策としての角度が生まれたんですよね。実際にそれをきっかけにアプリを使い始めてくれる人も多かったです。映画や漫画とか、そのほかビジネスの話題も人気です。

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緊急事態宣言が解除されてからも、リモートワークは増えると思うんですが、それだと雑談がどうしても減ってしまう。なので人と話せない寂しさであったりとか、雑談したいという気持ちとかいうニーズを今後は拾っていきたいですね。

また、最近SNSが荒れやすくなっていますよね。それにも少なからずこの社会情勢が影響していると思っています。
Talkstandを使ったユーザーさんが「Twitterならこの話題は絶対喧嘩になる。でもTalkstandの通話なら会話のレスポンスが早いから、ニュアンスの補足ができる。」と仰っていたとおり、顔を見て話したり音声で声色を聞くと、加減の調整がしやすいしひどい誹謗中傷が口に出にくい。なのでTalkstandは荒れやすいトピックに関して話すのにも、とても向いていると思います。

境界線の向こう側への想像力をテクノロジーで補強する

堀越:ラドさん自身の今後の目標をお伺いしたいんですが、先ほど話されていた人生のテーマと重なりますよね。

ラド:はい。この世界には境界線の向こう側への想像力が欠け過ぎているので、それを補うないし補強する様なものをテクノロジーやプロダクトを通じて創っていきたいです。色んな境界線を跨いでいきたいので、世界中にこのプロダクトを届けないといけませんね。

学生へのメッセージ

堀越:最後に学生へのメッセージをお願いします。学生時代にやっておけばよかったと思うことがあればぜひ教えてください。

ラド:学生時代にやっておけば良かった事としては、勉強です。今大人になって、「歴史や哲学、政治などいろんな世界のことを学生時代もっとちゃんと勉強すればよかった」と度々思います。ですが、それは僕が社会人になって仕事をして、色んなことを見てきたから思うわけで、学生時代の自分がそういわれても、納得できないと思うんですよね。

だから、「人と話す」事ですかね。
同世代でも年下でも年上でも、違う国の人でもいいので、色んな人と沢山話して欲しいです。話すトピックはなんでもいいと思います。とにかく、普段話さない人と話すこと。

あとは自分とは考え方が全然違う人たちと話すことが出来るので、旅もいいと思います。「未来言語」を作ろうと思ったのも旅先での事なんです。

進化とは何だろうか』という僕の好きな本の中に、北極か南極に血が凍らない魚がいると書いてあったんです。その魚は突然変異で生まれてきて繁殖していったそうです。それを知ったとき、「もし血が凍らない魚がハワイで生まれていたら全然意味ないし、その才能が生きないまま死んでいくんだな」と思いました。
僕が「皆この領域に興味ないんだ」と気づいた時、一方で「自分の凍らない血を見つけた」と思ったんです。
このままハワイで泳いでいてもだめだ、北極で泳ごう、と。

色んな人と話せば、皆が興味があることや自分しか興味がないことが分かりますよね。そうすれば自分の凍らない血を見つけることが出来ると思います。ぜひTalkstandで色んな人と話してもらえれば嬉しいです!

興味深いお話をありがとうございました!

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