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むしろ今がチャンス、投資家と起業家が語る“スタートアップ冬の時代”にこそすべきこと

2022年12月10日、F VenturesはU25向けスタートアップの祭典『TORYUMON TOKYO 2022』を東京ミッドタウン日比谷6F BASE Q HALLで開催しました。3年ぶりとなるオフラインのイベントでは豪華ゲストによるトークセッションやピッチコンテスト、交流会などを実施しています。

第3部のセッションでは「スタートアップ冬の時代をどう乗り越えるか?」と題し、投資家と起業家の両方の視点で、2022年における株式市場や世界経済の低迷がスタートアップに与えている影響、そして今だからこそスタートアップがすべきことについて議論しました。この記事はそのセッション内容をまとめたものです。

第3部にご登壇いただいたのは、シニフィアン株式会社共同代表の朝倉祐介氏、株式会社ナナメウエ代表取締役の石濵嵩博氏、株式会社タイミー代表取締役社長の小川嶺氏の3名(順不同、文中敬称略)で、モデレーターはグロービス・キャピタル・パートナーズ代表パートナーの高宮慎一氏が務めました。

高宮 慎一 GLOBIS CAPITAL PARTNERS 代表パートナー


当日の会場の様子

スタートアップ市場と暗号資産市場に冬が到来

高宮:このセッションのタイトルにもある「スタートアップ冬の時代」。株式市場やアメリカのスタートアップファイナンスの状況を見ていると本当に冬という感じですが、お三方の実感としてはどうでしょうか、そして実際何が冬なのか、去年までとはどう違うのかを聞きたいと思います。石濵さん、いかがでしょう?

石濵:クリプトでいうと、去年の今頃のもう少し手前ぐらいで、400兆円ぐらいの暗号資産のマーケットサイズが存在していたのが、今では100兆円くらいになっています。

高宮:クリプトの冬の話ですね。

石濵:はい、そういう役割かと思いまして(笑)。最近だと暗号資産取引所のFTXという三井住友銀行くらいの規模のある会社が、顧客の預金を持ったまま倒産するということが起きまして、その被害総額は数兆円規模と言われています。このことから目下、クリプト業界全体がとんでもないことになっています。

当然のごとく、僕たちスタートアップはそういうところに巡っているお金から出資をしてもらって事業を運営しているので、市場に流通している暗号資産のバリュエーションがものすごく落ち、非常に厳しい状況になっています。

ただ幸運なのは、こうしたことがアメリカを中心に起きたわけですが、日本の投資家はこれまでWeb3や暗号資産にあまり投資してこなかったので、今のところ日本の投資家のダメージは少ないことですね。

石濵 嵩博 株式会社ナナメウエ 代表取締役

高宮:スタートアップ冬の時代と言われる中、スタートアップの中でもすごく期待されていた新しいテーマであるWeb3で、リーマンショックに似た「FTXショック」ようなことが起きてしまって、市場がしぼんだという意味で言うとダブルパンチということですね。

小川さん、スタートアップ界隈全体の冬感で言うと何が変わったと感じていますか。

小川さん:皆さん起業を目指すのであれば、やっぱり上場したいと思っているかと思いますが、最近はダウンラウンドのIPOが結構起きていると感じています。

例えばベースフードさんやnoteさんなど、皆さんが知ってるような会社さんが本当に頑張って上場したにも関わらず、どんどんバリュエーションが下がっている状況です。IPOしたら株価がどんどん上がる時代から、なかなか上がらない時代になってきたということです。

大きな変わり目で言うとSaaSモデルの崩壊があります。SaaSはチャーンレート(解約率)がすごく低くて、売上をどんどん積み上げていく事業です。だから今は赤字でも、将来的には絶対黒字になるから高いバリュエーションが付くといった時代があったわけです。でもそれが崩れてしまって、しっかり黒字を出さなきゃ駄目だよねという流れになってきています。

今まで評価されてきたものが評価されなくなって、しっかり利益を出そうという流れになったことは、非常に大きな変化なんじゃないかなと思っています。

小川 嶺 株式会社タイミー 代表取締役

高宮:今小川さんがおっしゃったスタートアップのバリュエーションというのは、どうしても上場企業のバリュエーションに引っ張られます。簡単に言ってしまうと、売上や利益の何倍のようなかたちで、業界ごとに上場株の相場観が決まっていて、それに応じて未上場株のバリュエーションも決まってきます。現状、上場株の市場で投資家心理が傷み、お金が流れ込まなくなってきています。この倍率は需給で決まるところもあるので、その倍率が以前の3分の1とかになってしまったのです。そしてその影響をスタートアップにも波及しています。

そんな中、朝倉さん、投資家側から見たときにスタートアップ業界の冬、そして調達の環境をどのように感じていますか。

“冬”は来ているが、2022年のベンチャー投資家額は昨年と同水準

朝倉:そうですね。「スタートアップ冬の時代」というお題ですけれども、これはあくまで日本の話をしていると思うんですよね。それを踏まえた上で「今は本当に冬の時代なのか」という点を提起したいと思います。

2021年の日本における年間ベンチャー投資額、つまりスタートアップがエクイティファイナンスによってVCなどから調達した額はどれぐらいか、皆さんご存知でしょうか。一応記録としては8000億円を超えていて、おそらく記録されていないものを含めたら9000億円を超えているんじゃないかなと思います。2022年はというと、11月末の時点でもう去年と同水準まで資金調達が進んでいるんですよ。

高宮:ちなみに2009年は200億円とかでした。

朝倉:はい。なので、今年は冬と言いつつ去年と一緒というところがあって「本当に冬なんですか?」ということが頭に思い浮かぶと思います。今、高宮さんからもあったように、2010年頃に僕がスタートアップをやっていた頃の年間ベンチャー投資額は700億円弱でした。

今だと1億円の資金調達のニュースは全然普通ですよね。むしろ少ない方かもしれません。でも当時は1億円でもちょっとしたニュースだったんですよ。すごいねみたいな。今は、10年前と比べると10倍以上の規模なので、これって冬なんだっけ?というのはあります。

とはいえ、足元では冬を感じています。僕はレイトステージという、上場に近いタイミングの会社に投資する仕事をしています。そうなると、より上場市場の株価に紐づいた値付けがされがちです。ですので、これまで投資してきたレイトステージのスタートアップがもう1回資金調達しようとすると、なかなか前回と同じ値段がつかないんじゃないか、あるいはダウンラウンドといって評価を下げた資金調達しかできないんじゃないかという話が出てくるのです。こういった話は僕らの投資先だけではなく、レイトステージの会社では確実に聞くようになりました。

とはいえ、シードやアーリー、つまりできたばかりの会社では、あまり関係ないんじゃないかなとは思っています。フェーズやセクターによって感じ方は違うかもしれません。

あと一点、今年を象徴する出来事だなと思ったのが、ユーザーベースの未上場化です。「SPEEDA」とか「NewsPicks」を提供している会社ですね。その会社が先日カーライルというプライベートエクイティファンドからTOBを受ける、ややこしい言葉ですけれど、要は上場してる会社を未上場化しますという提案を受け入れたんですね。

(編集注:ユーザベースは11月9日、投資ファンドのカーライルによる株式公開買付(TOB)を通じた完全子会社化に伴う上場廃止を発表している)。

ユーザーベースの業績を見ると、売上が200億円弱ある会社なんですよ。スタートアップでこれはすごいことです。だけど時価総額はというと、10月や9月の時点で大体200億円ちょっとだったんですね。

PSR(株価売上高倍率)という用語を皆さん聞いたことあるかどうかわからないんですけれど、単純に言うと時価総額/売上です。それこそ、さっき話に出たSaaSの会社は、来年の売上予測の10倍、20倍、30倍の評価額で資金調達しますというのが普通だったのですが、上場しているユーザーベースの場合は1倍ちょっとだったわけです。全然評価されないから未上場化するということなんですね。

高宮:確か一昨年ぐらいは時価総額が1000億円を越えてましたよね。

朝倉:そうです。それくらいあったものがあっという間に5分の1になってしまった。これは時代の節目という意味においては象徴的な出来事だなと思います。

朝倉 祐介 シニフィアン株式会社 共同代表

高宮:さっきの計算式で言うと、売上や利益という経営者側がコントロールできる業績×マーケット側で決まる倍率を掛け算して時価総額を計算するのですが、マーケット側が下がりすぎて、どんなに経営者が頑張っても時価総額を上げにくいみたいな状況になってしまったということですね。

シード、アーリーのスタートアップに冬は関係ない

高宮:そんな中、これから起業して調達をしたいときはどうすればいいのでしょうか。本当に冬かどうかはさておき、去年よりは調達が難しくなっている状況なので、何に注意してどういうふうに調達すればいいと思いますか。

小川:タイミーではシードのときに1億円のバリュエーションで1200万円を調達しました。とはいえ、最近調達した会社のバリュエーションを聞くと2億円、1億円、1.5億円とか、タイミーの時より上がってるなと感じています。VCが増えたこともあると思うのですが、シードの場合は冬どころか、むしろどんどん良くなってるイメージがあります。そんなことないのでしょうか。

高宮:朝倉さんのおっしゃっていた通り、上場株の倍率が下がる影響は、早いステージの会社ほど、影響が少ないんですよね。なぜなら、何もない売上がまだない会社に倍率をかけても何もないので、代わりに期待値で評価する部分が大きいからです。とはいえ、ちょっとずつは波及しています。

評価額が付いているミドルステージや上場までの助走期間が短いレイトステージの会社の方が影響は大きいでしょう。特に去年まで非常に調達しやすい環境でしたので、お金で売上を買うという成長戦略をとってきた会社は突然調達しづらくなり、利益が出ていない、お金がなくて伸びないみたいな状況になると苦労すると思います。

投資家目線で朝倉さん、このあたりはどう思いますか。

朝倉:シード、アーリーは関係ないですね、ほとんど。この状況の良い点は、スタートアップをやる人が減ったり、採用を進めやすくなったりすることです。それに今悪いんだったら、これから上がるしかないわけです。そういう意味でいうと市況が厳しいタイミングに会社を始めるのは悪い話じゃないと思います。

高宮:石濵さん、株式で今まで通り調達するという環境をどう見ていますか。またトークン上場を目指して調達することを考えた経緯についても教えてください。

(編集注:株式会社ナナメウエは2022年8月23日、暗号資産取引所を運営する株式会社bitFlyerとIEOの実施に向けた契約の締結を発表している)

石濵:今の話を聞いて、シードが調達できなくなるシナリオはどんなのがあるのかな、と聞きたいなと思いました。

エクイティの調達については皆さんと同じで、レイトになるほど難しいけれど、シードは全然むしろ難易度は下がっているんじゃないかなとは思っています。

ただ、僕たちがIEOする理由はエクイティでの資金調達が難しいそうだからとかはあんまり関係なくて、自分たちのソーシャルプラットフォームをより公共性の高いものにしていきたい、そしてWeb3の理念に寄せたかたちでサービスを運営した方がいいんじゃないかっていう考えの下にトークンの発行を決めたという経緯です。資金調達よりも、トークン自体を日本の社会に広げていく現実的な手段としてIEOを選んだということですね。なので、今までの冬の話と、IEOをなぜしたかというところは文脈が違うかなと思っています。

(編集注:IEOとは「Initial Exchange Offering」の略で、仮想通貨の発行体が暗号資産取引所において「トークン」を上場し、資金調達する仕組み)

今すぐ投資がなくなるわけではない

高宮:今のパスを受けて朝倉さん、どうですか。シードで調達できないのはどういうときでしょうか。過去に起きた話だと、リーマンショックやネットバブル崩壊の直後ではもう本当に出し手がいなくなって、1億円以上出資する会社がほとんどないような時期もありました。けれど、今はそういう時代じゃないという構造の変化みたいな点ではどうでしょうか。

朝倉:シリーズAって言葉を聞くと皆さん、どれぐらいの資金調達を想像しますか。3億円とか、最近だと2桁億単位がシリーズAと思う人もいるかと思いますけど、僕の時は1億円とかだったんですよね。5000万円、1億円とか。

今は規模が大きくなってることからも分かる通り、お金の出し手が増えてるわけですよね。投資家の数も増えているし、その投資家にお金を出す人たちも増えてきている。もちろん景気のよしあしによって、増えたり減ったりすることはありますが、完全にリーマンショック直後に逆戻りするほど弱いエコシステムではないということは言えるんじゃないかなと思います。それに関わっている関係者が多くなりすぎましたね。

高宮:そうですね。過去には、お金があって本業も好調だから投資をしている事業会社や銀行のお金がベンチャー投資に回ってるっていうケースも多くありました。そのため、景気が悪くなり本業の調子が悪くなると投資をやめてしまうということもありました。

今はベンチャー投資を専業でやっていて、景気が良くても悪くても、投資を続ける人が増えてきました。専業のVCは、10年間の期間の縛りで資金を集めています。今後もうファンドに出資したくないと、仮にファンドに投資する側が思ったとしても、今のファンドは投資し続けられるわけです。在庫みたいな概念で、「ドライパウダー」と言うのですが、業界にお金がたまっているんですね。去年1年間で8000億円VCがファンドレイズしたということは、3年分、2.5兆円ぐらいはあるので、しばらくは完全に止まるということはないでしょう。その後どうなるかはスタートアップエコシステムとして、ちゃんとリターンを投資家に返せるか次第みたいなところはあります。ファンドそのものが生き残るかみたいな話もありますが、いずれにせよ、直近急にゼロになるってことはないんじゃないかなと思います。

Web3、NFTなどのバズワードに乗るべきか

小川: Web3だから、クリプトだから、調達しやすい面もあるのかなと思っているのですが、そのあたりはどうですか。Web3は個人的にはまだ早いと思っています。Web3やクリプトといったバスワードに乗って起業しなくとも、世の中には社会課題がまだいっぱいあるのでそこに向けて起業する人もいればなと。

タイミーは少子高齢化による労働力不足のところで起業し、メルカリもフリマで起業しています。Web3は入っていないわけです。なので、全員が全員Web3をやらない方がいいかもしれない、と個人的に思ってるのですが、そのあたりはどうでしょうか。

高宮:めちゃめちゃナイスポイントだと思います。石濵さん、どうですか。

石濵:資金調達の点でいうと去年の今頃はプロダクトはなく、ホワイトペーパーだけでバリュエーション100億円で、10億円調達します、みたいなところがたくさん存在しました。プロダクトが今もまだ出ていないみたいなところも結構あります。あとはNFTのプロジェクトで、例えば1万枚のNFTを発行して資金調達するみたいなことが去年の今頃はブームでした。イラストを作って出すだけでお金がどさっと入ってきて、もうそれでファウンダーはやる気をなくしてしまい、それから何も進んでいないようなプロジェクトもちらほらある状態だったのです。去年の今頃は事業の理念や「なんでWeb3なのか」をあんまり考えなくても、資金調達という意味では比較的簡単にできていた、というのは事実だなとは思います。

ただ、FTXの件やLUNAとTerraの暴落、暗号通貨ヘッジファンドのThree Arrows Capitalの破綻などがあって、現状はそういった調達の仕方はかなり難しくなってきてると思います。実際の社会性やユーザーやトランザクションなどがしっかりと見られる動きになってきているということです。

ただ、僕はクリプトに挑戦することには大賛成です。過去50年において最も偉大なイノベーションはインターネットだと思うんですよね。インターネットは管理者のいない自律分散型ネットワークとよく言われます。それぞれの国によって法令はあるものの、自分がやりたいことをウェブサイトで立ち上げることができれば、すぐにグローバルに向けて公開できます。そしてそれを管理している人は存在せず、誰でも参加できるのです。これは非常に大きなイノベーションだなと思っています。

クリプトの文脈だと、アプリケーションプラットフォームとしてイーサリアムがあり、そこにアプリケーションを公開できるようになりました。通常、アプリを公開するならAppleやGoogleの審査があって彼らのルールの下、アプリケーションを作らなきゃいけませんでした。それをよりフェアな状態で、インターネットと同じようなルールでDappsというアプリケーションを作れて、世界中に届けられるのです。ここに非常に大きなイノベーションの余地があると思っています。

高宮:小川さんと石濵さんがおっしゃったことは対立概念じゃないと思うんですよね。何か新しいテクノロジー、例えば、インターネットとかWeb3とか出てくると、最初は新しいからとりあえずWeb 2、Web3と言っとくところが出てきます。バズワード化するのでとりあえず社名に入れておくと調達できちゃうみたいなことです。いわゆるハイプカーブと言われる、新しいテクノロジーだからという理由で一気に注目を集め、加熱している状態です。やがてバブルが弾けると幻滅期になって、その後本質的に普及し始めます。この時期になるとそのテクノロジーを使ってユーザーのどんな課題を解決するのか、社会にどんな価値をもたらすのかに焦点を当てたサービスが出てきます。

”インターネット”スタートアップというものはないじゃないですか。ゲームスタートアップやフリマスタートアップだけど、インターネットを活用しているわけで、インターネットは当たり前で、テクノロジーの名前が事業の名前になることは普及期にはないと思うんです。事業が成熟していくと、どんどん本質的になってくる。そういう感じなので、最後は世の中の誰もが使うみたいなサービスになるには、小川さんの言うように本質的な課題を解決する必要があるでしょう。一方で、Web3に関して言うと今は幻滅期だから、今こそ本質的なサービスが出てきて、むしろチャンスなんじゃないかと考えることもできる。そんな感じなんじゃないかなと思います。

冬は会社を始めるには良い時期

高宮:ところで、冬の後には春、夏とサイクルが巡るというのは、VCを15年やっていて絶対言い切れることだと思っています。お三方に聞きたいのは、「冬の時代だからこそ、これをやっておくとチャンスをものにできる」といったことはありますか。

石濵:社会課題をいかに解決するか、その方法がトークン発行みたいなことなのか、あるいはイーサリアムにデプロイするアプリケーションなのか、あるいはバイトの派遣なのか、それぞれあると思います。ただ、冬かどうかはシードの人たちには関係がないと思うので、いかに課題を解決するかに集中して、力を溜めることが一番重要かなと思います。

小川:全く同意です。2年ぐらい前のバブルの時期は、どの企業もめちゃくちゃ人が欲しかったんですよね。エンジニアやビズデブできる人の年収がどんどん高騰して、タイミーも戦えない状態でした。オファーを出しても他社に負けてしまうんですよ。それが最近冬の時代になりまして、人材があふれるようになってきています。他のスタートアップとかが採用を止め始めてるんですね。大企業も仕事がなくなってくると給料を払えなくなって、高給をもらっているコンサルタントなどがやめていくようなことも起きます。そうすると頭の良い方々が流れてくるわけで、そういう方々と起業するチャンスが今、出てきてんじゃないかなと思っています。

なので、冬の時代は人材獲得の春の時代だと思っています。仲間と共にこの時代をしっかり乗り越えて、力を蓄えるという意味で言うと、チームを作るには良い時期なんじゃないかなと思っています。

高宮さん:朝倉さん、投資家目線でどうですか。

朝倉:スタートアップは今でこそ、こうやって土曜日の昼間にこれだけ多くの人が集まるぐらいメジャーな存在になりはしたものの、やっぱり基本は何も持ってない人たちじゃないですか。何も持ってない人たちが勝とうとするには、やっぱり逆張りだと思うんですよね。だからあんまり人がやりたがらないことをやる方がいいわけです。

夏の時代は「スタートアップすごい、やってみよう」という人たちが集まる。けれど冬の時代になると今度は、あんまり良くなさそうだからやめようか、という人たちがいっぱい出てくるわけですよね。これは言い換えると競合が減る。起業家は珍しいから、尖った存在になれる。これは資金を集めるという面でも、人材を獲得するという面でもとてもいいことだと思います。

大きいお金を集めるということは逆に言うと、大きいお金をうまく使いこなせなければいけないということです。そしてそれをレベル1の起業家ができるかというと、そうじゃないんですよね。最初は資金繰りとか、どうやったら食い繋いでいけるかというところを考える。少ないお金でいかに効果を出すかといったことをちゃんと考えるということです。地味に聞こえるかもしれないですけれども、経営者のトレーニングとしてはものすごく良いと思います。

そういう意味においては本当に長く続く会社、足腰の強い会社を皆さんが作りたいと思うんだったら、今はものすごくいい時期だと思いますね。

高宮:さっきの専業の投資家が増えているという文脈だと、投資家は投資をやめるわけにはいかないので冬だろうが夏だろうが投資を続けます。そして冬は良い会社にお金が集中しやすいので、競合よりもお金を集めて差を広げるチャンスでもあります。GAFAMなどが創業したのも冬の時代で、冬の時代にこそ次の時代の芽が出てくるというようなこともよく言われています。なので今はチャンスです。

「失敗したら二度と再起できない」なんて嘘

高宮:最後に、若者に向けて、お三方から最後にひとことメッセージをいただいて、今日の締めとしたいと思います。

小川さん:はい。今日はありがとうございました。起業家を目指すのもいいと思いますが、起業ってそんな簡単じゃないところもあるので、伸びてるベンチャーにインターンや正社員で1社目に入る、その次に起業するのは本当におすすめしています。タイミーには将来起業したいと思っている仲間もすごく多いので、もし興味があったらぜひ応募いただけたらと思います。そして一緒にこの冬の時代を乗り越えて、日本をどんどん良くしていけたらなと思っておりますので、今後ともよろしくお願いします。ありがとうございました。

石濵:やりたいことをやる、というのがいいかなと思っています。人生一回なんで、諸先輩方がしっかりとエコシステムを作ってくれているがゆえに、今のびのびやれる環境が整っています。冬もチャンスという話でしたので、やりたいことを全力でやるというのがいいんじゃないかと思っています。がんばってください。

朝倉:お集まりの中には学生さんもいれば、社会人として働いている方もいらっしゃるかと思います。日本は「失敗したら二度と再起できない」とか「失敗したら帰って来られない社会」とよく言われますよね。ですが、そんなのは嘘です。そんなこと全く気にしなくていいので、自分で起業するもいいですし、スタートアップに入るもいいですし、ぜひ挑戦してください。いくらでもやり直しが効きますので。スタートアップに挑戦する場合は高宮さんや僕に声をかけてください(笑)。今日はありがとうございました。

※セッション内容は読みやすさのため加筆、編集しています。

第3部セッションの動画

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