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001 人生100年時代は、働き手にとってけっこういい時代なのかもしれない理由。

人生100年時代はけっこういい時代かもしれません。今回はそんな話を書きます。

定年の無い時代がやってくる

これまでの社会では、学校を卒業したら、就職して、定年退職したあと静かな老後を送るのが一般的でした。

20世紀の作られた人生設計のパターンと言って良いでしょう。

このパターンはけっこう昔から「まもなく終わる」と言われていましたが、なぜかここまで社会の仕組みとして残っています。

しかし、いよいよ、これから本格化する人生100年時代を前にして、この仕組みも終わりそうです。

リンダ・グラットンとアンドリュー・スコットの著書『ライフ・シフト』によると人生100年時代を生きるためには、人は少なくとも75才から85才まで働かなければならないといいます。

そうなると「定年」という概念自体、無くなるかもしれません。

企業の寿命はどんどん短くなっている

人の働く期間が長くなっているのに対して、企業の寿命はどんどん短くなっています。

次のグラフは、東京商工リサーチの調査結果をまとめたものです。

これを見ていただければ分かるとおり、2001年を境に30年以上の企業と10年未満の企業の倒産構成比が逆転しており、その後も30年以上の倒産は増え続けています。

業歴別 企業倒産件数構成比推移

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東京商工リサーチのデータを基に筆者が作成

今とはまったく異なる働き方をする時代が来る

人生において仕事をする期間は長くなるのに対して、企業の寿命は短くなるとしたら、どういうことになるのでしょうか。

必然的に、生涯のうちに何度も会社や職種を変えることになると思います。

本人が希望するしないに関わらず、と言うより、当たり前のように誰もが転職を何度もする時代になると言うことです。

もしかしたら、すでに始まっているのかもしれません。

このような話をすると、「この歳になって転職しろと言われても、私には無理だ!」のような反応をする人は少なからずいることでしょう。

実際、私がセミナーで、今書いたようなことを話したとき、主催担当者から、「相談したいのですが…」と言われたことがあります。

まあ、たしかに不安な話だとは思います。

しかし、人生100年時代は、かなりの人が75〜85歳まで働く時代です。

ですから、今の雇用情勢や採用基準を前提に考える必要もないでしょう。

現に、各企業はすでに中高齢者の中途採用に力を入れだしています。

また、国も人生100年時代に向けて、リカレント教育(生涯にわたり教育と就労を交互に繰り返せる教育制度)などの検討に入っています。

問題は、企業も、働き手も、この社会・経済システムにうまく適応できるかどうかです。

誰もが社会や市場の変化に合わせて、いくつになっても自らを変身させなければならないとしたら、企業も、働き手も、それに合ったやり方をしなければなりません。

ライフシフトの著者によると、人生100年時代では、「エクスプローラー」、「インディペンデント・プロデューサー」、「ポートフォリオ・ワーカー」など新ステージが誕生し、労働市場に存在する職種が大幅に入れ替わる可能性もあると説いています。(すでにこの時代に入っていると思います。)

誤解してもらいたくありませんが、人生100年時代はけっして暗くはありません。

むしろ明るい時代になりそうです。

この後、『ライフシフト』が説く、新しい3つの職種を挙げています。

読めば分かると思いますが、どれも自由な感じで、自己実現に近づけるイメージがあります。


エクスプローラー

エクスプローラーとは、直訳すれば「探検者」「探究者」です。

たとえば、サラリーマンとして十分キャリアを積んだ人が、なぜか会社を辞めて、大学に通い直したり、何らかの団体に所属したりする人です。

一昔前なら「自分探し」「モラトリアム」と呼ばれたかもしれませんが、人生100年時代のエクスプローラーはこれらとはちょっと異なります。

人生100年時代のエクスプローラーは、移り変わる社会の変化に適応するために必要不可欠な変身期間です。

それまでのキャリアが、これからの社会にまったく通用しないと感じたとき、または時代の変化を機会ととらえ、変身することで自己実現に近づくと感じたとき、働き手はエクスプローラーの道を選びます。

インディペンデント・プロデューサー

インディペンデント・プロデューサーとは、直訳すれば「独立した製作者」です。分かりやすく言えば、創造的なフリーランスのことです。

エクスプローラーのあとも企業内で働く人もいるでしょうが、フリーランスや作家などの道を歩む者もいます。ただし、人生100年時代のフリーランスは、現在のフリーランスとはちょっと趣が異なります。

ご存じのとおり、AI後の社会は「機械でできることは機械が、人しかできないことを人がやる」社会です。

専門性の高い人材がプロフェッショナルとして力を発揮することで、企業はAIとの共存が可能になります。

そのさい、必要になる専門家がインディペンデント・プロデューサーです。

フリーランスとして働くのか、契約社員になるのか、それとも限定正社員になるのかは置いといて、彼らが、新しいプロジェクトのけん引役になっていきます。

ポートフォリオワーカー

ポートフォリオワーカーとは、直訳すれば「組み合わせの働き手」です。つまり、上記のエクスプローラー、インディペンデント・プロデューサー、2つの生き方を混在させる人のことです。

これからの時代、85歳まで働かなければならないとしたら、いつまでも勉強し続けて、新しい環境にどんどん飛び込み、常に自分自身を刷新し続けなければなりません。そのために、エクスプローラー、インディペンデント・プロデューサー、2つの生き方を混在する必要があります。

それはたとえ、大会社に入社して、ずっとその会社で働き続けることのできる人にも当てはまることでしょう。

今や副業は市民権を得ています。

働きながら大学や大学院に行く人も珍しくありません。

この流れは、今後、ますます拡大していくことでしょう。

これが「ライフシフト」が唱える人生100年時代の働き方です。

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