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プランニング事業への展開[NENGO(ネンゴ)](3・完)

「仕立てる賃貸」からはじまる”人単位”

NENGOにとってPORTER'S PAINTS事業の成功は、フィールドを一気に広げるチャンスになった。施工よりも上流にあたるプランナーとしての事業にも着手する。リノベーション事業や、国内初の中古不動産売買専門サイト「おんぼろ不動産マーケット」を通じた不動産仲介事業を手がけることで、ワンストップでのサービスも可能となったのだ。

それが更に広がり街づくりに至ると、街の人、土地の人とも交わる。一棟まるごとリノベーションといった案件の中で興味深かったのは、2011年に開始した「仕立てる賃貸」事業である。

これは、マンションなどの賃貸物件に「駅前立地」といった条件以外の価値を持たせるための工夫のひとつで、入居者の意見を反映してリノベーションする賃貸物件のことである。こうしたカスタマイズ賃貸も最近は増えてきたが、NENGOの「仕立てる賃貸」はその先駆けである。

賃貸物件の場合、通常はオーナー側で内装リフォームを施してから入居者を募集する。この方法だと、オーナーは入居者未定のまま先行投資を強いられる。

しかし「仕立てる賃貸」では、先に入居希望者を見つけてくるため、オーナーが資金を安心して支出できる。また、オーナーと住み手の関係性も入居前から形成されるうえ、自分本位に仕立てられた部屋だから当然居心地がいいので賃貸借契約も長期化する。仮住まい感覚ではなく、我が家感覚がもてるようになるというのだ。

住宅の賃貸借契約は入居者の生活に直結する継続的契約であり、人と人との属性が絡む難しさがある。一方で、当事者の関係が友好的に推移すれば、人間関係自体が価値になる。オーナーからすれば、入居までに空白期間が生じるというデメリットはあるが、一旦入居が決まれば家賃の継続的な維持確保に繋がる。

スポーツ中心の街づくりへ。

街づくりという意味では、川崎駅から徒歩10分の集合施設「unico」が面白い。
ビールの醸造所やシェアオフィス、バー等の飲食店のほか、井上京子選手が代表を務めるワールド女子プロレス・ディアナのリングがある。日進町といえばドヤ街だが、東海道の宿場町を世界に発信してインバウンド需要を掘り起こし、バスケットコートunicourtはじめ"おんぼろ"を仕立て直すことで世界に通じる逸材を発信している。

この成功を受け、川崎市からは簡易宿泊所も受注。2017年に設立したグループ会社「相楽ホーム」をもとにゲストハウスを運用し、アートとクリエイティブの力で街を変えていくことで「川崎らしさ」を感じて欲しいと考えているという。

また、2018年にオープンしたドヤアート宿所「日進月歩」では、2〜3畳の部屋ひとつひとつの設えを川崎に縁のある異なるアーティストに委ねて注目を浴びた。

イベントをやっても一過性なので、ハードを通じて人が集まってくるきっかけを作ることが重要と河原さんは言う。飲食店持たせれば点から面になる、と。

もうひとつ興味深い取り組みがある。久地エリアでは駅から離れた場所にあったバッティングセンターの活用方法が考えられた。

オーナーは賃貸マンションにと考えたが、立地を考えると入居が期待できなかった。一方で、このバッティングセンターは街に根付いたコンテンツであった。

そこでスポーツウェアでおなじみのアンダーアーマーに声を掛けたところ、バッティングセンターを運営しながら2階建てに仕立て直してショップを併設。いまや元プロ野球選手を招聘してレッスンコーチをしたところ大人気となっている。「UNDER ARMOUR BASEBALL HOUSE 川崎久地」がそれ。

ゴルフの打ちっぱなし「久地ゴルフガーデン」敷地内にあり、ビリヤード場も、野球とゴルフの間を埋めスポーツ施設としてボウリング場に転用。それによってこの場所は、3世代に亘る家族がみんなで来場し各々がスポーツを楽しめるスポーツヴィレッジとなった。

単体施設のリノベーションに留まらず、住民交流の場としてエリア全体のブランディングに至ったことで圧倒的な広がりが生まれた好例である。

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さて、この面白集団NENGOは、46人+一匹+一羽。ちょっと面白いのは「ほのぼの事業部」の存在で、鳥は通勤時間帯に鳥籠ごと出勤してくるという。そんな懐の深さがアイデアの源なのだろう。

そして今後。施工からはじまったNENGOは、プランニングよりもさらに上流の「解体」から取り組もうとしている。いまの2代目代表が環境経済を専攻していたこともあり、いまそちらへ意識が向いているという。令和に変わっても企業ビジョンは変わらず、人と人を繋げていくことで社会への貢献度を高めて行くに違いない。


いい音&大画面があることで日々の暮らしが豊かに。住宅というハコ、インテリアという見た目だけでない、ちょっとコダワリ派の肌が合う人たち同士が集まる暮らし方を考えていきたいと思っています。