慰めとしてのレストラン映画

すでに別のところでも書いた*ことだけれど、料理映画というのか、はたまたレストラン映画というべきか、料理やレストラン、そしてシェフなどが出てくる映画が好きだ。何回も見直しても飽きない。ドラマとしての魅力はひとまず措くとして、さまざまな料理が出てくるのはもちろん、厨房やホールの様子を見ることができるのが楽しい。

で、時々観直す(ちょっとくたびれた時に、とくに)。ここのところ観た(というか観直した)のは、『シェフと私のおいしい関係』(レストランはあんまり登場しないけど)、『二つ星料理人』、『三ツ星シェフ・フードトラック始めました』、『ソウル・キッチン』。この他にも、見たことがあるものだけでもたくさんある。

その一部をあげると、なんと言っても、それまで馴染みのなかったドイツ映画の『マーサの幸せレシピ』、『厨房で逢いましょう』、『マーサの…』のリメイク版である『幸せのレシピ』、料理大国イタリアの『リストランテの夜』、同じくグルメ大国フランスの『大統領の料理人』、そしてわが国のものでは『かもめ食堂』、『めがね』、『タンポポ』、等々、色々ある。そうそう、ミステリー仕立ての、『料理長(シェフ)殿、ご用心』や『ディナーラッシュ』なんていうのもあった。

レストラン映画というのとはちょっとちがうけれど、ご馳走が出てくるものといえば、『バベットの晩餐』という素敵な北欧映画があるし(僕は、この映画で、『ヴーヴ・クリコ』を初めて知って、そして飲んだ)。ついでに、ファンタジックな『ショコラ』もここに入れていいのだろうか。さらに、ふだん観ることのなかったインド映画でお弁当箱が行き来する『めぐり逢わせのお弁当』や『スタンリーのお弁当箱』、アルゼンチン映画『オリンダのリストランテ』がある。そして、元気だった頃の中国映画でチャン・イーモウ監督、チャン・ツィイーの『初恋のきた道』も懐かしい。

これらは、一般のドラマと同じように人間模様を描くことはもちろんだけれど、シェフ(料理人)たちの考えたことを具体的な形にするということに対する執着が、いずれにおいても半端ではない(反省させられるのだ。老婆心ながら、限りない未来の可能性を持った若者こそ観るといい)。

もちろん、ドキュメンタリーふうの『イタリアは呼んでいる』などもあるし、当然のことながらドキュメンタリーそのものもあって、何度か世界一のレストランの称号を得た名店を扱った『noma』や『エルブリ』なんかが有名のようだけれど、楽しいだけでなく教えられる事も多い。うんと昔に観た『最後の晩餐』や『コックと泥棒、その妻と愛人』など、ちょっと楽しいとは言いにくいものもあった。

当然、美しく盛り付けられた料理が、目を楽しませてくれる。しかし、なんと言っても、これらが作られるための工房であるキッチンが(レストランの種類や規模、そして時代によってそのありようは異なるけれど)、見事なまでに磨きあげられていて、そのどれもが魅力的なのだ。

先日の選挙の日の夜、僕は、「星降る夜のリストランテ」を観ることにした。(F)

*「レストラン映画に学ぶインテリア」シリーズ

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