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弔辞

■模型に特化した専門ツールの草分け

2024年2月26日(月)、シモムラアレック代表の下村朋道氏が永眠されたとつい先日知らされました。突然のことで誠に残念に思います。謹んでお悔やみを申し上げます。

このnoteを読んでいただいている方には、模型専門ツールのメーカーである「シモムラアレック」という会社をまだご存知ない方が、ひょっとするといらっしゃるかもしれませんが、恐らく「ハイパーカットソー」というツールは聞いたことがあると思います。このメーカーを一躍有名にした専門ツールの草分け、非常に薄い模型専用の精密ノコです。

当時、切れ味があまりに良くて、うっかり指まで切ってしまったにも関わらずしばらく気が付かなかったという話が聞こえてくるくらいでした。

このツールがいかによく切れるかは今更語るまでもないのですが、実は販売当時に使い始めたハイパーカットソーは、未だに使用できます。

これだけ刃こぼれしても変わらず使えるハイパーカットソー

この状態でもまだなお活躍の場があるという所に、ツールのポテンシャルとメーカーの品質へのほこりが込められています。頭や腕を失って倒れてもなお、パイロットを脱出させるまで機能し続けたガンダムみたいな趣がありますね。

旧ブログでも書いてきましたが、シモムラアレックの作るツールはどれも目的特化型で、キャッチフレーズ通り「職人かたぎ」な道具が多いんですが、どこかネーミングにユーモアがあり、思わず手に取りたくなる雰囲気があります。

「かゆいところに手が届く」サイズ感だったり、使い続けても疲れない木製の柄などの「心地よさ」を大事にしている点を常に意識した模型用の専門ツールは大ヒット。

その後このハイパーカットソーはシリーズ化され、刃部の形状、刃厚、ピッチ(刃と刃の間隔)などを変えることで、様々な目的別特化型の製品が多数リリースされ、現在もそれは継続中です。

この他、現在もリリースが続く「シャインブレード」シリーズも、シモムラアレックの生み出したスーパーツールの人気シリーズです。

■模型用ツールに最も真正面から挑むメーカー

実はRボコ、R-V6といった特殊スクレーパーシリーズがリリースされ始めたころ、下村社長にお願いして作ってもらった「ピンホイール」というツールがあります。

シモムラアレック ピンホイール

元のアイデアは忍者の持つ手裏剣のような形をイメージした平面的なツールだったんですが、安定的な作業性を考えてこういう形状になったと記憶しています。

下村社長はこんなアイデアすら柔軟に形にしていき、これ以外にも実に個性的な専門ツールを常に「模型用のツール」という点に拘り続けながら大量に生み出しています。

実際にツールを作る作業は職人さんが担うのかもしれませんが、独特のアイデアや、それを実際に形にするための原動力と継続的努力は、やはり創業者の下村朋道氏のパワーが無ければ成し得なかったのではないでしょうか。

■弔辞

以前はホビーショーの度にブースに伺っては、新しいツールを使わせて頂いたり、説明を伺ったりしていました。最近のお客様の傾向や、次に出てくるツールのアイデアなど、次から次へ湧いてくる話題と熱量に圧倒されっぱなしでした。つくづくパワーを頂いていたと思います。

昨今は、ネットでの情報のやり取りが増え、以前は毎回参加していたホビーショーからも次第に足が遠のいてしまい、コロナ前後からは会場ではほとんどお会いすることもなくなってしまいました。

ただ、そんな中でもコンスタントに新しいツールを生み出し続けネタが尽きることはないわけです。そして、そうこう言う今日もGPARTSには新しいツールが追加登録されています。

V字溝に刃付けがされた「クレバス」

旧ブログ(マテラボ)は10年以上続きましたが、記事の中ではシモムラアレックのツールを紹介することが最も多かったと思います。それくらい、使用頻度の高いツールたちがシモムラアレックからは生まれています。

昨年お電話でお話させていただいた際には、「新しいツール使えるから、今度静岡の会社までおいでよ~」と誘っていただいたのですが、結局その機会に恵まれないまま、こうしてお別れすることになってしまったのが心残りです。

ですが下村社長、私はもちろん今後もシモムラアレックのツールを紹介し続けますので、これからも上の方から高みの見物していてください。社長がツールを作ることで伝え続けてきた模型を作るというDNAを、私はツールを使うことや紹介して売ることを通して、これからも伝え続けていきます。長い間、本当にお疲れさまでした。

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