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1本の棒を売るということ

IT関連の仕事が人気職業に入るこのご時世に、「ネット通販」が子供たちの人気の職業ランキングにかすりもしないのはどうも解せません。これはまず、この仕事を知ってもらう所から、と考えた模型用品の通販サイト「GPARTS」の中のひとです。

前回はネット通販業務の、まぁまぁ密度の高い仕事状況をご紹介しました。本日はこの仕事をお勧めするポイントをご紹介しましょう。

■ITっぽいサービス業

私自身、最初に仕事したのは旅行代理店でした。
学生の頃、アルバイトで数年やっていた和食料理店でのサービス業の経験から、

『サービス業楽しい!仕事もサービス業がいい!』

と比較的安直に選んだ仕事でしたが、大変なんですよ旅行代理業って。

サービス業の中でも「旅行」という形のない商品を売るという点で、ある意味で究極のサービス業ではないかと思うのですが、とにかく残業も多く(なんで多いのかは割愛します)、どうしても体力仕事になり、結果人の定着率も低い。

更に、あらゆる面でコミュ力(りょく)の高さも必要な上、同時に営業力と神経の太さ、頭の回転の速さなど総合人間力の高さが継続して必要です。

これに対して通販業務は、前回も書きましたがITのお仕事のように見える、少し変わったサービス業(接客業)のお仕事です。

来店された方に直接ご説明することは「説明文」や「商品画像」といった素材だけなので、そういった各要素で購入して頂けるような様々な工夫を凝らすことが必要な接客サービスなわけですが、これらはある程度スキルとして身につければ、旅行業のように総合力が必要な仕事と比べると「誰にでもできる仕事」です。

もちろん、画像を撮ったり商品ページ用に加工したりといったアプリやソフトを使った作業も完璧に身につけるには時間もかかって大変ではありますが、クリエイティブで楽しい作業のひとつ。
ただ、作業量も多いので、今はこういった個人的にスキルが必要な部分は、実はかなりAIに頼れるようになってきているんです。

例えば上の記事のように、商品の説明文は、ある程度の情報を入れればAIが作ってくれるようなサービスもありますし、広告宣伝のノウハウや知識が全く無くても、SNS(インスタやX)投稿用の宣伝文などはAIで作ることができるので意外に簡単になってきているんです。

画像などは、以前は照明など全て自分でセッティングして、良い写真を撮る必要がありましたが、これも全ては無理ですが、近いうちにAIによってそういった苦労もかなり軽減される日がくるでしょう。実際、スマホアプリではもうある程度可能になってきています。

当然、元の写真はAIにお任せすることはできませんが、かなり個人でできることの範囲が広がっています。

誰かに商品を買っていただくのが本来の目的の仕事ですが、そこまでの道筋にはクリエイティブな発想や知識、経験を活かすことが必要です。なので、そんなスキルを活かした仕事をしたい方にも断然おすすめなのです。

■好きな商材で自由に時間を使いたい方に

ひとりで仕事をするということは、自由な時間の使い方ができる仕事だ、とも言えますよね。

G PARTSは会社なのでそうはいきませんが、個人でやっている方は、比較的自由な時間の使い方で日々の生活を楽しむことができているのではないかと思います。

もちろん、「これで食っていくんだ」っていう決意を持っている方にはそうはいきませんが、自分サイズで、好きな商材で、楽しく仕事をしたい!っていう方には、上に書いたようなスキルなどを活用して、自分の好みのジャンルの商材で仕事することもできます。

一応誤解が無いように書いておきますが、これはもちろん、仕事として軌道に乗ってからの話。当然売れる商材もあれば、本当に売ることが難しい商材ももちろんあります。

今の世の中、型番商品をはじめとして「ものを売る」ということは、言うほど簡単じゃありません。

だから、物販の知識や物流、小売り業の知識は最低限必要だと思うので、私としては飲食業や、対面の小売業などを最低5年は経験していれば、通販のお仕事にも柔軟に対応できると思いますし、お店の運営をやっていくにあたっても良いのではないかと思います。

■ただ並べて売るのではない仕事がしたい方に

通販っていうとなぜか「安い」「お得」などというワードが浮かんでくる方も多いと思いますが、これは今では間違った印象です。

これからの通販には「価値のある仕事をしたい方」に担ってほしい、と考えています。

私がGPARTSを創業した理由のひとつに、

「模型用品やツールをきちんと販売したかった」

というものがありまして、例えばプラ棒を単純に1枚の画像と商品名だけ並べておいて、買ってくださるお客様は、その製品がそもそも分かっている方だけだと思うんですね。

その製品のメリットを知らない方は、ただのプラスチックの棒に1,000円も払えるか、という気持ちになりますよね普通。

そこへ、この棒を模型に使うための工夫やアイデア、活用法まで一緒に提案することが「きちんと販売する」ということです。

もっと言えば、その棒を使うことで何が解決するのか、変わるのか、という隠れたお悩み解決策をお客様は求めています。それを提案できることが「きちんと販売する」ということだと思うのです。

こういう仕事を続けることで、新しくプラ棒を上手く使ってくださるユーザーさんの掘り起こしが行えて、更にその先で、より難しい使い方をこなしてくれるユーザーさんが新たに登場してきたりします。そういった連鎖が生まれることは、実は商品が売れるよりも嬉しいことです。

そういえば私の好きな「寅さん」の話にも「売れない鉛筆をどうやって売る?」っていう割と有名な話があります。

この話、今のネット通販にとっても大事な要素が詰まってまして、きちんと価値のあるものを提供できる業界として成長するには頭の片隅に置いておいてほしい話です。

通販業には小売業の知識と経験が必要だ、と書いたのはこういう理由です。

商材写真をただ並べ、コピーしたテキストをペーストして商品UPするだけの仕事では本当に伝えたい大事なことは伝わりません。商品ページひとつひとつに、想像力と発想を詰め込んでお客様にお届けできるのが、ネット通販という仕事です。

そんな熱意があれば、その熱量を商品ページで転換する仕組みは、先に書いたように今はAIに任せることができるようになっていきます。

だから、これからのネット通販にとって大事なのは、もはや画像処理のスキルやWebの知識などよりも、そういった想像力や発想、そして熱量なのかもしれませんね。

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