アリストテレス02_bookguide

「やっぱり知りたい!アリストテレス」おすすめ本紹介


9月14日(土)&15(日)にGACCOHで開催する「やっぱり知りたい!アリストテレス」に向けて、講座のナビゲーターである酒井健太朗さんがおすすめ本を紹介してくださいました!(GACCOH太田)


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第1回「古代ギリシアを知る」


「なんだ旅行のガイドブックか」と思ったあなたは、タイトルをよく見てください。「古代アテネ」の旅行ガイドです。2500年前に展開された哲学を学ぶにあたり、その当時の情景を可能な限り想像できるようになっておくことは非常に重要です。本書を読んだ後には、パウサニアス『ギリシア案内記』(馬場恵二訳, 岩波文庫, 1991-1992)などに歩を進めると、古代ギリシアについてさらに立体的に考えることができるようになると思います。

 碩学によるギリシア科学史の著作。日本語での類書があまり存在しない優れた仕事です。内容面でも網羅的かつ詳細ですので、本書はギリシア科学について学びたい人がまず手に取るべきものとしてお勧めすることができます。

 古代ギリシア哲学を学ぶためには、同時代の数学についても知っておく必要があります。古代ギリシア数学史の本は様々にありますが、本書はプラトンやアリストテレスの哲学を比較参照しながらエウクレイデス(ユークリッド)の『原論』を読み解いており、哲学的関心が先立つ方々も楽しく読めると思います。

  1人の研究者が執筆したギリシア哲学史の本としていまだに現役。複数人による優れたギリシア哲学史の著作として、たとえば、内山勝利・中川純男編著『西洋哲学史 古代・中世編──フィロソフィアの源流と伝統』(ミネルヴァ書房, 1996)などもありますが、それらの著作に進む前に、まずはこの本を読んでほしい。個々の哲学者の思想の紹介を十分に行いつつ、それについての加藤先生の解釈なども多く提示されており、読み応えのある1冊に仕上がっています。
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第2回「アリストテレス入門」

 アリストテレスの哲学を最初に学ぶための本として必要十分な一冊です。アリストテレスに関心を持った人は、まずはここから入門しなければなりません。

 山口先生の本を読んだ後には、この2 冊の中の「アリストテレス」の章を読みましょう。アリストテレス哲学の現在の研究状況をより詳細に学ぶことができます。

 上記②と③を終えて、さらにアリストテレスの哲学を学びたい人は、時代は遡りますがこの2 冊を読んでみてください。高度な内容が含まれるため読むのに骨が折れますが、必ずや読者の学びを進展させてくれます。また、以上で挙げた本を何冊か読み入門が終わった後には、ぜひアリストテレス自身のテクストの翻訳書や、桑子敏雄『エネルゲイア―アリストテレス哲学の創造』(東京大学出版会, 1993)千葉恵『アリストテレスと形而上学の可能性―弁証術と自然哲学の相補的展開』(勁草書房, 2002)坂下浩司『アリストテレスの形而上学―自然学と倫理学の基礎』(岩波書店, 2002)中畑正志『魂の変容――神的基礎概念の歴史的構成』(岩波書店, 2011)渡辺邦夫『アリストテレス哲学における人間理解の研究』(東海大学出版会, 2012)篠澤和久『アリストテレスの時間論』(東北大学出版会, 2017)松浦和也『アリストテレスの時空論』(知泉書館, 2018)などの、日本人の研究者たちの手による魅力的な研究書にチャレンジしてみてください。


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第3回「存在論」


 古来、アリストテレスの『形而上学』は難解な哲学書として知られており、特にその中核諸巻(ZHΘ巻)は解釈の定まりづらい箇所です。岩田圭一先生のこの本は、その難解な『形而上学』中核諸巻の1つひとつのテクストを丹念に解釈し、アリストテレスの存在論についての説得的な主張を行います。決して容易に読みこなせるものではないですが、古代ギリシア哲学研究の見本を示してくれる著作です。また、『形而上学』以外にも、『カテゴリー論』や『自然学』、『魂について』などの存在論に関わるテクストについての論考も含まれています。

 ストテレスの存在論は、その哲学を引き継いだ中世ヨーロッパへ「宿題」を残しました。それは、「普遍」なるものの存在に関わります。「酒井健太朗」という個体は、人間という種に属し、この人間は動物という類に属します。この種や類のような普遍は実際に存在するものなのでしょうか。それとも、これらは何か「観念」のようなもので実在しないのでしょうか。そして仮に存在するものであれば、それはどのような仕方で存在するのでしょうか。この問題についての論争が「普遍論争」と呼ばれるものです。本書は、現代存在論でも変わらず論争の的であるこの問題について、その詳細を教えてくれます。


 本講座では現代の存在論のうちの「新アリストテレス主義」を取り上げることになりますが、現代存在論そのものの中にも興味深い問題が多く含まれています。倉田先生のこの2冊は、現代存在論の様々な問題を概観するのに最適です。また、鈴木生郎・秋葉剛史・谷川卓・倉田剛『ワードマップ現代形而上学』(新曜社, 2014)も併せて参照することで、現代存在論をより広い視野から理解することができると思います。

 アリストテレスの存在論に含まれる「カテゴリー」、「実体」、「種」、「本質」などの諸概念が、現代哲学の議論の中で真剣に考察されていることの1つの典型例が本書です。新アリストテレス主義の陣営に所属する様々な研究者たちの論文集となっています。キット・ファインのものをはじめとし難解な論考も多く含まれていますが、アリストテレス哲学の現代的意義を考察するうえで無視することができない1冊です。

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第4回「徳と倫理」


 アリストテレスの倫理学について学ぶには、手に取りやすいものとしてJ. O. アームソン『アリストテレス倫理学入門』(雨宮健訳, 岩波現代文庫, 2004)もありますが、ぜひ本書にチャレンジしていただきたいです。岩田靖夫先生の平明かつ詳細な記述は、内容の高度さと出版年の古さを忘れさせてくれます。簡便な注釈書としても使用することができますので、自身でアリストテレスの倫理学書を読む状況になったときも必ず役に立つ1冊です。

 様々な徳の中で最も重要視されてきたのは、思慮、正義、勇気、そして節制の「四枢要徳」です。本書は、20世紀で最も卓越したキリスト教哲学の1人であるピーパーによる、四枢要徳についてのまとまった著作です。著者の来歴上トマス・アクィナスについての言及が多くなっているので、(必ずしもそれだけに限られるわけではありませんが)キリスト教の哲学における徳理論の扱いについて学ぶためにも使用できるでしょう。下記③のマッキンタイアのものに比べてそれほど参照されるものではありませんが、徳について学ぶための非常に重要な著作です。

 一昔前までは、徳(倫理)について広く知りたい人はこの本をまず読むことを勧められたものでした。最近は状況が変わり徳倫理学に関する書籍の多くが訳出されていますが、プラトンやアリストテレスのものに限らず、英雄時代やアテナイ社会における諸徳にも焦点を当てる広い視野を持つ本書は、変わらず参照される価値のあるものだと思います。

 現代の徳倫理学についての包括的知識を得たいのであればこの訳書を読みましょう。本書は徳倫理学について、(1)中国の儒教も含めたその歴史的観点、(2)諸々の応用倫理学との関係、の両者を学ぶことができる、「一粒で二度おいしい」有益な著作です。

 上掲④を読み終わった後は、現代の徳倫理学者たちの重要な論文を読んでいきましょう。2000年以前の比較的古い論文が多く収められていることが本書の特色です。ここからスタートし、その後、ロザリンド・ハーストハウス『徳倫理学について』(土橋茂樹訳, 知泉書館, 2014)フィリッパ・フット『人間にとって善とは何か――徳倫理学入門』(高橋久一郎監訳, 筑摩書房, 2014)に進んでいけばいいと思います。


「やっぱり知りたい!アリストテレス」
日時:2019年9月14日(土)&15日(日)13:00〜16:30
会場:京都出町柳 GACCOH(京阪電車「出町柳駅」2番出口より徒歩5分)
お申し込みはこちらから


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