サッカーで心をつなぐワークショップ
3月某日、沖縄県の那覇市で、サッカーを題材にしたワークショップが開かれた。
参加するのは、大阪府と宮城県で日々サッカーに励む中学生たち。
今回、沖縄県に遠征に来るサッカー少年たちに、ふだんから当たり前のように触れている『サッカー』を本質的に見つめなおしてほしい。
その思いを受け、株式会社がちゆんは、『サッカーワークショップ』を作った。
名前も知らないひとたちと、チームになった
そのワークショップは、「FIFAアンセム」という有名なサッカー試合の入場曲から始まった。
入場曲に合わせて、50人の子どもたちが入場してくる。
気分はサッカープレイヤーだろう。
彼らが席に着くと、まずワークショップのコーディネーターたちが自己紹介をする。
自己紹介が終わると、8種類の写真が、それぞれ5ピースないし6ピースに分けられた紙が、子どもたちに配られた。
同じ写真のピースをもつ子どもたちで集まってもらって、全部で8チームに分けようというのだ。
その場にいる50人の子どもたちは、大阪府から来た2つのクラブと宮城県から来た1つのサッカー部に分かれている。
その2つのクラブと1つの部の子どもたちは、互いに面識はあるものの仲がいいというわけではない。
そして、写真のピースはランダムに配られている。
つまり、互いを知らないひとたちで、チームを作ろうというのだ。
そうして集まった8チームの子どもたちは、やはり緊張した面持ちであった。
言葉を交わすと、チームが動き始めた
チーム分けが終わると、プログラムは進んだ。
次は、沖縄についてのクイズである。
『沖縄をどれくらい知ってる?うちなーもの知りクイズ』
そのクイズの中には、チームで1つの答えを出すために話し合う時間が、たっぷりと取られている。
メインのワークショップに向けて、チームプレーをするための時間である。
ちなみに、そのクイズは以下の6問だ。
1問目:シーサーのルーツはどこ?
①中国 ②オリエント ③八重瀬町
2問目:消費量全国1位の食材は?
①豚肉 ②ベーコン ③マグロ
3問目:サンゴ礁の役割は何か?
①食べ物を作る ②塩を貯める ③水温を下げる
4問目:世界遺産はどれくらいある?
①2つ ②9つ ③102つ
5問目:平和の礎の特徴はどれ?
①外国人の名前も刻まれている ②平和を願って白い石で作られている
③すべてひらがなで書かれている
6問目:日本で初ではないものは?
①テーマパーク ②ショッピングセンター ③ファーストフード店
読者のみなさんにも、ぜひ答えを考えていただきたい。
答えは、つぎの通りである。
1問目の答え:②オリエント
2問目の答え:②ベーコン
3問目の答え:①食べ物を作る
4問目の答え:②9つ
5問目の答え:①外国人の名前も刻まれている
6問目の答え:①テーマパーク
このクイズのあとは、サッカー日本代表のメンバーの名前を各チームが順に言っていき、答えに詰まったチームから順に脱落していくというゲームが用意されていた。
そのゲームで勝ち残った3チームの子どもたちは、ヒーローインタビューを受ける。
インタビューを受けるヒーローたちの背景には、本物さながらの断幕が飾られており、がちゆんメンバーが、どれほど子どもたちのことを考えてあるかが伝わってきた。
そして、ヒーローインタビューのあと、子どもたちはアフリカへ遠征に向かうのだ。
そのとき、彼らは『チーム』だった
話が唐突だっただろうか。
では、実際に使われたスライドのイメージ画像を用いて説明しよう。
スライドは空港を離れ、街へと向かう。
子どもたちの意識は、完全に那覇からアフリカに向かったことがこれらのイメージ画像から分かると思う。
ではなぜ、舞台をアフリカへと移したのだろうか。
それはこれから・・・おっと、現地の子どもが話しかけてきたようだ。
どうやら「サッカーのルールを教えて」と言っているらしい。
話しかけられたあなたは今、サッカーボールを持っていて、話しかけてきた子どもとサッカーをして遊びたい。
しかし、相手はサッカーのルールを知らず、言葉も通じない。
「この状況で、あなたはその子どもに、どうやってサッカーのルールを伝えますか?」
司会者が問いかけた。
これが、今回のワークショップのメインである。
サッカーのルールや用語を知らず、簡単な日本語しかわからない(というフリをしている)がちゆんスタッフたちを相手に、子どもたちはチームで頭を振り絞り、なんとか相手にルールを伝えようとするのだ。
2人が両手を合わせて作ったアーチをゴールに見立て、そこにボールが入ると喜ぶそぶりを見せる子がいれば、
ボールに手を触れ、両手でバツ印を作る子もいる。
子供たちは、相手が首を縦に振ると喜び、横に振ると「ほかにどう伝えようか」と、さらに頭をひねった。
そこには、いつの間にかチームで夢中になって、ルールを教える子どもたちの姿があった。
ワークショップを通して、子どもたちに伝えたかったこと
メインのワークショップが終わったあと、司会者はある少年の話をした。
みなさんは、イーサン・キングという人物をご存じだろうか。
彼はアメリカのミシガン州に住んでいた、当時10歳の少年である。
彼は、2009年に父親と一緒にアフリカのモザンビークを訪れ、大人に代わって子どもを育てる子ども達を目にした。
そこで、彼がたまたまもっていたサッカーボールを子どもたちに渡すと、子どもたちはとても喜んだ。
そのとき彼は、サッカーボールの凄さを実感したのである。
その後彼は、子どもたちにサッカーボールをプレゼントする「チャリティーボール」の活動を始めたのだ。
メインのワークショップが終わったあと、イーサン君のその活動が、のちに22カ国の子どもたちに、のべ4000個のサッカーボールが届けられるまでのストーリーが話された。
このストーリーを通して、コーチたちは、子どもたちに伝えたかった。
「同じ言語を共有していなくても、サッカーを通して相手と心を通わせることはできるのだ」と。
はたして、その思いは子どもたちに届いたのだろうか。
その疑問は、最初は名前も知らなかった相手とともに退場していく子どもたちを見れば、明らかだった。
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