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なぜあなたはiPhoneで作品を撮らないのか?

Nikonしかり、各社ミラーレスの動画機能合戦が激化する傍らで、スマホでフツーに映画が撮られる時代。自分も去年の終わりくらいにiPhone 15 Proに機種変し、動画も時々撮影しています。

ところで、ミラーレス用に買ったレンズがきっかけで、ここ1年くらいミニチュア風動画の撮影にハマっています。これについては以前「模型?実写?ミニチュア/ジオラマ風動画の作り方」で書いたのですが、休日、または取材先での空き時間に、愛用しているLUMIX S5IIを持ち出しては、ちょこまかと撮影しSNS等にアップしています。

LUMIX S5II + TTArtisan Tilt 50mm f1.4にて撮影

そんな折、見たい映画があり沿線の二子玉川に出かけた時のこと。上映までの空き時間に散歩していたら、ビル屋上の庭園から街が見下ろせました。カメラ持ってくれば「ミニチュア風」が撮れたなと。

そこで、今度来た時のためにiPhone(iPhone 15 Pro)で動画を撮っておいて、DaVinci Resolveでそれっぽく加工して参考にしようと、数カット、いつもの感じで街並みを撮影しました。

実は少し予想していたのですが、結果として、普段から自分がLUMIX S5IIとTTArtisanのティルトレンズで撮影しているものと、それほど遜色ないものが出来上がってしまいました。(その時にXでポストしたものが以下)

使ったアプリは「Blackmagic Camera」で、自分はiPhoneのアクションボタンに割り当てており、いつでも即座に起動できるようになっています。実は取材先でとっさのBロール(インサートカット)を撮る際に結構な頻度で使っています。

引用元:Blackmagic Design Web Site

記録設定は、ProRes422 LT / Apple Logにしています。編集時にメイン機種であるLUMIXの色にマッチさせるため、Apple Logの存在は非常に助かっています。

非常に多機能なBlackmagic Cameraと、Apple純正LogガンマカーブのApple Log

またDaVinci Resolve Studioに搭載されているティルトシフトブラーはとてもリアルにTiltレンズをシミュレートしてくれるし、仕上げにHalationエフェクトを加えれば、まるでレンズで撮ったかのように仕上がります。

自分にとって「魔法の箱」と言っても過言ではないDaVinci Resolve

もう、iPhoneでいいんじゃないかな?と思いますよね。ミラーレス必要ない、シネマカメラも、もはや特別な場面以外で使う事はない、なんて極論も聞こえてきそうです。

ただ、僕にいたっては、そうはなりません。

スマホでの撮影は個人的に緊急時の域を出ません。細かい事はたくさんあるのですが、例えば日中屋外でシャッタースピードは1/50や1/100などに固定できない場面が多々あります。時に信号機が激しく点滅した動画が撮影されます。追求していくと、スマホにNDつける、リグで武装する、という感じに発展します。

結局、スマホを現場のメインカメラと考えた瞬間にスマホで無くなるのです。「全編iPhoneで撮影しました!」という映画が話題になっていますが、そのBTSを見ると、iPhoneにゴテゴテと機器がてんこ盛りになっています。おそらくPR案件でなければ、カメラマンは普通にシネマカメラを選択したいでしょう。たまにはこういう撮影も楽しいとは思うのですが、以後はこれで映画撮りましょう!とはならないと思うのです。このマンションのように膨らんだスマホの塊を使うくらいなら、素直にミラーレスや一体型のシネマカメラをシンプルに使うでしょう。

iPhone 15 Proで撮影した素材は、予想通り、遜色ないミニチュア風に仕上げることができました。正直、思った以上にリアルに仕上がったと思っています。

結果だけ見れば加工でここまで出来るのは事実

かといって、自分が趣味にしているミニチュア風動画の撮影を、今後もiPhoneで撮影することはほぼないでしょう、まったく楽しくないからです。

自分が普段使っているLUMIX S5IIは、現場での即座な操作に加え、三脚が使えない場所で強力な手ブレ補正がアシスト、そして何より満足のいく撮影体験が得られます。自分の作っているミニチュア風動画は専用の自作LUTを作っているので、撮影時にカメラ内でLUTを当て、ティルトレンズによりファインダーの中でミニチュアっぽくなったイメージをリアルタイムに確認しながら構図を切れます。撮っていて楽しいし、癒されるのです。「街も人もなんてちっぽけなんだ、怒りも、悲しみも、悩みも。」詩的に言えばそんな感じで、デフォルメされた風景を切り取っています。

レンズとカメラにより、目の前の街がリアルタイムでデフォルメされる楽しさ

iPhoneでも確かに撮影出来た、一方で、現地では激しいフリッカーが出ないように、Apple Logで、ギリギリの露出を狙って、できるかぎりシャッタースピードを抑えて撮影したり、ディズプレイに映るのは雰囲気もわからない実世界の画、後加工を前提でなんとなく構図を切ってみたり、撮影体験としては楽しさはほぼありません。「記録した」に近い感覚です。もちろん最終的に目的が叶えばそれでいいのです、ただ自分の目的で言えばちょっと違いました。

そんな折、Xを見ていたら、とても共感するポストに出会いました。

確かに日常であえてiPhoneでLog撮影することはたぶんないです。結局は自分にとってスマホだから。撮影を意識しない撮影が出来るのがスマホのカメラ。目の前の楽しさを邪魔しない。あれほど興味を持っていたスマホでのLog撮影もiPhone 15 Proに機種変後にそれほど使うこともなく「もやもやしていた」ことが言語化されていて、めちゃくちゃ共感してしまいました。

仕事では緊急時にサっと取り出せて、とりあえずLogで撮影できる部分ではかなり便利だし、取材系が多い自分の現場に至ってはiPhone(特にBlackmagic Camera)は欠かせないものになりました。

ただ、仕事にせよプライベートにせよ、やはりスマホはスマホ、ちゃんと撮りたい時は仕事でも趣味でも「カメラ」を使ってしまいます。

自分がこの世界に入ったキッカケは、片田舎の中古カメラ店で8ミリ(フィルム)カメラを手にしたから。もし自分がその時代に生まれてなくて、初めて触ったカメラがiPhoneだったら、また違ったのかもしれないけど。

中学生の時に中古カメラ屋で購入した8ミリカメラ、FUJICA Z2

1度でもiPhoneでガチな作品を撮った事があるクリエイターなら、おそらく共感してくれるのではないか?iPhoneのポートレートモードを駆使して1本作品作ったとて、以後、iPhoneで作品撮らないですよね?休日にiPhoneで動画撮る事あっても、Apple Logで撮らないですよね?こんなに高機能でミラーレスさえ凌ぐ動画性能が搭載されているのに、なぜあなたはiPhoneで作品を撮らないのですか?なぜあなたはiPhoneで作品を撮ったのでしょうか?

なんだかまとまりのない話ですみません。数年後、自分の話に変化が起きたとすれば、その時はきっとカメラが小さい板状のものになっているかもしれません。今回も最後までお付き合いいただき、ありがとうございました!


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