外食業界 コラボ真っ盛り

外食業界、ここ数年で最大のヒット業態である「いきなり!ステーキ」。同社の成功の要因の1つが、コラボ企画であるとテレビで紹介されていた(※1)

同社は、昨年から今年で映画だけでも以下6作品とのタイアップしている。
・映画『劇場版シティハンター』http://ikinaristeak.com/ikinari_CityHunter/
・映画『ボヘミアン・ラプソディ』http://ikinaristeak.com/Bohemian-ikinari/
・映画『パパはわるものチャンピオン』http://ikinaristeak.com/papawaru-ikinari/
・映画『ハン・ソロ』http://ikinaristeak.com/SOLO_CP/
・映画『アベンジャーズ』http://ikinaristeak.com/MarvelAvengersCP/
・映画『マジンガーZ』http://ikinaristeak.com/mazinger_Z/

タイアップでは版元との各種調整が必要になる。担当はさぞかし大変だろうと推測するが、同社のタイアップにはフォーマットがある。特定のタイアップ商品は作らずに「スタンプを〇個集めると豪華景品が当たる」というキャンペーンで、コンテンツと景品を次々に代えているのだ。商品について新規開発や版元との調整が不要で、企画についても1から考えなくて良いので、これだけの数のタイアップを組むことができるのだろう。


「いきなり!ステーキ」は、実にうまいやり方でコラボを回しているが、同様にフォーマットを作って、コラボを回しているのがゼンショーだ。同社グループでは、以下3つのアニメコラボを現在実施している。
・なか卯×EVANGELION https://eva.nakau.co.jp/
・ココス×ラブライブ https://lls.cocos.jp/
・すき家×Fate https://fate-sn-hf2.sukiya.jp/

ゼンショーグループのフォーマットとしては
・描き下ろしイラストの作成
・配布期間を3つに分けたベタ付けプレゼントの実施
・声優の店内放送の実施
・ラッピング店舗
・描き下ろしスタンディの設置
となっている。描き下ろしイラスト、声優の店内放送、ラッピング店舗などの企画ができるのは、外食業界No1ゼンショーならではある。

また、ゼンショーの企画の組み方で特徴的なのは
・コラボするのは、熱量の高いコアファンがいるアニメ
・物販によるクロスセル
である。

コラボと言えば、かつては土日の朝や平日のゴールデンタイムにキー局でテレビ放送されるメジャーな子ども向けアニメと組むことが多かった。それが、近年は深夜アニメやキー局以外でかかるアニメとのコラボが増えている。これらの作品は、メジャーアニメよりも認知度が低かったり、ファミリー層へのアプローチが難しかったりするものの、ファンの熱量は高い。ファン層のイメージは、アイドルファンと近いと思われる。そして、このファンに響く企画を立案できれば、売上を爆発的に伸ばせる可能性がある。

代表的な成功例が、昨夏の「ココス×Free」のキャンペーンだ。このキャンペーンでは、開始日早々にコラボ商品のアクリルコースターが品切れになり、最終的にはキャンペーン終了までに再々販がかかるほどの大ヒットキャンペーンになった。
https://twitter.com/cocos_campaign/status/1019567475476713476

このアクリルコースター、対象メニューを買ったらついてくるベタ付けの景品ではなく、1個800円で販売している売り物である。現在実施中
・すき家×Fate https://netstore.zensho.co.jp/shop/c/cfs2/
・ココス×ラブライブ https://netstore.zensho.co.jp/shop/c/clls/
においても、同様のオリジナルグッズの販売が行われている。コラボグッズの物販という、飲食店の既成概念を壊す取り組みに筆者は度肝を抜かれたが、商品の原価率を下げることなく利益を上げる実に良い施策だと思う。


大ヒットの要因については、下記ブログの分析が大変参考になる
【ファンが喜ぶコラボ分析】ココス×Free!コラボが素晴らしかった理由https://note.mu/s_kaoru/n/n97203cc77706

上記ブログにも記述があるが、熱量が高いファンがいればいるほど、コンテンツの世界観との合致は、コラボ成功において重要な要素となる。ただ、この世界観との合致は、コンテンツの上辺だけの知識では難しいことから、担当者の熱量や、よい代理店と巡り合えるかが重要になってくる。

ちなみに、最近ニュースで見ることが多い幸楽苑は、コラボ専属担当を設置するそうだ。「楽天との提携」「焼肉ライクとの提携」など、同社の施策は目を見張るものがあり、実際業績もかなり伸びているようだが、このコラボについても押さえていて、さすがである。このコラボ企画の立案・ディレクションができる人材は、版元出身者や大手広告代理店のアニメコンテンツ担当者など数少ない。今後この人材の争奪戦になると筆者は予想している。

上記のようなコラボ企画、外食マーケターにとっては他社と企画力を比べる良い機会になることもある。同一コンテンツで、同じ期間に外食チェーンが企画を行うことが時々あるのだ。

最近だと
映画『ドラゴンボール超 ブロリー』
・牛角 https://dragonball.news/news/n181210000.html
・リンガーハット https://dragonball.news/news/n181105000.html

『Free』
・ココス https://www.cocos-jpn.co.jp/pdf/180711free.pdf
・かっぱ寿司 https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000126.000018731.html
などが、複数の外食チェーン店でコラボを実施していた。

ほぼ同じ前提条件の中で、企画内容・販促物のデザイン・景品・SNSの盛り上がりなどを比較すると、非常に多くの気づきがある。筆者もまさに現在、また今後も多くのコラボを手掛ける予定なので、このテーマはしかるべきタイミングで、またブログにまとめていきたい。


※1
TBS『坂上&指原のつぶれない店』2018年7月29日放送分 より
https://www.tbs.co.jp/tsuburenai-mise/onair/onair_contents_20180729_3.html

某外食チェーン店に勤務するマーケターです。記載内容は個人の見解であり、所属企業の見解とは異なります。