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ゲーミングちんぽ華道部よ永遠なれ

昨今の画像生成AIで、特にイラスト分野に関しての雑文。

自分の気持ちの整理のためにやる部分が大きいので、具体的なソースや法的な話はあまり書かないと思います。その辺はもっとちゃんと書いてある記事を参考にしてください。
よー清水先生が簡潔にまとめてくださっている記事をおすすめしておきます。みんな読んで読んで読んで読んで!!!


初めに要点をまとめると、

  • 人のものを勝手に使っておいて、特に面白くもないもん作ってるのが気に入らない

  • その上開き直ってんのが最悪

  • 他者の創作物にタダ乗りすること自体は、完全に否定できることではない

  • 創作物は「誰が作ったか」「いつ作られたか」などの背景も込みの「信用」があるからこそ価値が生まれる

  • 結論:人間は愚かなので、性善説に任せて生成AIを野に放るべきではなかった

大体こんな感じです。




生成AIイラスト、シンプルに面白味がないところが嫌だなと思う。
こう言うと学習元にされたクリエイターさんに失礼な気がするが、そうじゃなくて、あくまで生成されたAIイラストの話。

面白い/面白くないで言うと私の主観になってしまうが、とにかく新規性がないと言い換えれば伝わるだろうか。
AIイラストはその理屈上、どう足掻いても「どっかで見た絵」にしかならない。人力のイラストであっても流行りというものはあるので、皮肉の意を込めてそう言い表せてしまうことはままあるが、AIイラストは原理的にそうなってしまうという点で大きく違う。構図も絵柄も色味もモチーフもシチュエーションも似たり寄ったり。模倣の精度が上がるにつれて、ひとつの理想に近付いていく。こんなにつまらないことはない。
私がAIイラスト……というかAIの生成物に期待していたのは、そんなものではなかった。

時は遡って2022年10月、NovelAIがサービスを開始した。
テキストを入力するとその続きの文章を予測して入力してくれたり、キーワードを元に画像を生成してくれたりするサービス。既出の画像生成AIよりも日本人になじみ深い画風のイラストが生成できるということで、Twitterやpixivのオタクたちがこぞって遊んでいた記憶がある。
当時はAI側も未熟で、一部がヤバい形をした人体が出てきたり、キャラクターが他の物体と魔融合した形で出てきたりということがあった。その産物の一つが表題にもあるゲーミングちんぽ華道部だ。

絵の中における常識を軽々と無視するAI(と、探求心豊かなオタク達)によって、同時期に生まれたミームは他にもある。ゲーミングちんぽ華道部と対抗するように生み出されたプリンセスペニス盆栽、爆乳機関車、ラーメンを素手で食べる美少女、ケーキ化などなど。

これらも大元は誰かの絵を学習して生まれたものだ。もし自分そっくりな絵柄で虹色に光る巨大なペニスの側に美少女が佇んでいるイラストを描かれたら、いい気はしないだろう。それでも今振り返ると、「私が求めていたのはこういうのなんだよな」と、そう思ってしまう。

画像生成AIの精度は日進月歩で向上している。それはX(旧Twitter)やニュースサイトを見ていてもひしひしと感じる。ただイラストの分野に関しては、それに伴って「人間の本来の可能性」に収斂してしまったように思う。
「なんかおかしかった部分」が削ぎ落されて、「自然なもの」が出力されるのがデフォルトになってしまった。今でもゲーミングちんぽ華道部みたいなものは出そうと思えば出せるだろうが、事故的に生じるノイズのようなおもしろさは今のAIイラストにはもう無い。
さらに、「技術的な問題で人間には絶対描けないイラスト」をAIが出力することはできない。どんなに緻密で難しいイラストや独特なイラストでも、描ける人はいる(他力本願な言い方になるが、事実だ)。高クオリティのイラストを使いたいなら、理想に近い絵を描くイラストレーターに発注すればいい。ここは製作にかかるコストが比較的高いCG等と異なる点か。
「描こうと思えば描ける人間はいるんだから、AIを通さず人間にちゃんと頼め」と思うし、そこにかかるコストをケチっちゃいかん。それが知的財産というものに対する姿勢だろう。

話は変わるが、他者の創作物に乗っかったものづくりは、一概に否定できるものではないと私は考えている。「乗っかった」と曖昧な言い方をしているが、要は「著作権法に定められる二次的著作物には該当しない」ということ。
その最たる例は二次創作だろう。私も描くしめっちゃ見るし大好きだ。
他にも、TikTokやYoutubeShortに溢れる、流行り曲を切り取って使った動画。あらゆるコラ画像、漫画やアニメやドラマの一コマ、有名なセリフ、いわゆる「ネットミーム」の大半。公式のゲームやアニメの音声を使った音MADもそうだ。歌ってみた、踊ってみたもそうだ。さらに時代を遡れば、おもしろFLASHも著名な楽曲やアニメのキャラを使用したものが多い。
他者の著作物に大なり小なりフリーライドしたコンテンツは、世に溢れかえっている。

それらが排斥されないのは、あまりに多すぎて取り締まりようがないというのもあるだろうが、そういった派生物もまたエンタメとして価値があるからという側面もあると思う。
ファンによる二次創作作品を見て癒されたり、笑ったり、興奮したりすることもある。音MADやしょーもないミーム動画でゲラゲラ笑うこともある。歌ってみた、踊ってみたに感動することもある。名作FLASHは今見ても名作だと思える。それらのおもしろさ、ひいてはその作り手のパッションは「はい権利侵害です」でこの世から簡単に切り落とせるものではない。
当然ながら「面白ければ何でもいい」わけではないことにも留意する必要がある。こうしたコンテンツで度々権利関係のトラブルが発生していることは、その手の界隈に……というか、インターネットに1年以上生息している人ならご存知だろう。それくらいの頻度で浮上する話題ということだ。
例えば二次創作は、法的に言えばぶっちゃけだ。しかしファンコミュニティの活発化と元コンテンツの拡散に寄与しうるという点で、回り巡って著作者側の得になる部分もあるということで「グレー」ということにしていただいている……というのはもう説明するまでもないと思う。

他の作品に乗っかってものを作るにあたって重要なのは、何より「乗っかっている」自覚を持つことだ。他人の褌で相撲を取っているということを理解することだ。褌の持ち主からお𠮟りを受けたら大人しく全裸になって土俵から降りる。間違っても開き直って逆ギレしてはいけないのだ。そこだけは履き違えちゃいけない。
あくまで謙虚であること。あくまで自分は権利を侵害している側であり、今のところは黙認していただいているだけだと自覚すること。それは常に持つべき態度だ。

話を生成AIに戻す。ガッツリ二次創作を描きながらあらゆるネットミームに脳を浸している身として、「人の作品を勝手に使うな」という所にフォーカスしてキレるつもりはない。もちろんキレるべきポイントではあるんだけど、私個人としてはそこではなく、

「人の作品勝手に使っといてつまんねえモン作るな」
「しかも開き直るな」

と声を大にして言いたい。
ウン千人というクリエイターの血と汗の成果を勝手に食っておいて、視覚面でも内容面でも刺激のないものしか生み出せないならお前何のためにやってんだよという感じ。その上「使わないでください」「やめてください」と言われても屁理屈を捏ね散らかして逆に暴れ出すのでは、寛容に接してやる余地もない。

次に、創作物が持つ価値の話。
あらゆる創作物は「誰が作ったか」「いつ作ったか」そして「何のために作ったか」という背景も込みで価値が形成されるものだ。内容だけで判断するケースも当然あるだろうが、「この人の絵が好き」「このメーカーのゲームだから買う」というような、言わばブランドの有無で判断することは誰にでもあるはずだ。それは創作物に対する「信用」とも言える。

例えば、独特な線と色彩による抽象的なドローイングで有名なパウル・クレーの『忘れっぽい天使』という作品がある。

非常にシンプルな線で描かれた、どこか可愛らしい作品だ。これを見た現代人が「こんな簡単な絵俺にも描けるしィ」と言って同じことをしても、同じような評価は当然されないだろう。お前はパウル・クレーではないし、今は1939年ではない。出来上がったモノの価値を保障する「信用」はそこにない。

まあ美術作品を例にとるとまた別の議論の余地が生じてしまうのだが、他のあらゆるクリエイティブ活動にも通じる話だ。
有名なイラストレーターの絵を、無関係の知らん誰かがそっくりに模写したところで、本来の絵と同等かそれ以上の価値なんて生まれようがない。
自分でイラストを描くこともなければ、世にあるイラストを押しなべて素材として見ている人には理解できないだろうが、「AIが作った〇〇さん風のイラスト100枚」よりも「〇〇さん本人の新規イラスト1枚」の方がずっと価値が高い。作者自身の積み重ねの末に、作者自身の名前で発信するものだからこそ信用が生まれ、価値が生まれる

しかし「AIが作った〇〇さん風のイラスト100枚」に本質的な価値は存在しないとはいえ、誤認が生じる可能性はどうしてもある。模造品の濫造によって、本家本元が持つブランドまで低下しかねないのが大問題だ。AIで出力したことを伏せて「私が描きました」なんて偽造することもできるし、なりすましも簡単にできる。〇〇さん本人が望まない内容のイラストを出力させることも可能だ。冷静に考えて、これが著作者人格権の侵害にならないなら何なんだ。
「どっちも権利侵害してるのは同じ」とされがちな生成AIと二次創作で、前者は本家にとって百害あって一利なしという点は大きな違いの一つだ。

生成AIは、膨大な学習データの中の一つ一つが持っている「作者」「製作時期」「製作理由」といった背景の一切を置き去りにして、表層だけを切り貼りしてそれらしく取り繕って見せる。作者にとってこんな暴力的なことはないし、その暴力は時として人を死に追いやる。それに近しい例を私たちはもう知っているはずだ。



生成AIが台頭してきた頃は、自分も無邪気に楽しんでいた。最近になって色々アカン所が明るみに出てるだけで、最初っから誰かの権利侵害ではあった。序盤に述べたゲーミングちんぽ華道部だってそうだ。
ただ、それらの問題を凌駕する価値がひょっとしたら生まれるんじゃないかと期待する気持ちもあった。
好きなYouTuberが画像生成AIや文章生成AIを活用している動画で、心底笑わせてもらった。AIに漫画を描かせる試みには正直ワクワクした。苦手な背景イラストの練習ができるかもしれないと思った。自分の頭の中にあるアイデアを、効率よくアウトプットする手段として有効なんじゃないかと思った。

弊学が出した生成AIに対する声明も、きっとそういう前向きな展望があってのものだったのだろう。

ただその直後にAI絵画コンテストとかやったのは流石にちょっと先走りすぎちゃう?と思ったけど。ちなみにこれ第2回やりますって言われたら在校生としてムチャクチャ抗議します。

とにかく、法律的にはアウトである二次創作コミュニティなんかと同じように、「泳がせておくだけの価値があるもの」という社会的合意が形成できれば、もしかしたら共存もできたんじゃないかと今は思う。趣味にせよビジネスにせよ、「善く使う」人が今よりもっと多くあってくれたらな……と。
今は一部の層による暴走が著しい上に自浄作用もないせいで「技術自体はいいとして(※後述)黙認し続けるには度を越している」と言わざるを得ない。ナイフが悪いんじゃなくてナイフで人を刺す奴が悪いんだと擁護されても、そのナイフで他人をやたらめったら傷つける奴が一定数いる上に、他のナイフユーザーもそいつらを止めようとしないから、もうナイフ取り上げた方が早いじゃんって話になるわけで。
そして今は「技術自体はいいとして」とも言い難くなってきた。いや、最初からアウトはアウトなのだけど、そのアウト具合もそろそろ見過ごせないレベルなことが暴かれまくってしまっているので。

CSAMはダメだよ。こればっかりはいかなる理屈を抜きにしてもNOと言わなきゃ人として嘘だ。
学習データ全体に対しての割合が云々とか言って反論する向きもあるけど、割合の問題じゃないことくらい分かれ。

自浄作用がないというのは本当に悪いことで、生成AI界隈に限った話ではない。悪いものを悪いと言えない、認められない。認めたくない。そうやって緩やかに腐って堕落していくコミュニティはたくさんある。日本全体がそうなってほしくはない。

繰り返しになるが、私個人としては生成AIを100%恨んではいない。生成AIが作り出したおもしろコンテンツに楽しませてもらったこと、夢を見させてもらったことは確かにある。過去に遡及してそれらを糾弾する気にもなれない。

ただ、時期と初動と世界人類の頭が悪かった。
それだけの話だと思う。

今は人類が愚かすぎるのと、現実世界でもSNSでも爆発炎上させたモン勝ちみたいな最悪治安と生成AIのスピード感が(悪い意味で)相性良すぎるので、法規制した方が早いというのが今の私の結論です。無法地帯からイノベーションは生まれません。

そんなわけで、どのツラ下げてか分かりませんが「AIと著作権に関する考え方について(素案)」に関する意見募集の実施についてという題でパブコメが募集されています。

いま日本の文化庁様がどういう腹積もりでいるのか知らんけど、この生成AIの現状を野放しにしていたら、クリエイティブ市場に対する国内外からの信用がガタ落ちしてクールジャパンどころじゃなくなるのは明白だろう。
マジの本気で疑問なんだが、数々の有名IPを生み出して世界市場で戦ってきたはずの日本が、政府主体でそれらを守りに行こうとしない理由が本当に分からない。ほんとに何で?本気で生成AIが日本文化の利になると思ってるのか?ほんとの本気で……?さすがに嘘だって言ってよ!!!!!!!!!
とにかく、今はくだらん体面も利権も捨てて一旦既存クリエイターの味方をした方がいい。マジで。結論ありきで屁理屈こねてる場合じゃない。
そんな気持ちで私も意見を送ろうと思います。

パブコメの締切は2024年2月12日23時59分まで。
Xで後方先駆者ヅラして冷笑している人たちは置いといて、今の生成AIに対する不安や疑問点をジャンジャン送りましょう。




この文章を書き始めたのが2024年1月初旬なんですが、多忙で書き進められずにいる間に世間では色々なことが起こりました。クリエイターをとことん軽視する流れがここ1、2年で来てるのか、元々あったのがより露骨になったのか分かりませんが、それによる悲劇を何度も目にしました。

つらい。

私もクリエイティブ業界を目指す者として全く他人事じゃないです。
生成AIについては「和解したかったな……」という気持ちと、「いや話の通じないキモユーザー多すぎて無理~~~~~」の気持ちが両方あって複雑。もし生成AIをどうしても生かし続けたいと言うなら、一旦ぜ~~~~~~~~~~~~んぶの学習データをまっさらにして、文章写真映像イラストその他もろもろあらゆるジャンルで著作者の許諾を得られたものorパブリックドメインだけ取り込むみたいな感じにできないんですかね。知らんけど。技術的なことも知らんし、現状を経てそれに協力する企業または個人がどれだけいるのかも知らんけど。

改めて、とりとめのない文章をここまで読んでくださりありがとうございました。
人類がもっと賢くなって、あらゆるタイプのAIと共存して繁栄する未来が来ることを心から望みます。


キヂャ・ピポピ

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