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中企庁作成の投資契約の雛型について

先日、中小企業庁から、中小企業が種類株式(A種優先株式)で投資を受ける際の投資契約の雛型が公開された。
https://www.chusho.meti.go.jp/kinyu/shikinguri/equityfinance/index.html

内容如何にかかわらず、雛型作成&公開というのは力が入っているなと思った。

中小企業を対象とした投資契約は、イグジット前提のスタートアップ投資のそれとは異なり、投資対象として手堅く売上を立てる事業を念頭に置いているようなので、内容的に異なるのは当然だが、個人的興味から、スタートアップ投資における投資契約との異同を整理してみた。思うがままに。

■契約条項について
・退任後の競業避止義務がない
スタートアップの場合と異なり、連続起業があまり想定されないからだろう。

・投資家に株式の譲渡制限(原則として3年間)が付いている
スタートアップ投資の場合、イグジットありきなので、投資家側は自由に譲渡できる形になっているのが一般的。

・買取請求権の買取価額が1.5倍になっている
スタートアップと異なり、分配可能額が一定程度あり、会社による買取りの実現可能性が高いからか。あと、そこまでのアップサイドが期待されていないから1.5倍に固定されているのか。

・みなし清算の定めやドラッグアロング条項がない
M&Aというイグジットがそこまで想定されていないからだろう。

・上場努力義務の規定がない
文字通り

・投資家の新株引受権がない
イグジットを見据えた持株比率の維持の要請が低いからだろう。

・配当義務の規定がある
スタートアップ投資の契約にはない規定。配当がリターンとして期待されているからだろう。

・IPOが契約終了、効力停止のトリガーとなっていない
シンプルにIPOの可能性の問題だろう。

・表明保証等において知的財産権がケアされていない
SaaS事業のように知財が重要ではないと考えられているからか。ちなみに、知的財産権、著作権、特許権というワード自体が投資契約に使用されていないようだ。

■種類株式の内容について
・議決権がない
スタートアップ投資の場合には基本的に議決権ありき。中小企業の場合、投資家による議決権行使を通じた経営参画があまり想定されないからか(デットのようなもの?)。

・金銭と引換えにする取得請求権が一定期間後自由に行使可能
スタートアップ投資の場合、事業の全部又は実質的に全部の譲渡がなされることが条件となることが多い(フリーハンドな設計もあるが)。

・普通株式と引換えにする取得請求権や希釈化防止条項がない
ダウンラウンドを含めた資金調達がイグジットまでに複数回行われることがあまり想定されてないからだろう。

・金銭と引換えにする取得条項(取得価額1.5倍)が入っている
スタートアップの場合、(金銭と引換えにする取得条項ではなく)普通株式と引換えにする取得条項が設けられその取得条項もIPO(正確に言うとIPO申請する旨の取締役会決議)がトリガーとなっている。デットに感覚が近く、会社にとってリターンを支払えば、関係性を終了させることができるということなんだろう。

・残余財産分配請求権が1.5倍、非参加型になっている
スタートアップ投資の場合は1倍参加型が太宗。ラウンドを重ねることがあまり想定されていないから、1.5倍となっているのだろうか。非参加型になっているのは、そこまでキャピタルゲインを求めていないからか。普通株式と引換えにする取得請求権もないし。

思うがままに書いてみた。気が向いたら、適宜加筆を行うかもしれませんが、しないかも。


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