マガジンのカバー画像

ロッキン藤原の書店堂々

26
学芸出版社営業部の名物社員・藤原が、書店での何気ないやり取りを手がかりに、自らのロック遍歴にまつわる雑感をつづります。【毎週火曜・木曜更新】
運営しているクリエイター

#音楽

13.シャッターに負けず トム・ウエイツ

13.シャッターに負けず トム・ウエイツ

学芸出版社営業部の名物社員・藤原が、書店での何気ないやり取りを手がかりに、自らのロック遍歴にまつわる雑感をつづります。

シャッターを降ろした店舗が並ぶのは商店街だけでなくテナントビルでも見かける光景だ。この書店もシャッターを降ろした店舗が目立つ閑散としたビルの中にある。

「これじゃあ、いくら頑張っても成果は出しにくいね」
「そうなんです。それに建築書の棚は縮小されてまして、益々売りにくいんです

もっとみる
12.著者ご来店 スティーブ・ミラーバンド

12.著者ご来店 スティーブ・ミラーバンド

学芸出版社営業部の名物社員・藤原が、書店での何気ないやり取りを手がかりに、自らのロック遍歴にまつわる雑感をつづります。

店に行くと売場の担当者が誰かと喋っていた。話の内容から、どうやら著者らしく、大きな声で「よろしくお願いします!」というのが聞こえた。
著者が店を出て行くのを見届けて声を掛けた。

「著者ってこの店によく来ます?」
「結構来ます。」
「で、どうなん?ありがたい?困る?」
「何だか

もっとみる
11.晴れやかな顔 キャプテン・ビヨンド

11.晴れやかな顔 キャプテン・ビヨンド

学芸出版社営業部の名物社員・藤原が、書店での何気ないやり取りを手がかりに、自らのロック遍歴にまつわる雑感をつづります。

レジ業務をしていたAさんに声を掛けるとカウンターから出てきてくれた。
「私、9月いっぱいで会社を辞めるんです。」
「ほんまですか?もったいないじゃないですか。結構店のキャリアを積んでいるでしょう。」
「はい15年になります。店が出来たのが16年前。」
彼女はベテランで、店の中核

もっとみる
10.割烹着 キャンド・ヒート

10.割烹着 キャンド・ヒート

学芸出版社営業部の名物社員・藤原が、書店での何気ないやり取りを手がかりに、自らのロック遍歴にまつわる雑感をつづります。

いつものように「社長いてはりますか?」と店番の女性に聞くと「今、仕入れに行ってはりますわ。もうすぐ帰って来るとは思いますけど。」と言われた。仕入れとは、晩ごはんの買い物のことやなと思った。

この店は女社長がきりもりしている10坪ほどの書店だ。
「ほな、しばらく棚を見さしてもら

もっとみる
5.ゆるーいボケ ドクターフック

5.ゆるーいボケ ドクターフック

学芸出版社営業部の名物社員・藤原が、書店での何気ないやり取りを手がかりに、自らのロック遍歴にまつわる雑感をつづります。

新刊配本されてくる本を棚に差しているだけという状態の店。
とりあえず担当者に挨拶をした。

「初めてお目にかかります。私、この店に伺ったのは初めてで・・・。」
と言うと
「あっそう、僕も会うのは初めてですねぇ」といわゆる関西系のゆるーいボケ。

愛想はいいが仕事は出来ないと思わ

もっとみる
4.とりあえず マイケル・フランクス

4.とりあえず マイケル・フランクス

学芸出版社営業部の名物社員・藤原が、書店での何気ないやり取りを手がかりに、自らのロック遍歴にまつわる雑感をつづります。

当社が得意とするまちづくり、ソーシャルデザインの本の注文が書店さんからたくさんあったので、店に行って見ることにした。

完全なロードサイド店。3市の境界が接するところにある店で電車を乗り継ぎ、駅から歩いて約15分。あいにく店長は不在。
当社の商品は〈旅・冒険〉というプレートの付

もっとみる
3.ダメなもんはダメなのか レッド・ホット・チリ・ペッパーズ

3.ダメなもんはダメなのか レッド・ホット・チリ・ペッパーズ

学芸出版社営業部の名物社員・藤原が、書店での何気ないやり取りを手がかりに、自らのロック遍歴にまつわる雑感をつづります。

少し棚に余裕があり、当社の商品がこの店でどれほど通用するものか知りたくて棚に入れてもらえるかかどうか以前から店長と相談していた。

「何とか当社の商品を展示してもられないでしょうか。見るところ建築書の棚は随分と余裕があって10点~20点くらいは入りそうですよ。販売の結果が出ない

もっとみる
2. 火事だ、火事だ マーズヴォルタ

2. 火事だ、火事だ マーズヴォルタ

学芸出版社営業部の名物社員・藤原が、書店での何気ないやり取りを手がかりに、自らのロック遍歴にまつわる雑感をつづります。

ある店の担当者に会いに行ったが、「帰りました」と。時間は午後2時半ぐらい。そんなことあんの? 最近の書店さんはイレギュラーな勤務形態を取っている人が多くなった。

で、訪問した時、近くにあるホテルで火災。すでに鎮火していたが消防車が20台ほど集結していた。
そのことを近くにいた

もっとみる
1.お久しぶりです レーナード・スキナード

1.お久しぶりです レーナード・スキナード

学芸出版社営業部の名物社員・藤原が、書店での何気ないやり取りを手がかりに、自らのロック遍歴にまつわる雑感をつづります。

20年ぶりにその店を訪問した。当時店で商品をさばいていたお姉さんはおばさんになっていた。店に椅子を出してもらい、麦茶を飲みながら、界隈の変化のことやら、本の売り方が変わったことや、取次店のことやらを話した。
店の香りは20年前のままだし、熱心に1冊、1冊丁寧にお客さんに案内する

もっとみる
まえがき ―ロッキン藤原の書店堂々―

まえがき ―ロッキン藤原の書店堂々―

昭和53年(1978年)に僕はある書店に就職した。書店には9年務め、昭和62年(1987年)にこの会社に転職した。書店に勤めている間に結婚し、子供が生まれ、阪神タイガースが日本一になった。昭和から平成へと変わろうとしていた時代の書店は、ある転換期を迎えつつあった。大規模書店、郊外型書店、異業種参入など、いわゆる「町の本屋さん」が身震いするような出来事が次々に起こっていた。

平成9年(1997年)

もっとみる