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25.陽炎 サンタナ

学芸出版社営業部の名物社員・藤原が、書店での何気ないやり取りを手がかりに、自らのロック遍歴にまつわる雑感をつづります。

電車を降り、駅前のロータリーを横切り、県道にでる。その道を登り切ると目的の書店は見えてくる。
夏ならば陽炎が立ち、スーツのしたで汗が流れていくのを確実に感じられる道のりだ。
なぜ暑いのにスーツを着ているいるか、というと、僕にとってスーツは、力士のちょんまけとふんどしと同じで、なくては恰好が付かないものだからだ。

その書店は熱心に当社の商品を販売していただいているが、店頭に並べれば本が売れるというほど書店は甘くない。ご迷惑をお掛けしていると言っても過言ではない。
ではなぜその書店へ向かうのか。それは店長の「書店の物語」を聞くためだ。店に入る前に僕はタオルで汗を拭きとった。

砂漠の商隊がオアシスを目指して旅をしているジャケットが幻想的な「キャラバンサライ」は朦朧とした頭を冷やしてくれる。
イントロから歌までの長い時間が砂漠でオアシスを見つけるまでの時間を表現しているかのようだ。歌が聴こえ始めると物語の始まりだ。

目的もなく砂漠を歩くのは嫌だが、その先にオアシスがあれば足は自然と前に運ばれる。僕がその書店に向かうのは、そこに安堵があるからなのだろう。

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