山崎亮さん、『コミュニティデザイン』を語る【前編】出版のきっかけ~忽那さんのこと

コミュニティデザイナーとして、新たな領域を開拓中の山崎亮さんが、初めての単著『コミュニティデザイン』を著されました。
大学卒業後、ランドスケープデザイナーとして公共空間のデザインに携わっていた時期から、独立を経て現在に至るまで、その仕事の全貌を書き下ろされています。
[聞き手:井口夏実(編集部)]
※初出:2011年4月13日 学芸出版社ホームページにて公開
※編集部注:内容はすべてインタビュー当時の状況です

山崎亮(やまざき りょう)

1973年愛知県生まれ。studio-L代表、京都造形芸術大学教授。
地域の課題を地域に住む人たちが解決するためのコミュニティデザインに携わる。まちづくりのワークショップ、住民参加型の総合計画づくり、建築やランドスケープのデザインなどに関するプロジェクトが多い。
「海士町総合振興計画」「マルヤガーデンズ」「震災+design」でグッドデザイン賞、「こどものシアワセをカタチにする」でキッズデザイン賞、「ホヅプロ工房」でSDレビュー、「いえしまプロジェクト」でオーライ!ニッポン大賞審査委員会長賞を受賞。
共著書に『都市環境デザインの仕事』『マゾヒスティック・ランドスケープ』『震災のためにデザインは何が可能か』『テキスト ランドスケープデザインの歴史』など。
(※編集部注:肩書き等はインタビュー当時)

ーー本を書こうと思われたきっかけを聞かせてください。

山崎 コミュニティデザインという仕事が、なかなか理解してもらえないというのが一番大きなきっかけです。
本でも最初に書いたのですが、上の世代の人たちに「コミュニティデザインをやろうと思ってる」と言うと、大抵は1960-70年代の住棟計画のことを思い浮かべられます。
もともとコミュニティという言葉は、地縁型のコミュニティを意味することが多かったので、地域の自治会単位をどうするかというイメージが出てきてしまい、「それは(僕らも)やってみたけど、なかなかうまく行かないものなんだよ」という話で終わってしまう。

一方で、若い人たちに「デザイン」というと、装飾的なイメージを持たれて、モノをつくらないデザインが一体何を意味するのかわからない、という状態になるのです。
しかし興味はあるらしい。ハードからソフトへ、デザインからマネジメントへなど、いろいろな掛け声があがるなかで、モノをデザインしなくても状況は変えられるんじゃないか、と思っている若い人たちが多いような気がします。
大学で教えていると、年々その手の思考を持った学生が増えているように感じます。

住民参加の現場でも、住民から「もうハコモノの計画は必要ないから、まちが元気になる方策を考えよう」という意見が多くなってきた。
これまで日本がやってきた地域活性化の結果が見えちゃったのが現代ですから、住民としても「モノをつくったらシアワセになる」という青写真が描けなくなっているのでしょう。

その意味で、コミュニティデザインに対する期待は膨らんでいる。にも関わらず、コミュニティデザインって何かが一言で説明できない(笑)。
説明するのが難しいから、いったん本にして、世に問うことにするのが良いかな、と思ったのがきっかけですね。

ーーハードからソフトのデザインにシフトする過程で、多くのプロジェクトをご一緒されたデザイナー忽那裕樹さんはどんな存在ですか?

山崎 忽那さんからはいろんなことを学びました。
あの人は新顔を試すんですよ、初めて会ったときにもいろいろ質問を投げかけてくる。答えても、それを一旦否定してみたりして、「こいつどんな反応するのかな」と試されるんです(笑)。
僕も若かった(26歳)から、むきになって反論するんですよ。「いや、これからはこういうことが大事だと思うんですっ」と。本人は意識していないだろうけれど、そうやって試される時期が3ヶ月くらいありました。
それにどうやら合格したかな?と思っていた頃に、忽那さんから『都市環境デザインの仕事』の執筆者に推薦するぞと、声をかけられたんですよ。

「カタチとナカミとシクミ/パブリックへの静かな要求について」を執筆
(鳴海邦碩ほか編(2001)『都市環境デザインの仕事』学芸出版社)

その後も「おまえは何がつくりたいんや(忽)」「いや、つくらないんです(山)」「それじゃ仕事にならん!(忽)」みたいな問答を通しながらも、僕が何か大事なことをしようとしていると腑に落ちると、今度は圧倒的な応援者になってくれたんです。
独立する時も、「独立したら一緒にしたい仕事がたくさんあるんやからはよ独立せい!」と言ってくれて、実際独立すると「これも、あれも、一緒にするぞ」と。一時期は15のプロジェクトを一緒に進めていました。
その頃は朝10時にE-DESIGNに行って、1プロジェクトに1時間ずつと決めて次々打合せをして行くようなことをしていました。
15のプロジェクトですから一通りの打合せに15時間は必要なのに、8時間後には1つ目のプロジェクトの進捗状況が報告されたり、相談がきたりするんで終わらないんですよ(笑)。

新顔を試す先輩。E-DESIGN 忽那裕樹氏

ソフトとハードのデザインを同時に進めた「千里リハビリテーション病院」のプロジェクトもその時に関わったものです。
そこで、忽那さん達がハードのデザインをしっかりやってくれたから、僕はソフトのデザインに専念することができた。そこで僕はソフトを守備範囲として特化させてしまおうと思えたのかもしれません。
実際は相互に入れ込みましたけどね。
忽那さんもソフトの大切さが分かるのでいろいろ提案するし、僕もハードのデザインをやっていたのでスケッチを描いて見せる。そのやりとりはだけどとても気持ちの良い時間でした。

ーー忽那さんはとてもポジティブな方ですよね。

山崎 だから「忽那さんみたいな喋り方」も学びましたね。「イエス・アンド(Yes, and)」というのですが、「そうそう、それで…」と、どんどん上乗せしていく喋り方です。
僕もそれまでは「No, but」と、つい否定してしまうことがあったと思うのです。肯定するのに「でもね、」という入り方をしてしまう。
それは知らず知らずのうちに会話のトーンを落としたり前向きな話にならなかったりするんです。自分に自信がないと、「でも…」と言ってみたりしたくなるんでしょうけれど、忽那さんはかなり自信を持っている。
「自分はこうしなきゃいけない」という揺るがない判断基準を持っているから、相談ごとを受けたときにも肯定した上で意見を言ってくれるんです。

後編に続く)

コミュニティデザイン
人がつながるしくみをつくる

山崎 亮 著

当初は公園など公共空間のデザインに関わっていた著者が、新しくモノを作るよりも「使われ方」を考えることの大切さに気づき、使う人達のつながり=コミュニティのデザインを切り拓き始めた。公園で、デパートで、離島地域で、全国を駆け巡り社会の課題を解決する、しくみづくりの達人が、その仕事の全貌を初めて書き下ろす。

詳細|https://goo.gl/oaMnjk
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