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繁華街と書店

「この20年で変らなかったのは、本への思い入れを読者に伝えようとし続けた書店員たちの存在である。彼ら、彼女たちがこれからも書店を支え続けるのである。・・・」 学芸出版社営業部の名物社員・藤原がお送りする、本と書店をめぐる四方山話。

 老舗と言われる店の多くが廃業した。その理由は本が売れなくなっただけではないだろう。跡継ぎがいないとか、店を構えていた商店街がシャッター通りになってしまったとか、そんな理由もあるはずだ。都市部を除けば、書店は郊外のロードサイドかショッピングセンターにあるものになった。地方都市では繁華街というものが少なくなってしまった。街からイカガワシサが消えたのだ。
 書店というのもある意味いかがわしい商売ではある。ちょっと暗めの棚に並んだ文学、哲学・思想・経済・歴史・・・・、そしてエロ本。ちょっとムンとした匂いすらする。そうだこれが書店だ。文化を売っているのだからイカガワシサがあるのは当然だ。店主もなんとなく文化人面したいかがわしさがあるものだ。
 街からイカガワシサが消えた現在、書店の存在は中途半端である。店の奥には何かがある、とワクワクしながら店を探索するような書店はショッピングセンターやロードサイドの店には不向きである。老舗と言われた書店は、繁華街のイカガワシサの消滅と運命を共にしたのである。
 書店と街は切っても切れない関係性の中にある。東京なら渋谷、新宿、池袋、神田、大阪なら北と南で書店の表情は大きく違っていたし、その違いはあからさまだった。書店に街の匂いがし、街の風が吹いていた。

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