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検索ランキング

「この20年で変らなかったのは、本への思い入れを読者に伝えようとし続けた書店員たちの存在である。彼ら、彼女たちがこれからも書店を支え続けるのである。・・・」 学芸出版社営業部の名物社員・藤原がお送りする、本と書店をめぐる四方山話。

世の中の興味の度合いを計るのにインターネットの「検索キーワードランキング」がある。一体世間では今何に興味が集っているのかを知る物差しである。

しかしこのランキングはあっという間に変わってしまう。
世の中の興味がめまぐるしく動き回っていることとインターネットを利用する人達の興味のあり方が、基本的には噂話的なものに集中しているからだろう。

これはインターネット社会に関わらず、日本人の興味の在り方を示している。
新聞やテレビニュースで取り上げられた事柄は、上辺を撫ぜた状態で次から次へと消費されていく。

書店で見かける「話題の1冊」って一体なんだろう?
「話題の」という言葉を使った瞬間にもう話題ではないのに。

局所的な話題より、時代が持つアティテュードに注目したい。
第二次、第三次産業から第一次産業へシフトしているのが時代のアティテュードだ。
つまり自然。自然じゃ飯を食えなくなった社会をもう一度自然で飯が食える社会への転換が大きな流れだ。
自然で飯を食うには小さなビジネスモデルの集合体が必要だし、とにかく生活者の大きな意識の変革が必要だ。
なんでもかんでもジャブジャブ使うような生活からの脱却だ。

このように考えると今どんな本を読者が探しているかが分かってくる。
農業、林業、漁業、コンパクトシティ、再生可能エネルギー、持続可能社会、エコロジーとかそんなストレートなキーワードで括られた本ではなく、それらの言葉を包括する、時代の空気を感じられる本、またはそれらと関連する書籍群だ。
毎日本に囲まれた環境で仕事をする書店員は、そんな本の棚を作り、読者に本を紹介することが社会的役割だと僕は考えている。

ところが「検索キーワードランキング」みたいな棚を作る書店が多すぎる。
出版社だって「売行良好書」という万人向きのキーワードで括った本を書店に勧める。
これらによって出来上がる「これは話題だ、これは読まなきゃ」と発している一方通行的書棚が出来上がる。
そして最悪なのが「話題の本」「売行良好」の本が何カ月も放置されていることだ。

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