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16.昭和のおばちゃん フランク・ザッパ

学芸出版社営業部の名物社員・藤原が、書店での何気ないやり取りを手がかりに、自らのロック遍歴にまつわる雑感をつづります。

当社の本を管理してくれているのはこの店で30年近く働いているベテランのおばちゃんです。棚整理をしている女性は若いし、あのおばちゃんではないなと思いながら近づいて、「こんちわ」と声を掛けて振り向いたのは、やはりおばちゃんだった。

「横から見たら20代の女性やし、もしかしたら違うかなと思たんやけど。」と言うと、「うれしい。そんなん言われたの初めてやわ」と喜んでいた。

僕が出版営業を始めた頃にこの店に入っており、店の昔話によく花が咲いた。30年前は隆盛を極めていたこの店は、このところ売り上げが低迷していたこともあり売り場を大幅に縮小した。そして彼女は退職した。またひとり昭和の書店員が売場から消えた。

FREAK OUT/FRANK ZAPPA THE MOTHERS OF INVENTION(1966)

フランクザッパは1966年の「フリークアウト」でデビュー。それ以来すべての音楽ジャンル(民族音楽からクラシックまで)をロックというシェーカーの中に入れて振り回し、時代で味付けをした音楽を作り、1993年に他界した。

すべての事柄は時と共に進行し、時代を形成する。時代はそこに関わった人によって作られる。そこに関わった人の個性が強烈であればあるほど時代は生き生きと輝く。ロックは時代を音楽に塗り込み、作り変えながら今もまた進み続けている。書店は、時代の記憶を失った時から滅びはじめる。

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