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07 長楽館

京都の左官建築家・森田一弥さんが、トウキョウの建築家・塚本由晴さんを案内する『京都土壁案内』(学芸出版社)。
歴史や様式だけじゃない、多様な表情をみせる土壁の魅力が満載です!
2日にわたる、京都での取材の模様をレポートします。

訪れる人

塚本由晴さん
建築家。アトリエ・ワン主宰
東京工業大学大学院准教授(当時)

案内する人

森田一弥さん
建築家+左官職人
森田一弥建築設計事務所主宰

前回のようす


長楽館は、祇園・円山公園の一角にある明治時代の洋館で、煙草王と称された村井吉兵衛さんの別荘として建てられたそうです。設計はガーディナーというアメリカ人とのこと。
今はレストランカフェになっていて、誰でも入ることができます。
ここで優雅にアフタヌーンティーをいただくと、100年前のモダンな社交界の様子が蘇ってきそうです。
村井さんは、ハイカラでダンディな人だったんだろうな。

貴婦人の間、喫煙の間、美術の間など、部屋ごとに違った豪奢な内装が施されています。
シャンデリアや家具など、当時のままに残るものも数多くあります。
村井家の家紋である柏のモチーフが随所にみられます。どれもこれも、本当に繊細で美しいデザインです。
ゴージャスな空間に圧倒されて土壁のことを忘れそうになっていましたが、ここの見所は、天井に施された漆喰のレリーフです。ため息の出る美しさ…。まさに左官の芸術品です。

玄関脇の貴婦人の間。優雅です。
天井には部屋ごとに異なる漆喰のレリーフがみられます。

階段わきにあった、ピーコックをモチーフにした装飾

取材と撮影を終えたところで、「ここでケーキ喰いたい!」と塚本さん。
時間押してますけど…。でも甘い誘惑には勝てません。
ステンドグラスの綺麗なサンルームでほっこりお茶タイム。

緑が心地よいサンルーム。
今は喫茶室となっていて、ここでお茶をいただけます。

そういえば、ケーキのデコレーションは漆喰の装飾に通じる部分がありそうです。
スポンジに生クリームを塗るのと、壁に漆喰を塗るのと、ともに緊張感ただよう丁寧なお仕事です。
職人さんの手技が、甘美で魅惑的なものを生み出すんですね。
短かったけれど、優雅な時間が過ごせました。

とっても濃密な一日、お疲れ様でした!
(夜はまだ続く…)

(第8回に続く)

京都土壁案内

塚本由晴・森田一弥 著

寺社や茶室はもとより、お茶屋や洋館、蔵や土塀まで、時を経て町に滲み出た土壁の魅力を紐解き、巡る、今日の京都の建築・街歩きガイド。京都の若手建築家で左官職人でもある森田一弥の案内は初心者にも優しく、塚本由晴(アトリエ・ワン)の撮り下ろし写真は町の日常に潜む土壁の迫力を見事に切り取った。素人も愛好家も必見。

詳細|https://goo.gl/eK3Z3S
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