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電子の本

「この20年で変らなかったのは、本への思い入れを読者に伝えようとし続けた書店員たちの存在である。彼ら、彼女たちがこれからも書店を支え続けるのである。・・・」 学芸出版社営業部の名物社員・藤原がお送りする、本と書店をめぐる四方山話。

電子書籍・・・。電子って何? ディスプレイで本を読むのか? となんとなく「やだな」と思っている内にいつの間にか巷には電子書籍が溢れた。数万冊のストックからお好きな本をどうぞ、なんて言っている。さらに1000タイトルは無料! でも選ぶのが大変だし、読みたいのはあるのかなぁ、と正直にそう思う。

また、ネット書店ではコンピュータが購入履歴から推測して「あなたの好みの本はこれでしょ?」と紹介してくれたりもするらしい。だから迷うこともないかも知れない。便利だとも思うし、大きなお世話だとも思う。コンピュータの分析結果から僕の読むべき本が選ばれていると思うとぞっとする。

「本は紙じゃないと嫌だ」と言うと、紙の本なんてないですよと言う時代がすぐ目の前に来ているのかもしれない。でも電子でしょ。電気でしょ。電気がないと読めないんでしょ。操作の誤りでデータが消えたりするんでしょ。それに機械が壊れたらどうするの? いやいやクラウドなら・・。でもアクセスする術を失うと読めなくなるんでしょ。本が読めなくなるのは自宅が火事になった時だけにしてもらいたいもんだ。

紙の本を手で持ちたいと僕はいつも思っている。電子書籍なら1000冊を持ち歩くことが出来るそうだが、持ち歩くのは1冊か2冊で十分だしね。いわゆる紙の本が好きな僕にとっては、この内容にはこの紙、この印刷にはこの紙という具合に、本にはインクと紙の関係が大切な要素になっていることにも気持ちが行ってしまう。コンテンツにしか興味ない人には、何だか訳の分からないことを言っているように思えるんだろうな、こういうのって。

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