見出し画像

リュックを担ぐ

「この20年で変らなかったのは、本への思い入れを読者に伝えようとし続けた書店員たちの存在である。彼ら、彼女たちがこれからも書店を支え続けるのである。・・・」 学芸出版社営業部の名物社員・藤原がお送りする、本と書店をめぐる四方山話。

商品の流通は通常、メーカー⇒問屋⇒小売店というのが一般的である。しかし最近ではメーカー⇒小売店という図式も見られるようになってきた。

一般的な流通形態は大量に物が作られ全国均一に商品を流通させる時には大変効率的である。メーカー単独で多様な種類の商品を1000店の小売店と直接取引きをすることなど事務コストを考えると不可能に近い。
よって出版業界のように巨大取次店があると1000店の小売店に商品を展示することは簡単に出来てしまうし、決済は取次店とだけしていればよいのだから都合がよい。

だが、多様でなく大量でもない商品を流通させるのであれば、メーカー単独で小売店と直接取引きをする方が、売上効率がよい場合もある。
古い話で申し訳ないが、「ロッキンオン」、「本の雑誌」、コンピュータ雑誌の「アスキー」は当初書店と直接取引きをして売っていた。リュックサックに本を詰めて書店を回り最新号を置いて行き、先月号を回収する。
その場で売れた分の納品書を発行して後日請求書が届くという仕組みだった。

今となってはのどかな風景であるが、当時は特に異質なものではなく、直接取引きの商談は日常的だった。その後、上記の3誌は売行きがよくなり大取次と契約してメジャーデビューして行った。

小売店も出版社も小さなレベルでの商品販売を模索していい時代なのではないかと思うことがある。
大きくなってしまった出版社や書店には無理だとしても、これから書店や出版社を起業しようとする人には、出版なんてそんなに儲からないのだから小さなレベルで充分という発想、今後電子出版が隆盛を極めるとするならば、紙メディア商品としての本は必要としている人にだけ売る小規模なマーケットでの流通を模索する時代になって来ていると思う。

いただいたサポートは、当社の出版活動のために大切に使わせていただきます。