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書店という「場」

「この20年で変らなかったのは、本への思い入れを読者に伝えようとし続けた書店員たちの存在である。彼ら、彼女たちがこれからも書店を支え続けるのである。・・・」 学芸出版社営業部の名物社員・藤原がお送りする、本と書店をめぐる四方山話。

先日新聞で、南相馬の小高駅前に10坪弱の書店が開業するというニュースを読んだ。住民は2500人ほどで、電車が1時間に1本または1時間半に1本。店主は小高駅で電車を待つ人のための場所を作りたかったという。

書店は本を買う場所であることが第一義と言えよう。ただ本を買う場所だけではなく人が集まる「場」であることも第一義であると思う。
待ち合わせに、ちゃっかり書店を利用した人は多いはずだ。なぜ待ち合わせ場所を、時計店や釣り道具屋にしないかと言うと、書店では1時間待たされたとしても時間を潰してしまえるだけの商品のキャパシティが大きいのだ。
書店で長々と立ち話をする人たちは、書店という空間に安心感があるからだと思う。珈琲の出ない喫茶店。人と人が会話する場所それが書店である。

すでに南相馬駅前には書店が開店したはずだ。電車を待つ間の少しの時間を乗客たちは楽しんでいるに違いない。そしてふと見つけた本を電車の中で読んでいるかも知れない。

永遠に書店には人が集まる「場」としての役割を果たして欲しいと僕は思う。
振り返れば、30年ほどの間、ビジネス(金儲け)の側面からしか書店を語っていなかったと思う。だから書店はスーパーマーケットみたいな構図の運営がされるようになり、本を愛している人が書店から去って行った。



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