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蒲田健の収録後記:ドリアン助川さん

個に向けて発信する

ドリアン助川さんの最新刊「新宿の猫」

世間とは、普通とは、ということを深く考えさせられる今作。

社会にすんなりと適合できない若い男女が新宿ゴールデン街で出会い、もがきながらも互いに気づきを与え一歩ずつ進もうとする。世間からズレているということで悩み苦しむ二人の依って立つべき場所は、様々な関係性を通して少しずつ明確化してくる。

ある先天的理由で希望する業界の就職試験を受けられなかった経験を含め、若き日のドリアンさんの姿が作品の中に色濃く反映されている。

山を登り始めようとしたらその登山道の入り口でいきなり扉を閉ざされてしまったとき、そこでどうふるまうのか。

人はだれかが作ったお仕着せの人生ではなく、自らが作ってゆく人生を歩む。そのことにその時々で気づき認識することで、かけがえのない自らの人生を切り開いてゆく。様々なものにぶつかることはおそらく避けられない。もがき苦しむことも然り。

ただここでポイントとなるのは、もがいている対象が何なのか、ということ。

その対象を「世間」や「普通」を超えたところに見いだせたとき、人生はより味わい深く、豊かなものとなってゆくであろう。

「人の道 全く同じ ものは無し

        試しながら 歩んでゆこうか」

P.S. 猫に人間を投影してよまれる色んな詩も、じんわりとしみいってきます。猫好きにとってもたまらない一作です。



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