蒲田健の収録後記:門井慶喜さん


わらすのかわりに童話を生む

門井慶喜さんの最新刊「銀河鉄道の父」

誰もが知る巨星・宮沢賢治。その偉大なる才能はどのような背景があって

生まれえたのか。それを彼の父親の視点から描きあぶりだした、

直木賞受賞作の今作品。


決して立派な聖人君子ではない、だからこそ逆に人間味を感じる新しい賢治像が

描かれている。

裕福な家庭に生まれ育った、いわゆるお坊ちゃまである賢治。その出自に関しては

彼自身にもちろん何の非もないのだが、親という目を通してその成長を観察すると、

お坊ちゃまが故の、甘さ・危うさに、ハラハラするわモヤモヤするわ・・・。

親の心子知らず、とはまさにかくや。

決して理想的な子育てとはいえないであろう。様々に紆余曲折があり、

試行錯誤があり、そして大前提としてかなり大甘の親バカである。

事後的に童話作家としての大輪の花が開いたのは歴史的な事実であるが、

そうならなかった可能性も相当ある。


何が人を成長させ、髙らしめるのか。


様々な出会い、きっかけ、組み合わせの妙が人生を演出するものであり、

同時に、唯一絶対の正解は存在しえない。


生きるということの根源的な面白さを再確認させてくれる物語でもある。


「こうなって ほしいと思う 親心

         子は皆 それを 知る由もなし?」

P.S.歴史小説の楽しさをこれからも世に送り出し続けたいという門井さん。

この直木賞でそのモチベーションは加速していきそうな予感大です!



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