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蒲田健の収録後記:藤井太洋さん

想像の上限値で描く

藤井太洋さんの最新刊「東京の子」

舞台は2023年の東京。オリンピック・パラリンピックの数年後。

人々の働き方は、賃金は、格差はどうなっているのか。そしてそれを基盤とした社会はどのような様相になっているのか。

悪い予想を立てるのはある意味簡単だ。現在進行形の諸問題を放置、もしくは悪化させておけばお手軽なディストピア一丁上がり。

その意味で、明るい未来を想像することは体力が必要だともいえる。藤井さんは、そこにきっちり向き合いコミットする。想像の上限値をつなぎ合わせることによって。

今作の主人公はパルクール・パフォーマーだったキャリアを持つ青年。鍛え上げられた肉体と研ぎ澄まされた精神力で難局を飛び越えてゆこうとする。とはいえ彼自身も完全無欠のスーパーマンではない。自身も非常に根の深い悩みを抱えている。もちろん全てが簡単に一刀両断に解決されるわけではない。複雑に絡み合ったものを解きほぐすのには根気も時間も必要だ。だが少しずつでも是正していこうという意思があれば、事態は変えうるものなのだ。

その跳躍力、躍動感、そして彼自身が発信するメッセージに、読者は勇気づけられる。

ぐっとこぶしを握り締めれば、みなぎってくる活力は必ずある。

「様々な 悩み苦しみ あるけれど

          踏み出しゆけば 道は開ける」

P.S. 生粋のアップルコンピュータ信者を自認する藤井さん。今後もその愛用のマックで生み出されるであろう活力みなぎる作品にも、大いに期待です!



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