蒲田健の収録後記:宇野常寛さん


遠く離れ、本来はつながらないはずのものをつなげるのが、批評の役割

宇野常寛さんの最新刊「母性のディストピア」

インタビューの冒頭、今日本の置かれている状況をどう捉えてますか?

という問いに「終わってますね」と冷徹に言い切った宇野さん。

抜き差しならない状況であるという現状認識。しかしだからといって全てを

あきらめてしまっているわけではない。ある意味挑発的な振り切った意見を

表明することで、大きな大きな警鐘を鳴らしている。


この危機に対処するためには、なぜことここに至っているのかという歴史を

知り、分析をすることが必要である。そして宇野さんはそれを、

おためごかしの政治史を通してではなく、アニメの歴史をトレースすることで

明らかにしようとする。具体的には宮崎駿、富野由悠季、押井守という

戦後日本アニメを牽引してきた3人の巨人にスポットを当てるという

方法論によって。


一見突拍子もない角度からのアプローチ。だが様々な作品の中には、

直接的な表現であったり、あるいはメタファーであったりという形で、

その時々の現実社会の空気、気分がにじみ出ている。それらを深く掘り下げ、

読み解き、更に俯瞰することによって、これまでの来し方が立ち現れ、

この社会の成り立ちが明らかになってくる。


もちろんそれが詳らかになったとしても、「失われた10年」が20年になり、

30年になろうとする中、ここからの立て直しが困難であることに変わりは

ない。だが、それでも、できることはまだある。


「色々と 埋め込まれてる メタファーを

           読み解き示す これぞ批評」


P.S.オフトークでは礼儀正しく物腰も柔らかい方ですが、トレードマークの

眼鏡を装着し「批評家・宇野常寛モード」がオンになると、その舌鋒の鋭さは

尋常ではなくなります。その振り切ったプロフェッショナリズム、天晴です。

3人の巨匠の作品のみならず、その他の最近の話題作にも言及され、

特に「シンゴジラ」の分析、そしてそこから導き出される教訓には目を

見開かされました。




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