蒲田健の収録後記:京極夏彦さん

妖怪にゃ学校も試験も何にもない。

ならば必要のない存在かといえば、いやいやどうして・・・。


京極夏彦さんの最新刊「虚実妖怪百物語」


ヒトは森羅万象のことを全ては知りえない。わからないことは必ずある。

そのわからないことを納得するための装置として、云わば不完全なるヒトが

正気を保つための歯止めとして、妖怪が生み出された。わからないことの

原因をヒトは妖怪に仮託してきた。不可解なことが起きるのは

妖怪のせいなのだ、と。


言い換えればヒトが全知全能でない以上、妖怪の存在を認める余裕、余白は

不可欠である。そんな不可欠な存在である妖怪が認められない世の中が

訪れたとしたら・・・

それは余裕のないイッパイイッパイの、極めて危険な状況であるだろう。


わからないことは不安や緊張を生む。

だからこそわからないことは一旦妖怪のせいにしておけば良いのだ。

いやむしろそうすべきなのだ。余裕があることによって摩擦や衝突が

回避されてゆく。

「ケンカはよせ、腹がへるぞ」という水木しげるイズムは

巡り巡ってここにつながる。


“これ 妖怪のせいなのね そうなのね

        こまかいことは 落ち着いてから“


P.S.和装に指ぬき皮手袋という安定の出で立ちでゆるーく、

かつ芯を外さず妖怪を語る“京極スタイル”。安定の楽しさでした。


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