野田幸宏

学生だけで収束しないことが、プロジェクトの魅力です。学生プロジェクトインタビューvol.3 野田幸宏

学生人材バンクが提供する「学生プロジェクト」。ここに所属する大学生が、普段どのような活動をしているのか。その活動の中にどんな思い、苦悩が隠されているのか。
ーそういった「学生の挑戦」に光を当てた、インタビュー企画の第三弾です。

第三弾は、三徳レンジャーに所属していた野田幸宏(のだっち)くん。
彼は昔、「人畜無害」だと言われたことがあります。また、人の気持ちが分からず、考えることすらエネルギーが必要だと考えていました。
そんな彼が今では相手を気遣い、率先していろんなことにチャレンジを続けています。
県外の団体と協働してイベントを開催したり、地域にも率先して足を運んでいます。

どこに、ここまで変化するきっかけがあったのか?
ーそこでのだっちが、「学生だけで収束しないことが、学生プロジェクトの魅力」と語る、活動の裏側についてお聞きしました。

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【今回のインタビュー相手】
▼氏名:野田幸宏(のだっち)
▼年齢:23歳
▼大学・学部:鳥取大学農学部生物資源環境学科(OB)
▼入学年度:平成27年
▼所属プロジェクト:三徳レンジャー
※取材当時。現在は卒業して、県外にて就職。

<三徳レンジャーとは>
「三徳レンジャー」は、三朝町三徳地区で、お米の生産から販売まで、農業を楽しく学びつつ、竹林整備などのボランティアや田んぼバレーといった地域活性化イベントにも参加している学生団体です。

【この記事の目次】
1 自分で何かやってみて、新しい世界を知りたかったんです。
2 地域に行くと、人との繋がりを感じることができます。
3 みんなの為に、発言することが増えました。
4 どら焼きを作り続けた経験が、今に繋がっています。
5 地元を離れて、友達がゼロになった。
6 相手のことを考えて、話ができるようになりました。
7 学生だけで収束しないことが、プロジェクトの魅力です。

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(ジャパンハーベストでの集合写真)

自分で何かやってみて、
新しい世界を知りたかったんです。

ーー学生プロジェクトに入ろうと思った、きっかけについて教えてもらってもいい?
野田:
農業を体験できるところに惹かれて、入りました。僕は高校まで剣道をしていたので、最初は剣道部も考えていました。でも、せっかく地元から離れたのに今まで通りだともったいない。それに、「農学部で農業を学ぶのに、ずっと学校にいるのはおかしい」と考えました。だから実際に農業を体験できる、三徳レンジャーの活動に魅力を感じて入りました。

ーーなんで農学部に入ろうと思ったの?
野田:
両親の影響が大きいですね。僕の両親はそれぞれ、生物と化学の先生をしています。こういった環境なので、プレゼントに図鑑をもらうなど、生まれつき生物に触れ合う機会が多かったんです。なので元々生物が得意で、農学部に入ろうと思いました。

ーー教育一家だったんだね。地元じゃなくて、県外の大学に行こうと思ったきっかけはある?
野田:
新しいことにチャレンジしたかったからです。僕は、これまであまり考えずに生きてきました。大学に行くのが既定路線で、「自分で将来を考える」ことをしなかった。それに気づいた時、一人暮らしをしたくなったし、自分で何かやってみて、新しい世界を知りたいと思ったんです。こういった経緯があって、県外の大学に行くことにしました。

ーーそういう風に「何かやってみよう」と思える、きっかけは何だった?
野田:
両親がずっと地元で育ってきたし、大学出るまで実家にいました。なので、一人暮らしをしたことがないんです。そういう姿を見て育ったので、このまま実家にいるんじゃなくて、自立したいと思ったことがきっかけです。

(他団体交流(ZZCとにしき恋の枝豆収穫手伝い))

地域に行くと、
人との繋がりを感じることができます。

ーー三徳レンジャーでは、どんな活動を行なってきたの?
野田:
米の販売に力を入れました。僕は「農業」というよりかは、「米をどう売るか」といった、販売に惹かれました。農業も楽しいけど、いざ目標を達成する面で見ると、米を売る方が達成感がありましたね。

ーー三徳レンジャーでは、どういう役割だったの?
野田:
米の管理を中心に任されていました。ここでいう米の管理とは、売るまでがゴールじゃなくて、売って次の米を作る為の資産作りです。例えば、「どこの会場に卸して、どう分配するか」など。他には、他団体と交流することが多かったので、企画的な役割もしていました。

ーーいろんな地域に関わってきたと思うけど、活動を通して地域の変化を感じたことはある?
野田:
現状、そこまで大きな変化は出せていません。けれども、僕たちを見てくれる「目」が少し変わりました。例えば、三朝町だと「三徳レンジャー」の名前を知ってもらえるようになりました。知ってもらえることで、たまに集落の人から電話がかかってきます。「最近元気か?次いつくるんか?」と。僕からは近いうちに、「卒業生として行くかもしれない」と言っています(笑)あとは、地域の祭りに呼んでもらえるようになりました。地域の外の人間だけど、良くも悪くも地域の労働力の一つとして見てくれています。頼りにしてくれるようになりましたね。

ーー反対に、地域への意識は変わったりした?
野田:
めちゃめちゃ変わりましたね。これまでのイメージがガラッと変わりました。入学するまでの自分は無知で、地元に田んぼはあるけど、想像してた地域とは全然違いました。「こんなに山が近いのか」「こんなに田んぼで働いているんだ」って。地域に対する概念そのものが変わりました。

(にしき恋、でこべじカフェとコラボ販売)

ーー地域に行って、何が一番驚いた?
野田:
最初は人の少なさ、暗さです(笑)。ただ、人との繋がりを感じることができました。地元では、隣人の顔を見たことがないくらい、人との繋がりが強くはありません。でも集落に行くと、いっぱい話をしてくれます。特にお酒の席だと、たくさん話をしてくれる(笑)。高校までしてきた交流とは全く違います。「ここまでテーブルを囲んで、盛り上がるものがあるのか」「ここまで大人は自分たちに話してくれるのか」。いろんな衝撃があって、嬉しかったですね。

ーー人に対する見方は変わった?
野田:
変わったと思います。僕はこれまで、人が何を考えているのかが分かりませんでした。最初は本当に人見知りで、人と接する時に考えを「シャットダウン」していました。自己完結がひどくて、人と関わらなくても生きていけると思っていました。中学校の時なんかは、三者面談で人畜無害だと言われましたね(笑)。

ーー人畜無害はすごいな(笑)
野田:
そうですね(笑)。でも今は、周りのことを考えれるようになったと思います。実際、周りも「考えてないことないよ」と言ってくれます。ただ、ここまで変わってこれたのも、いろんな人とのトラブルを乗り越えたおかげですね。そこから、「グループへの繋がりを持とう」という意識が生まれました。

(ナナファームでの販売(神戸)withにしき恋)

みんなの為に、
発言することが増えました。

ーープロジェクトを通して、自分自身変わったと感じる部分はある?
野田:
論理的に考えれるようになりましたね。周りに感情的な人が多かったから、冷静に考えてみんなの為に発言することが増えました。そうすると、グループのことを考える時間が増えたし、みんなの話をもっと聞くようになりました。

ーー変化するきっかけは何かあった?
野田:
プレゼンする機会が多かったのが、きっかけですね。三徳レンジャーでは、自分たちでスライドを作って、いろんな人にプレゼンする機会がありました。例えば、稲作肥料の使い方など。自分で考えて、話す機会があったのが大きいですね。あとは、単純に大人と話す機会が多いので、鍛えられました。生まれた地域・年数も違う人に、自分たちの活動を分かりやすく伝えるのは、トレーニングになりました。

ーー自分とは違う人に話すのは、トレーニングになるよね。
野田:
そうですね。それがあったからこそ、就活の面接にも活かすことができました。地域に出て行くと、何を考えているのかわからない集落の人もいるんですよ(笑)。そういう人たちにも、何十分かけてでも話して理解してもらいました。

(にしき恋、でこべじカフェとこコラボ販売)

どら焼きを作り続けた経験が、
今に繋がっています。

ーープロジェクトを行う中で、主体的に動くことは増えた?
野田:
圧倒的にありますね。小さいことで言ったら、他の人に話を振れるようになりました。例えば、団体の中でも自分から話せる人と話せない人がいます。そこで、自分から話せない子に振れそうな時は、話を振るように心掛けていました。

ーー良い心掛けだね。それはどういう意識で行なっていた?
野田:
苦しい顔で、意見を出すのは楽しくないじゃないですか。そういった空気にならないように、いろんな人に話すことを意識しました。むしろ、それしかできることがなかったので、それを徹底的に意識しましたね。

ーー他には何かある?
野田:
大きなことでいったら、他団体交流ですね。これは、3つの農業系団体(神戸大学の「にしき恋」、京都大学の「でこべじカフェ」、鳥取大学の「三徳レンジャー」)がコラボして、商品を販売するというプロジェクトです。

<でこベジカフェ>

<にしき恋>

1回目は、神戸タワーの下で港マルシェをしました。いろんな野菜や米、豆を使って、どら焼きを作りました。ただ半年かけてやったけど、大変でした(笑)。それぞれ違う場所で別々の活動をしてるから、夏休みの会議もなかなか予定が合わない。なかなか歯車が合わずグダグダでした。

(にしき恋、でこべじカフェとこコラボ販売)

ーー違う場所にいると、意思疎通が難しくなるよね。
野田:
そうですね。港マルシェの日も移動に高速代がかかるので、捻出する為にひたすらどら焼きを作り続けて仕込みました。京都で朝の9時から夜の2時まで。それでも売れなかった(笑)。だからそれを糧に、次は一年かけて準備しました。合宿も3回やって、お互いを理解した。その甲斐もあって、大阪でカフェを1日借りて販売することができました。他団体交流は、三徳レンジャーの中で、1番自主的にやったことですね。

ーー前回の反省を踏まえて、カフェの販売で活かしたことはある?
野田:
まず前回の反省点としては、全体的に下見などの予習が足りなかったし、コミュニケーション不足がありました。また各々に仕事を振りすぎたし、共有できなかった。そこで次の販売では、会場に近い「にしき恋」に下見をお願いしました。そして客層やチラシなどの情報を集めて、LINEでコミュニケーションをとりました。写真を撮って送ったり、実際に会うことも意識しましたね。

ーー事前準備を計画的にできたのは、よかったね。
野田:
そうですね。ただ、三徳レンジャーのメンバーには迷惑をかけたので、謝りました。その上で、「できることの幅が広がるし、次にいくステップだと思ってる」「だから、お金かかるけどやらせてください」とメンバーにお願いしました。

(にしき恋、でこべじカフェとこコラボ販売)

地元を離れて、
友達がゼロになった。

ーープロジェクトに入る前は、自分で動けてた?
野田:
できていませんでしたね。僕は自分で考えることが、エネルギーを使うし面倒だと考えていました。だから学校も、家から一番近いところに通学しました。なんでも他の人がしてくれる環境にいたこともあって、自分の欲求が生まれてきませんでしたね。

ーー変わるきっかけは何だったの?
野田:
地元から離れて、友達がゼロになったのがきっかけです。これまでだと、学校の教室で座ってたら誰かが来てくれました。でも大学だと、座ってても誰もこない。なんなら知らない人が隣にいます。そこで、「自主的に動かないといけないな」と考えるようになりました。

ーー変化して、どんないいことがあった?
野田:
あからさまなメリットは、就活で活かせれたことです。履歴書に書くことが、ありすぎるし、「こんなに活動してるやつはいない」と自信を持てました。でも今は「これまでの経験が、社会にどう活きるのか」をまだイメージできていません。これが働き始めて、あらゆる場面で立ち止まって振り返ると、「あの経験が活きたな」と実感すると思います。

(にしき恋、でこべじカフェとこコラボ販売)

相手のことを考えて、
話ができるようになりました。

ーープロジェクトを進める上で、失敗したなーという経験はあった?
野田:
自分の意見を出しすぎて、他の人の意見をないがしろにしてしまったことですね。会議をする中で、僕と周りのメンバーには考え方の違いがありました。例えば、僕は物事の進み具合を重要視するのに対して、1つのことに感情移入する子がいました。すると、言いたいことが伝わらないので言い方がきつくなり、人の話を聞けないこともありました。この時は、自分の能力不足を恨みましたね。

ーーその経験をどう乗り越えたの?
野田:
周りがフォローしてくれて、冷静になれました。その場でみんながフォローしてくれる環境が大きかったです。

ーーその中で、工夫したことはある?
野田:
人の話を聞いてまとめて話すようにしました。一番ひどかった時なんかは、人の揚げ足をすぐとってました。だから、自分が言ったことをまとめて、意見を加えた上できちんとした文章にして伝えるようにしました。そうすることで、他人と考え方が違うことを思い知りました。自分のスピードで話してもダメだし、人それぞれの考えのスピードがあることも学びましたね。

ーー工夫することで、変わったことはある?
野田:
落ち着いて、考えれるようになりました。人と距離を保っているけど、相手のことを考えて話をできるようになった。そうすることで、自分が本当に子供だと気づきましたね。まだまだ大人になっていないと気づきました。

(他団体交流(ZZCとにしき恋の枝豆収穫手伝い))

学生だけで収束しないことが、
プロジェクトの魅力です。

ーー学生プロジェクトの魅力ってなんだと思う?
野田:
人材バンクで言ったら、学生だけで収束しないことですね。活動する相手が大人なので、大人の基準に引き上げられます。僕たちもそこに向かって努力するし、基準を知ることができます。先輩が下の世代を教育する仕組みができていることもそうですね。人数もサークルと比べると少ないし、プロジェクトも部門毎に別れてるから、先輩の姿を見やすいです。やりたいことが出てきた時に、誰かを経由してノウハウが届く仕組みができていますね。

ーーいろんなことにチャレンジできるノウハウが、受け継がれてるんだね。
野田:
そうですね。やりたいことをやって、その技術が受け継がれる流れは、人材バンクにあります。僕の場合だと、アンケート作りたいとなったら、2時間で完成しました。過去のデータがあるので、必要な情報を取捨選択することができました。コミュニケーションがしっかり取れているからこそ、できているんだと思いますね。

ーー学生プロジェクトで培ってきたもので、これからに活かしていきたいことはある?
野田:
外に出て、いろんなことにチャレンジすることを続けていきたいです。僕は岡山が本社の百貨店に就職するんですけど、外に出て違う土地に出ようと思ったのも、学生人材バンクの影響があります。バンクの活動で学校の外に出て、これまでにない体験ができた。この経験があるからこそ、今の自分がいます。これを社会に出てからもやっていきたいです。あとは三徳レンジャーで米を販売する時のように、お客さんの話をきちんと聞いて、望んだもの以上のものを紹介できる考えをしていきたいです。

ーーここまで長時間のインタビューに答えてくれてありがとう。最後に後輩にメッセージをお願いします。
野田:
人材バンクの活動自体は、人生において二度とできません。そこでしか学べないものがあるし、そこでしか経験できないものがあります。これが大きな財産です。改めて活動が終わった時に、気づけるものもある。だからこそ、みんな良い経験しているので、もっと挑戦して頑張ってほしいです。僕自身も、人材バンクで楽しかったことの方が、これからの人生に活きそうだと感じています。何より、ここでの4年間は本当にインパクトが違う。そもそも新聞に載ることがびっくりだし、学生の活動がニュースになります。自分の世界が進んだ感じがする。「すごいことやってるんだ」と自信をもってこれからも頑張って欲しいです。

ーーーーインタビューに協力してくれて、本当にありがとう!
受け身だった「これまでの自分」を打破しようと、大学に入っていろんなことにチャレンジしてきたんだね。他団体交流など、大きなプロジェクトに取り組んだことは、これからに繋がると思います。でもそれ以上に、地域に出て「人との繋がり」を実感した。地域を見る目が変わって、人との関わり方が変化ことは、大きな財産になってると思う。
だからこそ、これからも自信を持って、外に飛び出して世界を広げて欲しいです。
そして、色々動く中で自分が経験したことの「意味」を1つでも理解して、今後の人生に繋げていって欲しいと思っています。
職員一同これからも、のだっちの挑戦を応援しています!

(三徳レンジャー集合写真)

(インタビュアー・文責:原田昂拓)
取材日:2019年2月1日

【寄付のお願い】学生人材バンクでは、大学生の活動支援や面談のための寄付を募っております。将来の日本のキーマンの背中を押す活動になります。ご理解いただき、ご支援いただければ幸いです。下記サイトから寄付が可能です。どうかよろしくお願いいたします。


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