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1年前②

「M-1に出よう」

ピアスを開けながら心に決めたものの、すぐに大問題にぶつかった。当然ながら、漫才は1人では出来ない。僕には相方がいないのだ。

普通に考えれば、NSCに入学して、誰かとコンビを組むのが現実的だとは思ったのだが、その頃の僕は、同級生コンビじゃないと売れないと、勝手に思い込んでいた。今、思い返してみれば、

「だって、ダウンタウンとか同級生やし。」

くらいの理由しか無かったと思う。笑い飯さんも、麒麟さんも、同級生じゃないのに。影響を受けた2組は急に無視して、いきなり『ダウンタウン』が出てくるあたり、なんとも浅はかである。

しかし、僕は23歳になる歳、同い年は大学を卒業し、新社会人になろうとしていた。漫才師を目指してくれるやつなんているわけがない。そんな暇なやつは普通いない。そう、普通は。


その頃の僕の日常は、仕事を辞め、

『オール巨人師匠が100万円貯めてお笑いを始めた。貯金が無くなったら辞めるつもりだった。』

というネットの記事に影響を受け、

「俺もそうしよう。いや、今は時代が違うから200万円貯めよう。」

と決めて、当時、一番時給の良かったパチンコ屋さんでバイトをし、バイトから帰ると、レンタルで借りてきたお笑いのDVDを見ては、

「これくらいやったら、俺の方がおもろいやんけ!へっ!!!」

と、酒を飲んでいた。勉強のために借りるのではなく、酒を飲むために借りていた。自分がおもしろいと思っている人のDVDは自信を失ってしまうので、1枚だけおもしろいと思う人を借りて、4枚は、あまりおもしろいと思っていない人のDVDを借りて、息巻いていた。しかもそれを、

『お笑い芸人になるための努力』

みたいな顔でやっていたのだ。

クズである。

オフィシャルルールに則ったクズ。心・技・体が整った真のクズ。タウンワークを持って帰ってきて、すでにバイトをした気になっているやつの4ランク下のクズ。


ただ、そんなクズに、2人の仲間ができた。

ひとりは、大学を卒業後、ミュージシャンを目指しながらも、バンドの解散などを繰り返している、簡単にいうとフリーターの、小学校からの同級生

『うだぞう』

もうひとりは、大学を卒業後、教員になる予定が、採用試験に落ち、来年の教員試験まで『教職浪人』として勉強している、簡単にいうとフリーターの、中学校からの同級生の

『よじょうちゃん』

ドラクエなら、揃った時点でゲームオーバーの、激弱パーティーが出来上がった。

この3人で、家飲みをしたり、ゲームをしたりしま。もちろん、一緒にお笑いのDVDを見るようになったが、

『わざわざおもしろくないDVDを借りてきてはグダグダいう癖』

は、さすがに出さなかった。

各々が好きなDVDを借りて、みんなでそれを見るのだが、3人とも、おもしろがるポイントが似ていたり、おもしろくないと思うことが近い感じがした。

その理由が、お笑いの感覚が近かったからなのか、

『このクズパーティーから追い出されたら、この街に俺の居場所はない』

という危機感を感じて、自分以外の2人に合わせにいっていたからなのかは、今となってはわからないが、同級生コンビに憧れていた僕は、


「こいつなら、漫才やってくれるんちゃうか?誘ってみようかな?けど、断られたら、この3人の関係は終わってしまうやろうな。。けどこいつ、俺の言うことでよく笑ってくれるし、たぶん、俺のことをおもしろいと思っているはずや!よし、誘おう!」


僕は、うだぞうを誘うことに決めた。


、、、いや、よじょう違うんかい!!

と、思ってくださった方と、丁寧にフリ過ぎてて、ボケに気づいた時点から冷めてた方が、せめて半々であることを祈ります。



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