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裁ち鋏論 その1 序論

私は仕立てという仕事が好きでやっているのですが、仕事の中でも様々な道具が好きです。
今回から数回はその中でも裁ち鋏にフォーカスしたいと思います。

裁ち鋏というのは布切り鋏、羅紗切り鋏とか色々な呼び方があるとは思いますが、左右対称ではない、大きめの鋏です。

東鋏 團十郎

このように親指を入れる部分とその他の指を入れる部分でわかれています。
構造と部分による様々な名称があるらしいですが、それは書く機会があれば書きましょう。

この鋏を布や糸を切るのに使います。

それでは切るということがどういうことでしょうか。
科学的に言うと、原子間や分子間の結合を切る、ということらしいです。
これは流石に知覚できないところです。

私が知覚できるギリギリが繊維を裁っている感覚です。
布を作っているのが糸、糸を作っているのが繊維、といったイメージです。
生地の地の目というものがあるのですが、それに沿って裁っていく際には繊維一本を裁つという感覚が重要になります。
これはある程度の年数をこなすと掴めるかもしれません。

裁ち鋏は刃物です。
包丁や日本刀に良し悪しがあるように、裁ち鋏にも良し悪しがあります。
この裁ち鋏について語りたくなったのでこのnoteを始めた事もあるので、色々と語りたいところです。
個人的に日本の裁ち鋏、中でも『東鋏』というものが最も優れていると思います。

この『東鋏』についてはまた、別のページを設けて語りたいのですが、簡単に言うと、東京周辺で造られていた裁ち鋏の名前です。
この『東鋏』の中に、聞いたことがあるかもしれませんが、『長太郎』『庄三郎』なんかがあるのです。
「造られていた」と書いた通り、現在では新規に作っているところは少ないか、もしくは無いと思います。
今、販売されている在庫のみというところが大半でしょう。
私の愛用品の殆どが『東鋏』ですが、中古だったり、どこかから出てきた新古品だったりします。

今回は裁ち鋏のさわりについて書きましたので、次回は『東鋏について』を書きたいと思います。
そこから『用途別の裁ち鋏』や『選び方、入手方法』『使用方法』などを書いていこうと考えています。

たいらがくと

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