見出し画像

ブレンパワードを見れよやー!使いやすい富野語満載のオーガニック的なアニメについて語る

記事のトップが「富野由悠季の世界展」のキービジュアルになっている通り、私は富野監督のアニメが大好きです。ガンダムが代表作と言われますが、イデオン、ザブングル、ダンバイン、エルガイム、キングゲイナーといった他のオリジナルロボットアニメでも、その作家性を十二分に発揮しており、上記の富野展で展示を何度も見ることで、やはり富野作品は私の血肉になっている作品だと確信、未見の作品も見ていこうと思ったのでした。

そういうわけで、3月にdアニメストアfor Prime Videoに一時加入したのをきっかけに、ブレンパワード全26話マラソンをしていました。当時放送はWOWOWで、そもそも衛星放送も見れる環境ではありませんでしたので鑑賞はできず。後に序盤(1~2巻くらい)をレンタルビデオで見たものの、その時は嵌れずリタイアしましたので、今回20数年ぶりのリベンジになりました。

ストーリーは、海底に眠っていた「オルファン」と呼ばれる巨大物体が浮上を始め、そのために起きた洪水等で荒廃した地球を舞台に、オルファンが生み出す「ブレンパワード」「グランチャー」と呼ばれる生体ロボットに乗った主人公たちが闘いを繰り広げる、というもの。

ただ、本作はナレーションが少なく、登場人物達の会話で世界観を説明するため、初見では分かりにくいと感じる人もいるかもしれません。
とりあえずオルファン=敵側、ノヴィス・ノア(巨大な船)=味方側と最初は認識していればよいのではないでしょうか。
勿論ストーリーを追っていくと、そんな単純な物語では無いことが理解されると思います。

今回全話鑑賞して心に残ったのが、本作が憎しみを包み込む愛の物語であったことです。オルファンやブレンパワード、グランチャーは勿論、終始ギスギスした雰囲気だったリクレイマー(オルファンに取り込まれた人々)も、失踪したノヴィス・ノアの元艦長も、最後は愛に包まれて安らぎを得るのです。それこそエンディング曲「愛の輪郭(フィールド)」のように、愛し合う心を育てていくのです。
そして愛は当然、プラトニックではなく肉体的であり、それ故の憎悪も随所に描かれいました。まさに愛憎渦巻く大人のアニメーション。

前述で触れたエンディング曲も印象的ですが、サントラも本当に良いです。富野監督、本作で菅野よう子さんと初タッグだったと思いますが、ブレンパワードの世界観に非常にマッチしていました。ただ、菅野よう子さんの楽曲の特徴として、一つのフレーズが長い、というものがあり、それが編集と噛み合っていない部分もあり、「あれ、ここで曲切るんだ」と感じるシーンが結構あったことが少し残念でした。
この次にタッグを組んだ∀ガンダムではかなり解消していたと思いますが。

キャラクターデザインは、いのまたむつみさん。宇宙皇子等で有名な方。目を大きく描くデザインで、御本人も富野アニメとは合わないかも、と仰っていましたが、富野展では、「目の大きなキャラは好きじゃないが、いのまたさんの絵は全然問題ない」的な監督の褒め言葉が書かれており、結構気に入っていたんじゃないかなあ、と思っています。
そしてメカデザインは永野護さん。映画が宇宙皇子と同時公開されたファイブスター物語を今でも絶賛連載中のすごい人で、富野監督とのタッグは……何以来でしょうか。エルガイム後もZ、ZZでデザインに一部参加、逆襲のシャアでも途中まではメカデザインとして参加しつつも残念ながら降板していますが……。なんにせよガッツリと永野メカが富野作品として前面に出るのは久しぶりでした。
積み重なった金属(のようなもの)が関節として機能するメカニズムは、まさにメカと生物の融合で、後のロボットデザインに多大な影響を与えています。永野さんの代表作であるヘビーメタル(モーターヘッド)やゴティックメードとも違うブレンパワードのデザインは、今見ても全く古びれない素晴らしいものだと思います。今の技術でプラモデルを出してほしい!

そして、何といっても面白いのが、個性的台詞がてんこ盛りなこと。
序盤に主人公の勇が言う「おまえのブレンパワードの扱い方、イエスだね!」や、ネットでもよく見かけるジョナサンが母を攻める台詞、「8歳と9歳と10歳の時と、12歳と13歳の時も、僕はずっと・・・待ってた!!」「クリスマスプレゼントだろ!!」など、普段から使いたくなるような富野語録にあふれています。
この独特の台詞回しを堪能するだけでも、本作を見る価値はあると言い切ってよいと思います。他作品では真似できない台詞力。いや、富野監督は本当にすごいです。

放送当時は、全裸のオープニングや荒木経惟撮影のエロティックな花のエンディングが話題の中心だった気がするブレンパワードでしたが、こうやってきちんと見ると、中身も語るべきことの多い作品だったと思います。

先述のdアニメストアや今だとBlu-ray BOXも発売中なので、今でも比較的容易に視聴できます。作画が乱れる回も結構ありますが、それが気にならないくらい素晴らしい作品でした。富野作品に興味はあるけど、沢山人が死ぬのは嫌だなあ、と尻込みしてる人にもおすすめです。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?