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【中国ゲーム会社訪問記】TapTap編

8月3日のChina Joy開催に先駆けて、中国アプリプラットフォームのビジネスモデルに一石を投じ新たな価値を産み出しているAndroidアプリプラットフォーム「TapTap」を有する「心动网络」を訪問した。

「心动网络」はパブリッシング大手であり、「TapTap」は別会社として展開している。
この記事をみている中国通の面々には今更感があるかもしれないが改めて「TapTap」の特徴を見てみると、

・プラットフォーム手数料無料
・コアゲーマーのコミュニティ
・ランキング操作の排除

という点が挙がってくる。それぞれの特徴を追ってみよう。

■プラットフォーム手数料無料

通常中国のAndroidアプリプラットフォームの手数料は50%が相場になっているが、「TapTap」はこの手数料を0%にしプラットフォーム上のトップバナー広告から収益を上げる仕組みにしている。

この新しい仕組みは従来の手数料で売上を作っているプラットフォームからすると業界慣習を破壊する行為に等しく、「TapTap」に対する風当たりは相当なものだったという。

但し、新しく良質なゲームを配信したいと願うデベロッパーやそれを待ち望むユーザーからは大きな支持を集めた。

■コアゲーマーコミュニティ

市場の流れをフォローするだけではなく新興デベロッパーのタイトルから国内外の大作まで取り扱う幅広いラインナップと「TapTap」のコンセプトである「发现好游戏(良いゲームを見つける)」を体現する編集チームのゲーム選定の目利き力により、多くのユーザーを集めることに成功した。

「TapTap」側はこのコンセプトの実現に徹する姿勢を明確にし、ユーザーとデベロッパーの直接的なコミュニケーションの場を提供している。

今では各ゲームのレビューにユーザーから詳細なプレイレポートが書き込まれるほどゲームを軸としたコミュニティが形成されている。

■ランキング操作の排除

中国でもランキング情報は各プラットフォームだけでなくゲームメディアなど含め人気のコンテンツだ。

但し、ランキング情報を多く目にするにつれて、「ランキングシステムを管理する側の意向が少なからず反映されているだろう」と思うユーザーは少なくない。

そんな中、「TapTap」はランキング操作を行わないことを宣言し公平性の担保に努めている。

と前置きが長くなってしまったが、ここからは「TapTap」訪問の様子を紹介したい。

「心动网络」のエントランス。上海の中心地から離れてはいるものの新しく整備された区画はとても綺麗だった。地下鉄最寄り駅は「上海马戏城」。帰りに上海雑技団を見ることもできそうだ。

エントランスを入ると吹き抜けの開放感あるレセプション。一応受付らしきカウンターがあったが、入り口にいた警備員の人が入るなり「アポですか?だったら、自分で連絡してください。」と声をかけてくれた。

この規模の会社で大きな間口の入口に対し、警備員が一人というセキュリティは中国でToC向けサービスを行っている会社にしては珍しいなと感じた。それほど治安が良いということなのだろう。

また、このレセプションで待っている間、面白い光景も目にした。

座っていたソファの隣りで先輩が後輩に仕事のレクチャーをしている風だったので、聞くともなしに聞いていたのたが、どうやらそれは面接であったようだ。

そして、どうやらその応募者は面接官の眼鏡にかなったらしく、最後に人事担当が面接後の流れを説明しにやってきた際に、面接官が直接「今日か明日には連絡できると思います。うんぬんかんぬん。」とほぼ合格を確約するかたちで応募者に伝えていた。

「隣に来客いてもレセプションのソファで面接するんかい!」という気もしなくはなかったが、吹き抜けの開放感と当事者たちの当たり前感があまり気にさせなかった。

そして、「その場でほぼ合格を伝えるスピード感凄いな!」と中国を実感した。雇用制度の違いなどから採用に対し日本よりも気軽に決定できる、というのもあるだろうが、スピード感があるのはやはり気持ちが良い。

レセプション横の執務スペースにはコスプレ衣装が並ぶ。

「心动网络」と同じビルにいるため「TapTap」の事業ではないかもしれないがコスプレイヤーとの協業も非常に活発とのことだった。

「TapTap」の人曰く「中国のコスプレイヤーは日本のYouTuberに比べて簡単に稼ぐことができるので、一緒に仕事するのはなかなか大変だ」とのことだった。

売れっ子とのコラボは色々と気を使うことが多いのは日本も中国も同じだ。

会議室の壁面にNetEaseが今年リリースした「永恒的7日之都」の大きなイラスト。

「なぜ?」と聞いてみたが「特に深い意味はない。」とのことだった。この辺りは現場主導でやったのだろう、現場担当者の権限の大きさが伺える。(その後、NetEaseの出資が判明した)

実際色んな話しを聞いてみたが「各人の権限が大きく会社が個人を成長させてくれる。」という趣旨の発言が多かった。

階段脇の空きスペースに油絵が。「デザイナーさん向けの練習?」と聞いてみたところ「多分そうなじゃないか。」とのことだった。

奥に見えるのは社内勉強会の様子。こういった勉強会は頻繁に開催されているらしく社員であればだれでも参加自由で講師として外部の偉い人に登壇してもらうことが多いらしい。

「TapTap」のVipルーム。大きな会社なのにコンパクトにまとまった可愛いサイズだ。ここからライブ動画を配信したりできるようにもなっているらしい。

今回久しぶりに会った「TapTap」の人は明らかに太っていて最初人違いかと思うほどだった。

その原因は3食無料で提供される社員食堂にあるらしい。恰幅の良い人から笑顔で「社食美味いんですよ!」と聞かされると「ホントに美味しいんだろうな。」と説得力があった。上記写真は休憩中の社員食堂。

そして、3食無料で提供するということは「TapTap」も当たり前のように夜遅くまで仕事してるのだろう。

今回上海に来て驚いた話しだが、中国スマホゲーム市場でしのぎを削るTencentやNetEaseなどの大手は競争の激化につれ、「007」と言われる00時(12時)まで7日働く(休み無し)勤務形態になっているという。

少し前までは「996(9時から9時まで週6日働く)」と言われていたが最早それすらもぬるく感じる新境地に達しているらしい。

「TapTap」はこれから対日本企業の専任をおき、日本企業との取り組みを本格化させていくと言う。

今回訪問し見聞きした内容は是非紹介して欲しい、という話しではあったが会社としての戦略などは大々的に展開していくとの話しだったので、ここは小出しにせず、「TapTap」の戦略等今後の展望は別途ご紹介させていただきたいと思う。

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