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ドリキャスと青春の終わりと、シェンムーII

嵐の中で発売されたシェンムー

2001年1月31日、セガがドリームキャストを最後にハード事業から撤退し、ソフトウェアメーカーになるというニュースが駆け巡った。
当時、好きなゲームが売れないと悲しいとは思ってはいたが、会社の財政などはまったく気にしていなかったから、青天の霹靂だった。
物心ついたころからセガがいて、任天堂がいて、永遠に競い合ってくれると勝手に思っていた。

セガのハード撤退はそれはもう大きなニュースで、新聞ではセガの株価が上がって大騒ぎだったけども、ゲーマー的に問題なのはそこではなかった。撤退を裏切りと感じるセガファンもいたし、「ゲーム引退の機会になった」と穏健に引退してしまうファンもいた。
全11章予定であった『シェンムー』もドリームキャストで完結しないことが確定し、荒れるファンあり、「わかっていたよ」と語るファンあり……とにかく複雑な状況だった。

それでもハード撤退が発表されてから7カ月後、2001年9月6日に『シェンムーII』は発売された。
「セガがソフトメーカーになったら、世界をソフトで制してくれる!」なんて前向きにとらえていた自分も、『シェンムーII』を手に取ったときは「これがセガ最後のハード専用大作なのかな……」と、感慨深いものがあった。

さて、「ドリキャスと、青春と、シェンムーIII」の記事で、過去の私が初代シェンムーに対してこんな感想を出だしたことを書いた。

当時はミニゲームや世界を楽しみつつ、「とにかくすごいけど、ゲームはいまいち」なんてしたり顔で語り、セガらしい詰めの甘さだとゲーム的でないクソリアルと、ボリューム不足をあげつらっていた。

が、『シェンムーII』はその不満点をかなり解消していた。
前作は道に迷いやすかったが、今作では地図を手に入れればマップが表示されたし、道行く人に話しかければナビをしてもらえた。
また、前作ではゲーム内時間を進めるためにはひたすらプレイしなければいけなかった。だから、特定のゲーム内時間に発生するイベントを体験するためには時間までゲームを触って待つ必要があり、“クソリアル”な不便さを誇っていた。これも、一瞬で時間を過ぎ去らせる”待つ”システムで解決された。

操作性も良くなっていたし、ドリームキャストの限界を極めたと思っていたグラフィックもさらに磨きがかかっていた。
前作は第1章のシナリオだけだったが、今回は4章分のシナリオを1作に詰め込んで物語は濃くなり、マップの広さは10倍(公称)に広くなり、ボリュームも増大した。

私がこの当時にゲームレビューを担当していたなら、「シェンムーIIは、前作を洗練し、システム、物語のテンポ、ボリューム、すべての点で改善されている。最初から初代と2作目が1本のゲームとして統合されていたら、ドリキャスの運命も少し変わった可能性がある」などと書いたかもしれない。
革命とは言わないが、ゲームとしてはすごく良くなっていた。

不満が解消され、明らかに良くなっていて、実際通して遊んでも面白い。しかし、そんな『シェンムーII』を、私は初代作品よりも楽しめなかった。

以下、有料マガジン”ゲームキャスト秘密基地”のサポーター向けになっています。シェンムーの話を期待していた方には申し訳ないですが、基本的にマガジン読者向けに有料で書いているのです。

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