ネットメディア誕生と4gamerの台頭、ファミ通クロスレビューの影響 - 私のゲームメディア史

これは、「ゲーム雑誌創成期から現代までの私的ゲームメディア史。ゲーム誌の提供してきた価値と収益を考える」(全編公開)の続きで、ウェブ専門のゲームメディアの登場と、ファミ通ドットコムの敗北などを扱う2000年~2008年ごろの話が主流となる。
私が持っている歴史観からメディアを見つめなおす記事であり、歴史を網羅するものではない(穴の指摘は歓迎だ)。
あと、できるだけ人に聞いたと出せる部分は「聞いた」、推測部分は「推測」などと書くようにはしている。
トップ画像は「 “2016年4月~6月 クロスレビュー 殿堂入りソフトカタログ 59本”」より。

ファミ通クロスレビューは影響力があったのか?

次回予告で「4gamer登場!」なんて書いたのだが、インターネットメディア登場の前に、ファミ通クロスレビューについて少しふれておきたい。
ネットでいろいろと話題になったファミ通のクロスレビューだが、諸説ある中で間違っているとわかること、確からしいことについてはここで書いておく。

かつてファミ通クロスレビューについて、「絶大な影響力を持っているクロスレビュー」みたいな書き方をされる時期があったが、これ自体が間違いであったことは確実に言える。もちろん、「殿堂入りしたから買っておこう」「点数が低いからやめておこう」みたいな、購買者にとっての影響は少しあったと思う。また、中古ゲーム屋が買取価格の参考にしていたという話も知っている。
しかし、絶大な影響があったかと言うと、それは違うと思う。現実として、ゲームのクロスレビューは発売週に掲載される。しかし、前の記事に書いた通りゲームの発注はゲーム発売の数カ月前には終わる。つまり、レビュー点数は発注数に影響を及ぼすことが不可能だった。発注数=売上なので、レビュー点数は売上に影響しなかった。
数名、当時に現場で働いていた人間に確認したが、「点数は売れ行きに影響していたかもしれないが、販売店でそれを確認する手段がなかったし、欠品との相関関係はあまり感じなかった」という回答が多く、現場でも意識していなかったことがわかる。さらに、SFC時代までは欠品したら最後、運よく問屋にゲームが残っていなければリピートはできなかったので、リピートの参考にもならなかった。

プレイステーション時代になるとリピート発注は現実的になるが、それも「店での売れ行きを見て追加発注した」という現場の空気が大きく影響していて、その次に参考にした雑誌としては電プレが多く挙げられた。そのとき同時に、レビュー点数も参考にすることはあったという。
つまり、最も売り上げに影響する初回発注に対する影響はゼロ。追加発注の出るロングセラーゲームなら影響があったかもしれない、というのが実情だろう。
現場においては殿堂入りシール的なものを売り場につける流れはあったが、売り上げへの影響は「わからない」という回答が多かった。影響があったという人もいたので「(とくにSFCやPS初期において)参考にしていたプレイヤーもいた」のは確かだと思うが、「絶大な影響を持つファミ通のクロスレビュー」というのはまず正しくない。

ゲームマニアの間では、ときおりファミ通のレビュー点数が買えたなんて噂が流れる。しかし、(リピートが見込める大作をのぞき)売り上げに影響のない点数を企業が購入する合理的な理由はないから、それはウソと断定してもいいと思う。
また、PS時代に仕入れを担当していた方から「点数を高くして欲しいと言ったゲームメーカーがファミ通から断られ、結果としてレビューが掲載されなかった話をメーカー営業から聞いた」という話も聞いている(この一節は掲載許可が出たので追記した)。PS2以降は分からないが、少なくともPS時代ぐらいまでは断っていたのだろう。
また、ファミ通側で当時レビューしていた方の話は何回か聞いたが、個人単位で売ることも難しい(誰が何を書いているかわかりづらいので、示し合せて高得点を出すのが難しい)システムだったようだし、ゲーム小僧を買収して点数を買ったとしても、企業側がばらされた時のリスクが高い。
ファミ通本体が売るとしたらバレたときに失う信用がでかすぎてリスクに見合わない。売り買いは、まずあり得ない。
重要な情報を提供してくれる大企業への配慮についてはあり得たかもしれないが、今のところそれがあったともなかったとも言えないので、これは調べ続けるつもりだ。

で、ここまでは聞いた話から考えたことだが、ここからは完全な裏付けもない推測。クロスレビューの影響力……というか、話題性が大きくなってきたのはインターネットが発達したPS後期以降だったのではないか、と思っている。
もともと、ファミ通の点数には話題性があったが、インターネットが発達し、セガBBSや2chゲームハード板で「この点数は自分の実感とずれているんじゃないか?」、「自分が買おうと思っていたゲームの点数が高くてうれしい」などと話題になり、まとめサイトがハード間対立を煽り、PVを取れるネタとして点数を気にしだしたときにエサとして機能したように感じている。これすら2009年ごろがピークで、家庭用ゲームの不況が始まるともはやゲームを遊ぶ人すら消えていって、落ち着いたように思う。

ダウンロード販売が主流になってきた今となっては、ネット上の評判などは結構重要な要因になりえるので、状況は異なるだろう。つまり、PS4やSwitchでDL販売に活気が出てきた今ならクロスレビュー点数に意味が出てくる……とは思うのだが、ファミ通が叩かれまくって、クロスレビューでろくに遊ばずに書いたであろう部分(結構真面目にやっている人も多いと思うが、特にPCEときメモなどマイナーハードのゲームに関して言い訳がきかない不足があった)が指摘されたりして信用が落ちているので、あの点数が強い意味を持つことは今後もない気がする。

クロスレビューへのカウンターもあったと思う

さて、そんなファミ通クロスレビューではあるが、プレイステーション時代に入ってからカウンターカルチャーが生まれてくる。1994年のゲーム批評の登場である。
当時からクロスレビューに対しては、コアなゲーマーの間で「なんとなくスクウェアとか大手には点数が甘いのではないか感」はあって、そこにすっと入ってきたのがこの雑誌だったように思う。そういった意味において、クロスレビューは影響力があっただろうと考える。

ゲーム批評は初期、猛烈なスクウェアへのカウンターをかますのだが、その陰で面白いゲームの掘り出し、雑誌としても黒字のまま終わる。レビューしてゲームを掘り起こすというより、ゲームの読み物としての側面が大きかったように思うが、この時期はそういったものも黒字になり得たようだ。
(当時のスタッフに聞いたが、この雑誌はゲームライターがゲームをクリアするまでプレイするため負荷が高く、そのわりに読者もマニアなので「すごく良かったです!」と言われる反面、「あそこが違う、俺の考えと違う」という文句もすごく多くて、みんなが疲弊したので終わったという)

インターネットメディアの登場と4gamerの勝利

さて、ときは流れて2000年。紙の雑誌の登場の流れで続いていたゲームメディアに大きな変化が訪れる。インターネットの普及と匿名掲示板「2ちゃんねる」とその情報をまとめる「まとめサイト」の立ち上げ、そして2000年8月にインターネット専門の大手ゲームメディア4gamer.netが立ち上がったことである。

まず、「まとめサイト」のフライング情報はファミ通を悩ませた。
流れとしては、書店員などが前日に入荷されたファミ通を見て情報を2ちゃんねるに掲載する。それをまとめサイトが見やすくまとめて掲載し、拡散する。これにより、ファミ通を見ずに、ファミ通より早くファミ通掲載情報が手に入る状況が生まれてしまった。
もちろん、4gamerの情報も2ちゃんねるに転載されていくわけだが、ファミ通の優位性が「独占先行情報」にあったので、先行の優位性が削られてしまう被害はより大きかっただろう。
実際、これに対してファミ通は雑誌インタビューの完全版をWEBにのせることで対策を行っていたという証言もあり、その影響はうかがえる。

さて、4gamerとファミ通ドットコムの競争については、すでにファミ通ドットコムが存在するなか、新興のウェブ専門ゲームメディア4gamerがどのように立ち向かうのか。そういった注目があった。
が、その勝敗はあっけなくついた。
まず、4gamerはソフトバンクパブリッシングの傘下にあったため、その影響で紙の雑誌 4gamer Magazine を2001年に立ち上げるが……これは3号で終わってしまった。敗北というか、濃いPC雑誌だったので総合誌のファミ通と勝負していた感すらない終わり方だった。

一方、ウェブでは初期のPC洋ゲーム路線でコアなファンをつかみまくっていた。また、サイト登場のタイミングもすばらしかった。2000年は『ディアブロII』、2002年にMMORPGの歴史的ヒット『ラグナロクオンライン』、『FF11』、2004年に『リネージュII』がサービスインするなか、PCオンラインゲーム初期のヒット作を扱い、順調にサイトを伸ばしていった(FF11に関しては電プレが強かったが)。
一方、ファミ通ドットコムはPCゲームの波についていけず、情報が遅かった。

それでもファミ通には家庭用ゲームの先行情報があり、その点については強かったのだが……2008年ごろに家庭用ゲームなどにも手を伸ばすと、4gamerは家庭用の情報でもファミ通ドットコムを圧倒していった。
そもそもウェブで存在感があるオンラインゲームを一手に扱っていたのもあるが、4gamerの勝因はシンプルで、紙媒体のファミ通が誇っていた「プレイヤーの望む情報をより早く」届けたところにあったと思う。

ファミ通は紙の雑誌を売る商売をしていた。必然的に、紙の雑誌に価値を持たせて買ってもらうためWEBの情報を制限していたと思われる。昔ほどではないが今も残る「詳細はファミ通本誌で!」だ。そして、内容に関してもメーカーに配慮した表現で、やや過激な4gamerより味が薄かった。皮肉にも紙雑誌で勝利していたことがファミ通ドットコムの足を引っ張ったようにみえる。

しかし、4gamerにはそんな制約はない。だからファミ通ドットコムより4gamerの方が情報が多くなったように見えた。また、4gamerは800×1024以上の高解像度の画像や高画質動画、出し惜しみなく載せていて「最新の美しい画像を最高の解像度で!」があり、それと比べるとファミ通ドットコムは足りなかった。

コアなPCゲーマーの支持を得ていた4gamerは、ゲーム機に関してもネットを利用するコアなゲーマーを獲得していき、熱量のあるサイトになっていく。PCゲームでは4gamerが当然のように優先して広告を獲得したし、家庭用ゲームでも存在感を増し、2012年発売の『Gravity Daze』に関してはそのヒットに大きな影響力を持った。


とにもかくにも、4gamerは
「ファミ通独占情報を除くほとんどのプレイヤーが望む情報を、高品質で、早く届ける」
ことでファミ通ドットコムに勝利したと考えている。勝利したことで読者数を集め、PCゲームやオンラインゲーム広告は4gamerに集まった。

当初、ファミ通は320×240の画像を載せていたという表記がありましたが、これは完全なる勘違いで、この時期から640×360の画像などを載せておりました。また、完全版のインタビューを他サイトに対抗して載せたという表記がありましたが「まとめサイトに対抗するためだった」と当時の担当者の方から指摘を受けており、修正しております。
この部分について間違っていたこと、大変申し訳ありませんでした。また、ご指摘に感謝いたします。

この先、2600文字程度
・まとめサイトあってゲームメディアになかったもの
・ガラケーのメディア
・ゲーム不況と家庭用ゲーム悲観論
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