あの頃のAppBankはNo1ゲームメディアだった。嫉妬して嫌いになるほど強かった理由を今、振り返る

この記事は、2008年から2012年までのAppBankがなぜ強かったのかという考察記事になる。後年、AppBankのライターになるのだが、この記事の時期は入社前の時期を外部から見て、メディアとしての勝因を私なり分析したもので、ゴシップなどの期待は抱かないでほしい。
ゲーム雑誌創成期から現代までの私的ゲームメディア史」から始まり、「ウェブメディアの誕生、まとめさいと4gamerとファミ通と」に続く第3弾。やっぱり長くなって終わらなかったので、もう連載として続ける。

AppBankの登場

2008年、これまでのメディアの常識を打ち破るゲームメディアが登場した。iPhoneを扱うメディアAppBank(アップバンク)である。
AppBankは正確にはゲームメディアではなく、iPhoneのメディアだった。スティーブジョブズがiPhoneを発表し、業界の風雲児と言われたソフトバンクの孫正義さんが独占で扱うことを発表し、新しいもの好きたちはいっせいにiPhoneに注目を始めた。
で、そこに最初にメディアを作ったのがAppBankで、早期に参入し、同時に今振り返ると最高のメディアでもあった。ざっと特徴をあげていこうか。

1・素人丸だしの勢いで、短時間に記事を書き散らかした
2・エロだろうが面白ければ問題なし
3・嫌なことがあれば、大手メーカーにも喧嘩を売る
4・Twitterを利用してライター全員が個性を発揮し、スターとなっていった
5・日本全国でオフ会を開き、ファンを増やしていった

初期のAppBankの収益源は、Appleのアフィリエイトであった。アプリの売り上げのうち、数%がそのまま収入になる。Appleのエロ規制も緩くて、エロ系の本などもガシガシ紹介して収益が伸ばせた。
また、Appleのアフィリエイトによる収益を得る構造は、スポンサーに文句を言われる可能性がなかった。よって、読者の立場で記事を書けた。
読者が気に入るアプリを紹介し続ければ、アプリが売れて収益が十分に上がる。しかも、みんなiPhoneを買いたてで「新しい端末の新しい可能性を試したい」と思っていて、アプリをガンガン買ってくれる。
時代の流れと、読者の要望、設立のタイミングがAppBankをスターダムに押し上げたと言えるだろう。

しかし、本当にそれだけで強くなれたのだろうか。明らかな勝因は他にあったのではないだろうか。勝因を後付けで語るのはカッコ悪いが、彼らの行動の意味を改めて考えようと思う。

AppBankの勢い

AppBankは破竹の勢いでスマホ業界を制覇した。どのぐらいすごかったのかと言えば、AppBankが紹介したアプリは翌日にAppStoreのトップに輝くぐらいすごかった。今では考えられないことだが、このころのアプリプロモーションとは、「AppBankに載る」ことであった。
一方で、追随して作られた他のメディアは苦戦していた。「柳の下には2匹の土壌がいる」なんて言うが、AppBankは圧倒的に強くて他のメディアは対抗できていなかったのだ。

「これからはスマホの時代だ」と、大手が先行投資としてAppBank型のアプリやスマホのメディアを立ち上げていったが、どうにも伸びれなかった。昔から、メディア関係者が集まるたびに「ギリギリで頑張ってる」という会話が繰り返されていたものだ。
そして、いざソシャゲ広告が増えて多少収益が上がってきた時期には、AppBankが伸びすぎて比較にならないほど体力の差がついていた。そして、淘汰が始まる2014年ごろをピークに多少の収益も消え、次々と閉鎖し、2017年ごろにはその多くは閉鎖した。

私はと言えば、AppBankが嫌いだった。というより、今ならはっきりわかるけども嫉妬していた。
真面目に同じゲームをクリアして記事を書いているのに、AppBankに適当な(例えば、虫になって戦うTPSを”ゾンビFPS”と書いた記事にすら)記事が載ると、自分が書くより圧倒的に売れたからだ。
AppBankは嫌いだった。が、今思えば当時になぜ自分も含めた他のメディアが負けていたのか、説明できる。というより、先にあげたAppBankの特徴5つこそ、既存メディアが負けた理由だった。

1・AppBankの情報は早く、十分に正確だった

先ほど、「虫になって戦うTPSを”ゾンビFPS”と書いた記事」がAppBankに掲載されたことを書いたが、それどころじゃない。『100Rogue』という普通のローグライクゲームを「トルネコの不思議なダンジョンなどの祖先になったRogueの100作目です」なんて紹介したり、ゲームを多く紹介するようになってから半月に1回ぐらいはうるさいゲーマーを怒らせていたと思う。
他のジャンルでも時々うるさい人たちが「用語が違う」とか怒っていたりした。

しかしながら、記事に書いてあるスクリーンショットと、説明はたいていあっていた。細かいシステムは間違っていることもあって、そこがゲーマーを激怒させることもあったが、彼らのメインターゲットは「iPhoneを買った普通の人」で、彼らはあまり細かいことを気にしなかったので影響なかった。
例えば、『ドラゴンクエスト』を紹介したとしよう。AppBankの記事は、「このゲームの操作はこうで、王様からお金をもらって竜王を倒すRPGで、ターン制のコマンドバトルを採用していて……」とちゃんと説明してくれる。
その中に「ホイミは攻撃魔法です(本来は回復魔法)」などと書いてあることもあるが、アプリの大枠を掴むうえで全く問題ない。実際にプレイしたところで、ホイミが回復魔法だと気づいても「金返せ!」とはならない程度のミスだ。ごくまれにマズイ間違えもあった気がするが、そこまで行くと数は少ない。

で、それを1~2時間ぐらいで勢いで書く。すると、アプリが出てから最速で内容がわかる記事がアップされ、自然と最も早く、十分に価値のある情報が載るメディアになっていった。
また、情報の粒度もちょうどよかった。
AppBankのレビュー記事は、アプリを起動して流すようにプレイを実況するようなスタイルで、「タイトルでタッチしたら起動して(1段落)、マップからステージをタッチして(2段落)、ここをスワイプしてなぞったら銃を撃ったぞ!(3段落)敵がダメージを受けて倒れた(4段落)」という形式で、馬鹿みたいに順を追って素人のプレイを説明していく形式だった。

今でいうとバカバカしいほど詳細だが、スマホ初期は「AppStoreからアプリをダウンロードすることすら難しい」という人がいる時代だった。
『パズドラ』がでた2012年、最も流行ったアプリは『なめこ栽培』だったの記事で書いたが、このころ『パズドラ』や『なめこ栽培』は表彰されていて、その理由は「アプリのダウンロードする壁を一般ユーザーが乗り越えるきっかけになった」というもの。本当に、そういった時代があったのだ。
「スワイプ」にすら説明が必要なことがあった。そこに対して、この形式の記事は「スマホを初めて買った人でも内容と操作がわかる」ものになっていた。

同時期の私は何をしていたかと言うと、プラットフォーマーやFPSというジャンルを書いたら「プラットフォーマーやFPSってなんですか、意味が分かりません」と質問を何回か受け取ったりしていた。つまり、スマホ普及期の客に対して不親切な説明をし続けていた。
同じように、法人からやってきたメディアは記事内容を保証しようとし、ゲームメディアはゲームを詳しく説明しようとし、AppBankのように必要十分な記事を出せなかった。

つまり、
・AppBankは読者が欲しがる情報を最速で提供していた
・最速で提供できる(当時リリースから2時間未満と言っていた。最速1時間)フォーマットを持っていた
のが強みだった。結局、これまでの記事でも書いた通り「早く、望む情報を届ける」のは強さであった。

この先、4600文字程度
・残りの勝因解説
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1.5・素人丸出しと思っていたけど理にかなっていた

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