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遊んでいて、人生で最もブチ切れたゲーム『電脳戦機バーチャロン』を語る

購読しているゲームライターマガジンのテーマで「ブチ切れたゲーム」というお題があったので、ちょうど自分の過去について考えていたから勝手にのっかってみた。
けども、自分はゲーム自体にはあまりブチ切れない人生を送ってきて……多分、いわゆるゲーム機・アーケードの作品でブチ切れたのは2本だけ。

セガの『電脳戦機バーチャロン(バーチャロン)』と、カプコンの『ストリートファイターIII 3rd Strike』だけだと思う。少なくとも、さっと記憶に出てくるのは。

※20:57に複数の段落名を変更し、「俺の名前を言ってみろ!」を追加。また、弟にオラタンの戦術について監修し、言葉に関してお墨付きをもらいました。

電脳戦機バーチャロンがやってきた

1995年ごろ。当時はまだ対戦格闘ゲームブームが続いていたのだが、私は複雑なコマンドを要するゲームについていけなくなっていた。正確には、SNK格ゲーの複雑な連続技・コマンドを練習するほどお金をかけられず(※家庭用ゲームを優先していたので)、ゲーセン仲間についていけなくなっていた。

そこに出てきたセガのロボット3D対戦ゲーム『電脳戦機バーチャロン』は、とても魅力的だった。2本のレバーを利用したまったく新しい操作系を採用していて、複雑なコマンド入力がない(新しい操作系を覚える必要はあったけど)。3Dポリゴンで描かれるバーチャロイド(ロボット)のデザインはかっこよかったし、当時先端であったポリゴンを使い、3D空間を活かした3D空間を自在に移動する駆け引きは『ストリートファイターII』などの格闘ゲームにないもので、とても新鮮だった。

このゲームには死ぬほどハマったが、同時にゲーム人生史上最大のブチキレを味わうことになる。

ゲーセン小僧誕生

たまたま同級生の間で流行ったこともあり、初期は対戦相手に不自由しなかった。
だが、使い始めた機体のテムジンが強キャラだったこと、障害物を利用して3D空間を使って戦う感覚が最初から備わっていて(説明しても同級生は理解してくれなかった)妙に強かったことが重なり、私ばかりが勝つのでだんだん廃れてしまった。

こういったとき、誰かが圧倒的に強くなったゲームは廃れ、みんなで新しい似たゲームに移動していた(KOFなど人口の多いゲームは知らない人に何連勝できるか競ったりする)が、当時人気だった2D格ゲーと違って、3D空間を自由に移動できる『バーチャロン』の代替になるゲームは登場しなかった。
そこで、私は対戦相手を探し、ゲーム仲間と離れて地元のゲームセンターに入り浸るようになった。で、地元のゲーセンにいってみると8割ぐらいは勝てて、あっというまにゲーセンに溶け込んでしまった。
ゲーセン小僧になってしまったのである。

俺にはゲームの才能があるに違いない!

地元で対戦相手がいなくなると、セガのゲームセンターで開催されていた小規模な大会にも積極的に出て、優勝せずともくじ運次第で決勝に残ったりできる……まあ、中堅ぐらいの実力はあったように思う。

大人に混じって戦って、結構勝てる。特殊操作の練習はしたけど、それ以外は特に考えずに感覚で勝てている。当時は中高でゲーム部を結成して毎日ゲームを遊びまくっていた(TRPG・アナログゲーム系)時期で、アナログゲーム系雑誌の投稿で褒められた(今思うと載っただけ)こともあり、

「よくわからんが俺にはゲームの才能がある」

そんなゲーセン小僧のプライドが自分に芽生えてしまった。

兄より優れた弟など存在しねぇ!

当時の自分は地元のゲームセンターで敵なしで、正直お山の大将だった。思い上がってしまうのもちょっとしょうがないかな、と今も思う。ところが、ほどなくしてお山の大将は完全に失墜する。
地元に対戦相手がいないから、弟を誘って『バーチャロン』教えていたのところ……弟はあっという間に私より圧倒的に強くなってしまうのである。

それまで『バーチャロン』を遊んでいて10試合したら全国大会レベルの強い相手にも1試合ぐらいは勝てた。ところが、弟との対戦成績はどんどん悪化していき、ついには1日に1度も勝てないときすらでてきたのである。

ゲームに自信を持っている世間知らずの高校生が、対戦ゲームで後から始めた中学生の弟に勝てない。これはかなり屈辱的で、ふがいない自分にブチキレていた。
2D格ゲーでは仲間についていけなくて、3Dゲームに逃げたら弟が最強ってなんだそれは!
当時は負けすぎると自分の弱さにブチキレまくっていた。でも、「才能がある」と思っていたし、感覚で強くなっていたのでそのまま何も考えずプレイしていた。あほだ。

もちろん、弟に勝てるようにならなかった。

俺の名を言ってみろ!

そして、弟がどんどん強くなっていく中で衝撃的な事件が発生する。私の名前が、消えた。
映画『千と千尋の神隠し』がごとく私の名前が完全にバーチャロン界隈から消え……私の名前は「兄貴」になった。そう、私の存在価値はバーチャロン界隈で一目置かれる弟の兄であることになっていた。

弟に勝てなくてコンプレックスがある中、「よう、兄貴!」と呼ばれ続ける屈辱……屈ッ!
ちなみに、これはまったく脚色なく、本当に起きた話だ。

ゲームはシステムから攻略しろ

それからしばらくして、弟は次回作の『バーチャロンオラトリオタングラム』では日本一クラスのプレイヤーとして有名になり、3作目の『バーチャロン フォース』ではゲーム制作側のスタッフになってしまった。
(後年、弟はガンダムVSシリーズでも全国大会にも出場しており、コマンドがない対戦ゲームでは圧倒的な能力があった)

さすがにそこまで突き放されるとある種の諦めができて「才能か、考え方に違いがある」という現実に目覚め、弟にゲームについて教えを乞うようになった。
すると、弟はゲームシステムを分析し、ゲームシステムに基づいて戦略を立てていて、すべてがロジカルに戦っていることが判明した。感覚で戦っていた自分にはまったく、及ばない世界だった。

ゲームシステムから考える対戦ゲーム

さて、これまで書いていた『バーチャロン』は1995年に登場した初代、ここからの話は『バーチャロン オラトリオタングラム(オラタン)』の話になる。

『オラタン』に関して、私は「敵の攻撃を避け、ダッシュ際や着地などの硬直に攻撃を叩き込んで破壊するゲーム」というイメージを持っていた。これを覚えておけば、武器などの相性を覚えて、適切に操作して使えば大体勝てる。その程度の考えだった。

これに対して、弟は「オラタンは、リスクをひたすら減らすゲームである」と解説をした。
『オラタン』は避けが重視されたゲームで、どんな敵の攻撃も基本的には避けられる。基本的に避けられるシステムなのだから、できる限りリスクの低い攻撃を行い、敵の攻撃は完全に避けて、敵がミスしたときだけ攻撃を叩き込む戦術をとるべきであるという。

「ゲームの開幕に0.01%のダメージを与えたら、あとは逃げ切って時間切れで勝てる」

格闘ゲームで「波動拳をガードして削ったら、あとは時間切れまで逃げていれば体力勝ちできる」ぐらいの無茶なことを言い始めた(※)。
だが、実際にその通りにプレイして勝ち、初期に多くのプレイヤーにとって敵を破壊するゲームだった『オラタン』上位プレイヤーの対戦風景は、敵の攻撃を完璧に避けて体力差で勝つ戦い方へシフトしていった。
いち早くその戦術を見抜いた弟は『オラタン』の第一人者となった。

※無茶なことを言い始めたように聞こえるが、もっと細かい話もあった。バーチャロンシリーズの3D空間では自由な移動ができるが、弟の唱える「リスクを避ける戦法」から推論すると特定の位置関係において行える行動は数通りしかなく、そこから見えない位置にいる相手が行う攻撃の死角を導き、視界外の敵の攻撃も回避できることを研究していた。
同じようにリスクを分析して攻撃に転じる方法もあった。「すべての状況でとれる行動は数通りしかない。その中でも位置関係によっては相手はリスクの高めの選択肢が増えることがある。ならば、攻撃は回避される前提でこちらはリスクが低いように行動し、相手はリスクの高い行動しかとれない位置に追い込む」という方法も研究していた。
リスクを減らすゲームと書くとわかりやすいのだが、最終的には「攻撃技を利用してリスクが低い位置を取り続け、相手にはリスクの高い位置を提供する位置取りゲーム」であると、話はつながる。

そして、システムからゲームを考える思考を身につける

その後、自分のゲームプレイスタイルは変化した。ゲームを始めるときにはシステムのコアを考えて、それに適応したプレイスタイルをとろうとするようになったのだ。

すると、驚くほどゲームの上達が早くなった。
苦手だった2D格闘ゲームも克服できて、格闘ゲームは有利フレームの取り合いと、それによる相手の行動の制限基軸にしている……という理解になった。
その理屈のもと、『ストリートファイターIII 3rd Strike』では小さなゲーセンの大会で1回だけ優勝できた(本当に苦手だったので嬉しかった)。

最近(というには古いが)言うなら、『クラロワ』ならば相手が出したカードに対して、手札から優位になれるカードを後出しするのが基本の戦闘システムとなっていて、初期はそのシステムがゲームを支配していたので簡単に最高ランク帯まで上がることができた。

あと、副産物として対戦に「卑怯」という考え方がなくなった。それまでSNK系列格闘ゲームの固め技とか、体力ゲージが少なくなってからの削り技FINISHなどを「卑怯だ」とか思っていたが、「そういうシステムだから」で納得できるようになった。自分もそのシステムを使えばいい(※)。

※ただ、ワンパターンで強い何かがあると「面白くないなぁ」とは思った。卑怯・ずるいとは思わなくなった話である。

あ、冒頭に出た『ストリートファイターIII』に関しては、上手になったと思いあがったところで、有名プロプレイヤーに手も足も出ずに現実を知って自分の弱さにブチ切れた事件です。

ということで、「自分イケてる!」→「思い上がりでした」のコンボが、私がゲームでブチキレるとき。でもって、思い上がって成長が止まっていた原因を言語化できると良いことがあると思う。

最近のブチキレはゲーム広告

でもって、最近ゲームでブチ切れているといえば、ゲーム内容と関係ない動画広告、『FF15新たなる王国』とか、あれだ!

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でもって、CTWが関与しているG123系のエロ詐欺広告。画像と内容が全然違うわッ!

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真面目な話で言うと、中国系ゲームの会社は日本での評判を気にせずエロ広告やギリギリの映像を使えるので、宣伝的に有利でひどい広告でもお金は稼げてしまって……という問題があるので、どうにかならんものか。
『放置少女』とかエロ(と、中国で実証された内容・課金導線)の勝利だよなぁ。

以降はおまけ。
こんな感じで、2010年ごろまではゲーム本体にはブチキレない……と思っていたけど、その後に次々とブチ切れるゲームが登場することになる。

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