教員養成課程の大学生が系統看護学講座を読んでみた話。~看護学概論編〜その7

さて、前回に引き続き『系統看護学講座 看護学概論』を読んだ感想を述べていこうと思います。

これは『系統看護学講座 専門分野Ⅰ 基礎看護学[1] 看護学概論』を読んで書いたものなので、実際に本を読みながら「この人はここでこう思ったんだな」って読むのが一番楽しめると思います。多分。

一応リンク張っておきます。

1. ヒルデガード=E=ペプロウ

今回は看護のリフレクション(内省)の1つであるプロセスレコードを中心に話を展開していこうと思うのですが、まず最初にその提唱者であるペプロウについて書いていこうと思います。

ペプロウは精神看護学の研究者であったため、人間の相互関係に力点を置いて理論を構築したようです。

ペプロウは看護師-患者関係には「方向づけ」「同一化」「開拓利用」「問題解決」の4つの段階があるとし、患者の自立を図るため問題解決方法を共に検討していくことが重要であると考えていたようです。

この考え方はおそらく他の様々な人間関係でも応用が可能な考え方だと思っています。
まず相手を方向づけるところから始め、そこから相手の問題を当事者意識を確保したうえで解決させていくという手法は学校教育はもちろん、会社での部下の教育や日常での説得でも用いることができるでしょう。

2. プロセスレコードとは

そして今回の主題となるものがペプロウが提唱したプロセスレコードです。
まずプロセスレコードとはどういったものかということを説明していきます。

プロセスレコードとは看護におけるリフレクションの1つであり、患者への働きかけを「1. 患者の行動の知覚」「2. 知覚によって生じる思考」「3. 知覚や思考によって生じる感情」の3つに分けて記述するものです。

つまり、看護師をコンピュータとしたときの「入力」「演算」「出力」に着目した記述をすることによってある計算のログを残しておくようなものということですね。
ペプロウはプログラマ脳だったのでしょうか…

ちょっとふざけましたが、このリフレクションはなかなかに有用なものであることは想像に難くないと思います。

まず曖昧なコミュニケーションに対して、それを構成する入力と演算と出力を分けて記述することで思考の順序がわかりやすいだけでなく、後で再現することも容易なわけです。

若干調べてみたところ、この手法は看護と介護で使われている様子は見られましたが、他の分野で応用されている様子はあまり見られませんでした。
ですが、このリフレクションも他の分野で活用することができるものであると考えられます。特に対人関係の職業全般で使うことができるでしょうし、日常の人間関係でも使うことがもちろん可能でしょう。

とはいえ活用したい場合もすべての事象に着けるのは骨が折れるので何か気になるものがあった際にはたまにつけてみるとよいのではないでしょうか。

というわけで皆さん、ぜひともプロセスレコードをつけていきましょう。

3. 他のリフレクションとの比較

プロセスレコードを紹介するついでに、他の分野で用いられているリフレクションと比較をしてみましょう。

3.1. コルトハーヘンの9つの問い

まずは教育学の領域で用いられ、いくつかの観点で考えるという共通点のあるコルトハーヘンの9つの問いと比較してみましょう。
コルトハーヘンの9つの問いは、
0. その事象の文脈はどのようなものであったか
1.私は何をしたのか    5.相手は何をしたのか
2.私は何を考えたのか   6.相手は何を考えたのか
3.私はどう感じたのか   7.相手はどう感じたのか
4.私は何をしたかったのか 8.相手は何をしたかったのか
の9つの観点で分析します。

プロセスレコードと比較すると、まずこちらの方が圧倒的に観点が多いですね。
そして知覚と思考を切り離している点や、自身と相手の視点で書き分けている点が特徴的です。

こちらのメリットとしてはやはり細かく分類している分より詳細に記述できるという点があります。
一方相手に関することは記入者の主観が混じってしまうため、再現性が十分に確保できるかは怪しい点や、何よりも観点が多く書くのが大変という点が問題としてあります。

これに関しては普段使いするには少し大変なため、本格的に振り返りたいときにはこちらを用いて、普段はプロセスレコードを用いるなどをすることでリソースを節約してリフレクションができるのではないでしょうか。

という訳で皆さん、たまにはコルトハーヘンの9つの問いの観点で反省してみましょう。

3.2. 4行日記

次は一般にも使われることがある4行日記と比較してみましょう。
4行日記は
1.事実
2.発見
3.教訓
4.宣言
の4つを記述していきます。

プロセスレコードと比較すると、こちらは人とのやり取りに限らない事象に対するリフレクションであるため、こちらの方がより幅広い事象に対して用いることができそうです。

こちらの方が圧倒的に書きやすく、また幅広く用いることができるほか、将来に向けての記述があるため成長の過程が残され、成長を実感できるものであると考えられます。
一方で、やはり対人関係の事象に対する記述では細かさが劣る印象があります。また事象に関する記述が細分化されていないため、事象の再現性が劣ると考えられます。

そのため再現性を確保したい場合で、対人関係の事象の場合はプロセスレコードやコルトハーヘンの9つの問いを用いるほうが良いと私は考えています。

またプロセスレコードやコルトハーヘンの9つの問いも抽象化すれば対人関係に限らず用いることもできるでしょうし、そこに将来への宣言も付け加えれば完ぺきという訳です。

皆さん、是非ともプロセスレコードやコルトハーヘンの9つの問いを日常生活に取り入れていきましょう。

4. 余談 

結局夏休みの間特に筆が進むこともなく、あまり更新することができませんでした。多分これからもだらだらと書いていくと思います。

今までは教科書の最初から順に全部拾っていっていましたが、これからは面白そうな部分だけを部分部分で拾って進めていきたいと思っています。

こんな調子でこれからも書いていくので面白いなと思った方は、これからも読んでいただけると幸いです。ありがとうございました。

5. 参考文献

茂野香おる.系統看護学講座 専門分野Ⅰ 基礎看護学[1] 看護学概論.第17版,医学書院,2019,384p,

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